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2018年10月20日 (土)

『The Greates Musical Concert』 @ 東急シアターオーブ

『The Greatest Musical Concert』を観てきた。

Gmc

とても不思議な興行で(笑)
会場ではプログラムも売られてないし、
セットリストも配られず、終演後に貼りだされるばかり。
参加したミュージカル俳優たちのCDの販売すらなく、
「ホリプロがこれから扱う舞台のチケット」だけ売られていた。
(あと、柿澤くんのFC入会窓口はあった(*^^))

公式ページも(残って)ないので、
まずは、ここにその諸元を記録しておきたい。

出演者は以下の通り(ホリプロのページに掲載されていた順)。

【キャスト】

ルーシー ヘンシャル(Ruthie Henshall
福井晶一
柿澤勇人
海宝直人
咲妃みゆ

ゲスト
石丸幹二
濱田めぐみ

コーラス

家塚敦子
(東宝養成所や劇団四季を経て、
 『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー』(ビリーの母役)
 『ウェディングシンガー』など)

池谷京子
岡田 誠
田川景一

【スタッフ】

構成・演出:寺崎秀臣
(東宝ミュージカルを多く手がけ、
 『紳士のための愛と殺人の手引き』など演出)

音楽監督:鎮守めぐみ
(劇団四季で活躍していた音楽監督)

編曲・指揮:森亮平
(『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』で指揮)

美術:土屋茂昭
(金森氏の弟子で、
 『キャッツ』や『李香蘭』『エビータ』『鹿鳴館』を担当

照明:柏倉淳一
(舞台照明「オールライトアソシエイト」の代表で、
 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』や数々のコンサートを担当)

音響:大野美由紀(2014年『Live Airline』担当)

衣裳:及川千春(2016年『濱田めぐみ20周年記念コンサート』担当

舞台監督:北條孝(『ナイツ・テイルー騎士物語ー』を担当)

主催:ホリプロ 読売新聞社
企画制作:ホリプロ

 -- 以上 --

 

この「錚々たるメンバー」での、たった4回のステージは、
思いの外に素晴らしいミュージカル・コンサートで、
2時間10分があっという間だった。

何度も書いているが、
基本的にミュージカルのコンサートは敬遠している。
細切れにされた物語の一部を聴かせられても物足りないし、
「その前後も聴きたいんだよぅ」
と思ってしまうからだ。

だが今回の『The Greatest Musical Concert』は違っていた。

一曲一曲は確かに「物語の一部」ではあるのだが、
その曲が奏でられると、舞台の上には「物語の総て」が蘇り、
作品全編を一瞬で堪能したかのような満足感が得られた。

取り出された曲に、これほど圧倒される経験は初めてだし、
胸が熱くなり、涙が止まらなくなってしまうのも初めての経験だ。

おかげで昼だけの予定だったのに、慌てて夜のチケットを購入。
(昼は「Aプログラム」、夜は「Bプログラム」だったのもある)

「続き」の中でセットリストを掲示して、もう少しだけ詳しく。

まずは昼に観た(聴いた)「Aプログラム」。

Apro

そして夜の「Bプログラム」。

Bpro

あまり違いは無いんだけど(笑)
結果としては「両方とも聴けて、ほんとに良かった」と思った。
(それにしても写真だけってのは残念だ)

 

ステージは、ルーシーさんの『All That Jazz』で開幕。
もちろん本物の英語で歌うから(笑)言葉の響きからして素晴らしい。

Come on, babe.
Why don't we paint the town?
And all that jazz.

このフレーズで一気に「ミュージカルの世界」に放り込まれる。

後になって彼女について調べてみたら、
これが実に素晴らしい「なるほど、やっぱり」の経歴
そうと知らずに聞いたのが良かったのだろう、
冒頭から驚きと共に体温が上がるほどに興奮した。

 

続いて登場した海宝アラジンと咲妃ジャスミンが、
メンケンの『A whole new world』を見せてくれた。
それは、夢をみているような、総てが美しい時間だった。

海劇場で何度も魅了されてきたが、
ここではカーペットが無いのに飛んでる気分だ。
いや、カーペットの仕掛けが無いからこそ、
アラジンとジャスミンが交わす慕情が顕になるし、
このこの上なく美しい二人のデュエットに呼吸を忘れる。

 

情熱と美しさに浸っているところへ、
『モーツアルト!』の『何故愛せないの?』で柿澤くん登場。
WOWOWのG&Bで「モーツアルトやりたい」と言ってたから、
(でも、バッハを演りたいと言ってたけど・・・)
叶って良かったねぇ。

それにしても、、、『モーツアルト!』からの楽曲として、
『僕こそ音楽』ではなく『何故愛せないの?』を選んだ辺りに、
このコンサートの魅力の鍵があったと思う。

このホリプロが企てたコンサートの一つのテーマは、
「曲の魅力ではなく、俳優の魅力と可能性を重視する」
と云うものかもしれない。

(みかん星人が観てきた舞台での)柿澤くんに纏わりつく、
「天才肌で勝気だけど孤独や失意に苛まれる」
というニュアンスには『何故愛せないの?』が似合うし、
実際彼に合わせたとしか思えない歌詞でこれを聴くと、
柿澤ヴォルフガングを、その全編での様子を、思い描ける。

 

かつてなく「やんちゃ」になりそうなモーツアルトを想像していると、
続いて登場した福井くんが『見果てぬ夢』を唄う。

『アマデウス!』から『ラマンチャの男』への流れからは、
松本幸四郎(現:松本白鸚)の姿が思い浮かぶが、
なるほど「福井晶一の未来」としてドンキホーテは悪くない。
いゆむしろ、幸四郎の他に演じられる俳優が思いつかないので(笑)
福井くん主演の『ラ・マンチャの男』は当たり役になるかもしれない。

なによりオーブで聴く『見果てぬ夢』はとても綺麗だったし、
その堂々たる立ち姿は見惚れるほどに凛々しかった。

ので、
「福井くん、またムファサとかやれれば良いのにぁ・・・」
と思っているとステージにはアンサンブルが登場し、
なんと『雌ライオンの歌』を歌い始める。

そのズールー語に導かれて、
上手から海宝くんが登場し『終わりなき夜』を唄い始める。
と、下手から柿澤くんが現れて海宝シンバに呼応する。

開演して5曲目で、
このコンサートが「Greatest」と冠しているのを痛感する。
そも『終わりなき夜』を男声デュエットにする演出も驚きだし、
それをシンバ経験者(かつ現役トップ男優)で実現させるとは。。。

「いつか聴きたい」という想像を遥かに超えていたし、
実際に耳にしたこの二人のライオンの心の叫びは、
この上なく美しくオーブの空気を震わせて、
、、、そして永遠に消えていってしまった。

 

この調子でコンサートの事を書いていると膨大なので、
(このブログを頻繁に更新していた頃は平気で書けたけど(^^ゞ)
この後に『Hairspray』の冒頭のナンバーを、
咲妃みゆさんが、それも綺麗な英語で唄った、、、
というのだけ書いておく。

 

ともあれ、この記事でとりわけ書いておきたいのは、
このコンサートを企てたのがホリプロだ、、、という事。
そして、ホリプロが企画したにもかかわらず、
楽曲の多くが劇団四季と東宝の演目だという点。

ホリプロの作品としては、10年程前に輸入した『Hairspray』。
柿澤くんと濱田さんの『サンセット大通り』。
再演が発表されたばかりの『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』。
そして来年に再演されるの『ラブ・ネバー・ダイ』だけかな。

そして劇団四季や東宝の作品からの演目の選択と演出も見事!

『ジーザス・クライスト=スーパースター』からは、
最も有名で派手な『スーパースター』か、、、と思わせておいて、
作品の肝となる『ゲッセマネの園』を選び、
しかもそれを原語で海宝くんにパフォーマンスさせるという演出。

福井くんと濱田さんによる『星のさだめ』の前に、
アンサンブルが『ローブのダンス』を歌ってアイーダを降臨させて、
濱田アイーダがステージに「フッ」と現れるその瞬間を見せた上に、
婚礼前夜の月明かり思わせる照明まで用意するといった演出。

そうした演出は、これらの作品の本質を理解しての演出だし、
こうしてその本質を見据えて舞台に再現されると、
どれほど貴重なミュージカル作品なのかも伝わってくる。

 

このコンサートは、だから、とても見事な企画だと思うと同時に、
ある意味で「ホリプロからの挑戦状」のようにも感じられた。

「日本のミュージカル興行をもっと面白くするための方法」は、
 (つまり、ミュージカルでもっと儲けるための工夫)
あらゆる意味で「最善(best)を尽くすこと」にあって、
そのためには、障壁や旧弊を超える必要がある、、、と。

このコンサートは、それを実現化したものだと思った。

例えば、俳優の実力だけを重視したオーディションの実施。
ホリプロは、ビリーの育成でその重要さを実感しているし、
育て上げたビリー達が観客を夢中にさせたのも経験している。
若手の育成ばかりではなく、
集客力や過去の作品の延長ではないオーディションを行うことで、
本当の意味での集客力がある作品が出来上がるはず。

また逆に、過去の素晴らしい作品を、
「劇団」ではなく「カンパニー」という方法で再演できる可能性。
例えば(日本では大変に人気がある)『アイーダ』を、
ブロードウェイのように出資者(プロデューサー)を募って、
「カンパニー」という枠組みで上演できる仕組みを構築する。

こうした、
「素晴らしい作品を、それに相応しい素晴らしい俳優で」
という(ブロードウェイやウエストエンドでは当然の)ことを、
ホリプロは模索しているのではないか、、、

 

ともあれ、福井くんのMCも可愛かったこのコンサート、
福井くんは続編を期待しているようだったけど、
みかん星人も「パート2」を期待しておきたい。

その時には、全公演を観たいと思う、、、4回ぐらいなら、だけど。

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