『フランケンシュタイン』 @ 日生劇場
韓国で生まれたミュージカル『フランケンシュタイン』を観て来た。
詳しくは公式ページで。
韓国で生まれたと言えば『シャーロック・ホームズ』が面白かったが、
この『フランケンシュタイン』も実によくできた物語だ。
原作も(あまり読まれてないと思うが)有名だし、
映画も(最近は作られてないが)有名だし、
なんといっても「怪物くん」のお供「フランケン」としても有名なので、
タイトルを憶えたり、漠然と印象を抱くのは難しくない。
ただ、ほんとうの「フランケンシュタイン」は、
そうした印象とはかなり異なっているはずだ。
なにしろ、「フランケンシュタイン」というのは、
あのおどろおどろしい怪物の名前ではなくて、
その怪物を作った天才科学者の名前なのだ。
この舞台では、その天才科学者「ビクター フランケンシュタイン」を
中川晃教くんと柿澤勇人くんがWキャストで演じる。
彼が生んだ怪物は、加藤和樹くんと小西遼生くんのWキャスト。
それぞれが組み合わさるので、4通りの物語が生まれる。
(実は特別な日があるので6通りなんだけどね)
初日の夜に観たのは、柿澤くんと小西くんのペア。
柿澤くんは『ラディアント・ベイビー』のあの一件以来の舞台だが、
実に見事だった。
最後の歌は、かなり難しい印象だったけど、
見事なテクニックで魅せてくれた。
小西くんも、うつけBARのママだった過去などどこへやら(笑)
怪物の怖ろしさをその全身で表現して、見事だった。
もちろん濱田さんも、壮麻さんも、ケイさんもお見事だけど、
この夜のリトル・ビクター、石橋陽彩くんが素晴らしかった。
続きの中では、物語『フランケンシュタイン』に関して。。。
先にも書いたように「フランケンシュタイン」は、
怪物を創造した天才科学者・ビクターフランケンシュタインの事。
原作は1818年に匿名で書かれたものだが、
1831年に著者:イギリス人女性・メアリーシェリーであるとして再販。
今日に伝わるのは、この1831年版だ。
で、このあたりの事は、プログラムのp.38を読んで頂きたい。
巧くまとめてあって、幕前・幕間に読むにふさわしい。
小説『フランケンシュタイン』は、
なかなか面白く深い小説なのでこの機会に読んでみるのも一興。
またEテレの「100分de名著」でも取り上げられていて、
これを読んでおくだけでも、舞台をより深く楽しめる。
小説には三人の語り手が登場し、三重の【入れ子構造】になっている。
☆一人目はウォルトンという探検家。
北極探検の途中で一人の男と出会う。
☆その男が二人目の語り手で、彼こそがビクターフランケンシュタイン。
彼は生命の謎を解き明かし、命を創造したと語る。
☆そしてビクターが創造した「怪物」が三人目の語り手として登場し、
怪物が経験した悲劇と創造主・ビクターへの思いが語られる。
ミュージカル『フランケンシュタイン』にはウォルトンは登場しない。
また二幕で語られる「怪物の独白」も原作から大きく逸脱している。
しかしながら、この脚色と言うか改変が実に面白く、
まさに「舞台化のための見事な創作」だと言えるし、
この二幕で展開される世界は、原作の「入れ子構造」を思わせ、
原作を知る者にも、舞台を楽しむ者にも、
大変に巧妙で見応えのあるものになっている。
そもそも『フランケンシュタイン』という小説は、
その副題に「あるいは現代のプロメテウス」とあるように、
科学の暴走や、人間の狂気といったものをテーマにしていて、
大変に哲学的なもの。
それをこの舞台では、適宜ユーモアあふれる場面を置き、
キャスト、アンサンブルの見事なパフォーマンスも機能して、
(楽しいとは言い難いが)
見応えのある舞台にしてあるのは見事だ。
さて、
シェリー名義で『フランケンシュタイン』が出た1831年には、
フランスでユゴーの『ノートルダム・ド・パリ』が出版されている。
つまり『ノートルダムの鐘』の原作も、同じ頃の作品なのだ。
『フランケンシュタイン』と『ノートルダムの鐘』は、
それ故かどうかは分からないが、とても似ている。
かたや韓国から来たゴシックなミュージカル。
かたやメンケンとシュワンツよるメロディアスなミュージカル。
両方を一時期に観られる機会はなかなかないので、
ぜひとも見比べて頂きたい!
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コメント
こっちの遼生くんのは「ばけもの」か(笑)
https://youtu.be/ohmIlldsPNI
投稿: みかん星人 | 2017年1月 9日 (月) 午後 09時12分