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2017年6月11日 (日)

『ハクソー・リッジ』

6月24日から公開される『ハクソー・リッジ』を観て来た。

いつものように詳しいことは公式ページで。
最近よくある「史実もの」で、
この映画の主人公「デズモンド ドス」は、
戦場で武器を携行せずに、75人もの命を救った衛生兵だ。

Hacksawridge

今年のアカデミー賞で「編集」と「録音」のオスカーを取っている。
監督は、あの狂信的な乱暴者(笑)メルギブソンくんだ。

メルギブソン監督は、
『ブレイブハート』という執念の籠った傑作でオスカーを取っている。
『パッション』という映画でも「やりたいこと」をやって、
作りたい映画をモノにする奴ではある。

この作品も、いろんな意味で、メルギブソン監督の作品だ。

内容に踏み込む前に書いておく。。。

まず、この映画はPG12指定を受けている。
物語そのものとしてはレイティングが無い方が良いと思うし、
子どもに知ってもらいたい歴史だとは思う。

が、、、映像としてはかなり残虐だ。
『パッション』もそうだったけど、
物語を語るうえで必要ではあるのだろうけれど、、、過剰だと思う。

ので、子どもに観せるのは薦めない。

また、とてもロマンチックなエッセンスのある映画で、
宣伝としてデートに薦めているのも見かけれが、
ノンポリなデートにも薦めない。

尤も、この映画が相手の「意識」を知る良い機会にはなる。

そういう映画だ。

P6127208

映画は、特に前半は、予想していたものとかなり違っていた。
そしてとても、特に前半は、良くできていると思う。

ただ、後半、舞台が戦場になると、違和感を持ち始めてしまう。

 

監督によると、この映画は、
「真の英雄を称賛するために創った」とのこと。
で、それは本当に巧く作られているし、見応えはある。

けれど、では『真の英雄』とは、どういった人、、、なのだろう?

 

主人公デズモンドは、
とあるきっかけから「生涯武器を拒否する」と誓う。
そして「殺し合う戦場で僕は命を助けたい」と、
武器を持たずに戦場で衛生兵として活躍することを決意する。

そのことは本当に美しいと思う。
そして前半で描かれるデズモンドの状況は、
まさに映画として描かれるにふさわしい「意思の物語」だ。
彼を支える人々の決断と行動にも魅了される。

その彼が、戦場で見せる行動も、見守ってきた分だけ応援する。
「実話である」という事が信じられないと思うし、
故に、どれほどの奇跡だったのかも感じ取れる。

 

けれど、観ている最中、心のどこかで、
「この映画は、なにか、違う・・・・」とも感じていた。

一つは、この映画の根幹にあるのが、
「戦争は当然のこととして存在する」という感覚。
国家間であろうと、民族間であろうと、宗教間であろうと、
「争い事は命を奪い合う事で解決しなきゃならない」
という(監督の持つ?)感覚に、言い知れぬ絶望を感じる。

毎日聞かされる「テロ」という言葉にも、
「どこまでもテロリストが悪い」というニュアンスが乗っているけど、
本当にそうなのだろうか?、、、と常々思う。
もちろんテロ被害者とその家族の苦しさと悲しさは、
「戦争」での喪失とは異なるのは分かっているつもりだ、が。

「自分や愛する者が襲われた時に、武器を持たずにどうする?」
という世界(感)の中で描かれるこの物語では、
たとえ「真の英雄」が戦場でどんなに活躍しても、
「襲ってくる者」がいる限り、英雄に休みはない。。。

 

もう一点は、この映画には「民間人」が登場しないこと。

実際の戦地「ハクソーリッジ」がある沖縄の「前田高地」は、
この映画の公開以来、来訪者が増えているそうだ。
今ではすっかり住宅地となったその「前田高地」は、
1945年のその当時にも「住宅地」で「前田集落」があった。

映画は1945年5月の、前田高地陥落直前が舞台だけれど、
実際の戦闘は4月25日から行われていて、
当時の住民の半数近くが戦死している。

別に「そのことを描くべきだ」と言いたいのではない。
ただ、まるで「砂漠の星での戦争」を描くようなこの感覚に、
「戦闘場面だけ描いて『真の英雄』を活躍させればいい」
と思っている監督の感性が、、、気持ち悪い。

イーストウッドが撮った「硫黄島」での戦争映画があった。
あの「硫黄島」は、映画で描かれた激戦の前に、
民間人が(もちろん強制的に)退去させられていて、
「硫黄島」は戦争をするためだけの場所になっていた。
だからこそイーストウッド監督は、
「島が形を変えるほどの戦争と、そこで苦悶する兵士」
の物語に集中した描写を行った。

 

この『ハクソー・リッジ』に感じる「嫌な感じ」は、
「戦争」という紛争の解決手段を当然の事として捉えてる部分にある。
いや、たぶん、人間と云うのはそういうものかもしれないけれど(笑)
でも、それを「当然」として描かれるのは、、、嫌だなぁ・・・と思った。

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