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2017年2月22日 (水)

『ビッグ・フィッシュ』 @ 日生劇場

ティムバートン監督の傑作映画『ビッグ・フィッシュ』をもとにした、
ミュージカル『ビック・フィッシュ』を観て来た。

Bigfish

そも映画は、
小説『ビッグフィッシュ―父と息子のものがたり』が原作。
それを「ジョン オーガスト」氏が映画へと脚色したが、
この舞台の脚本もオーガスト氏が書いている。

オーガスト氏はティムパートン監督の名相棒で、
他にも『チャーリーとチョコレート工場』や、
『コープスブライド』といった作品もオーガスト氏の脚本。

舞台版がブロードウェイで上演されたのは2013年。
そのオリジナル舞台の演出は、「あの」スーザンストローマン。
『クレイジー・フォー・ユー』や『コンタクト』でもみられるように、
カラフルで、大胆で、温かく希望に満ちた作品になっている。

日本での演出は、もうすっかり「演出家」の白井晃氏。
白井氏は『アダムス・ファミリー』でも演出を務めていたが、
どちらの作品も「アンドリュー リッパ」って人の曲。

曲は、往年の名作ミュージカルの匂いがするもの。
『オクラホマ』や『回転木馬』、『掠奪された7人の花嫁』のようだったり、
『塔の上のラプンツェル』の楽しい曲『I've Got A Dream』のようで、
「いかにもミュージカル」という楽曲たちがなんとも楽しい。

ついでに書いておくと、
この陽気で軽快な温かい音楽を奏でるオーケストラの音が綺麗!
まるで録音されたかのように整えられている。

海底のような日生劇場の雰囲気も相俟って、
とても満足度の高い舞台に仕上がっていた。

物語は、基本的に映画と同じ。

映画では、
その若き日をユアンマクレガーが演じ、
老いてはアルバートフィニーが演じた父・エドワードは、
舞台では川平くんが一人で演じる。

この川平くんがじつに上手いし、似合っている。
いくつもの時代を行き来しながらも、
いつでも彼は「エドワード」そのもとして舞台の上に存在し、
「きっと彼ならそうする!」であろう姿で、姿勢で、声で居続ける。
これほど「役」と「役者」が見事に共鳴し合う舞台はそうそう無い。

エドワードの「ただ一人の女性」であるサンドラは霧矢大夢さん。
このサンドラも時代や場所、そして空想の中でと大活躍なのだけど、
どの場面でも「エドワードにっとて最高の女性」として、
舞台の上で最も魅力的な存在だ。

この二人から、たくさんの愛情を受けて育ったウィルには、
その子ども時代を鈴木福くんが、これを初舞台として登場。
青年時代は浦井くんで、これがまた綺麗だ(笑)

そのウィルの妻・ジョセフィーンは赤根那奈さん。
妊娠している役なのだけど、それがまた実に美しく、
仕草のひとつひとつに夫・ウィルとの関係の良さを感じさせる。

この主要4人のキャスティングが、この舞台の最大の魅力だ。
日本版『ビッグ・フィッシュ』の成功は、
このキャストが決まった時に約束されていたし、
久しぶりに、胸が熱くなって、全身が痺れるほどに感動した。

 

しばしば「ミュージカル舞台」を観ているが、
よく考えると、
「物語」に感動して泣かされる作品は意外と少ないかも・・・
と、この舞台を観て考えてしまった。

ミュージカルでは、素晴らしい音楽と歌唱に心を動かされるし、
見事なダンスに大きな満足を得ることもよくある。
けれど、
映画や、物語に重心があるストレート・プレイに比べると、
「ああ、素晴らしい物語に触れた」と胸が熱くなることや、
「なんともいい人生だなぁ」と舞台の人物に共鳴することが、
ミュージカルに於いては少ないのではないだろうか・・・・

このブログでも、
「素晴らしい歌、ダンスなんだけど、物語は大嫌い!(笑)」
と、何度も書いてきた。

権力をつかみながらも悲嘆にくれて終焉する人生や、
戦争の中で虚しく失われてしまう愛と命の悲しみや、
差別の中で苦悩しながら擦り切れる青春といったものは、
「ミュージカル」という文法の中だから「娯楽」になるけど、
そうした楽曲と物語の落差を楽しむのは、
ある意味、不思議なことかもしれない(笑)

 

改めて、この『ビッグ・フィッシュ』がくれた喜びを考えてみると、
それは映画を観たときに感じられた魅力ではあるけれど、
「なんと充実した人生なのだろう」という憧れであったり、
「この素晴らしい物語と共鳴できた」という充実感だ。

ましてそれが「ミュージカル」として目の前で表現される。
思いがメロディーやステップとして発信され、
これにハーモニーと群舞が重なって広がり、
やがて客席を巻き込んで、歓びは頂点に達する。
まさに「ミュージカルの醍醐味」そのものだ。

それは、
舞台好きの青年が美しい田舎娘と恋に落ちる他愛も無い物語でも、
エーゲ海の小島で繰り広げられる母娘の恋物語でも、
ロックンロールを愛し、苦悩しながらも殿堂入りする四人の物語でも、
事故で記憶を失った青年と、彼を見守る女性の不思議な物語でも、
ともかく最後に「おめでとう!」と言える物語が持っている力だ。

ミュージカルは、こういう物語であってほしい・・・・

改めて、切実に、そう確信できる舞台だった。

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