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2016年9月26日 (月)

音楽劇『夜のピクニック』@水戸芸術館ACM劇場

第2回の「本屋大賞」で大賞を受賞した小説『夜のピクニック』が、
その舞台地である茨城県水戸市で音楽劇舞台になった。

小説では「北高」の伝統行事「80キロ」の「北高鍛錬歩行会」とあり、
具体的に何処の町の学校なのかは書かれていない。
が、
これは「茨城県立水戸第一高校」の伝統行事がモデルで、
行事の名称も「歩く会」、その歩行距離は70キロだ。
地元での舞台化に際して、設定は現実のものへと戻されている。

こうして、小説のモデルとなったその街で、
地元では有名な行事そのものを舞台とするこの作品は、
さまざまな要素が相俟って、とても愛おしい作品になっていた。

Img_2538

「愛おしさ」の最大のポイントは、
この舞台が「回想形式」になっている事にある。

小説では「いま」として描かれる高校生のとめどなく溢れる「思い」が、
舞台の上で「あの頃の思い」として描かれることによって、
観客一人一人の「あの頃の思い」と繋がり、物語を普遍化させている。

つまり、脚本(脚色)がたいへんに見事なのだ。

この脚本を手掛けたのは高橋知伽江氏。
高橋さんは、劇場のある「水戸芸術館」の演劇部門芸術監督。
以前は劇団四季で翻訳もしていて、
『クレイジー・フォー・ユー』や『アラジン』の翻訳は高橋さんが手掛けた。
また、2年前に大ヒットした『Let It Go』のあの訳詞も、彼女がしている。

この音楽劇でも、脚本とともに作詞も手掛けていて、
それもまた物語のテーマを見事に昇華していた。

その音楽を作曲したのはピアニスト・扇谷研人氏。
いろんなミュージシャンのサポートとして活躍しているそうだが、
無理無駄のない、ミュージカルらしい滑らかなメロディーが素晴らしい。
舞台下手でキーボードに囲まれて演奏する姿も良かった。

さて、こうした見事な本と音楽を演じる役者たちも、なかなか良かった。

音楽劇『夜のピクニック』をわざわざ水戸まで観に行った一因は、
この舞台に内藤大希くんが出演するからなのだが、
来年彼の夢だった役に挑む大希くんは、普通に高校生に見えた。
(ただ、水戸一校の生徒に見えたのかは・・・(笑))

冒頭から最後まで、作品の要を務めた吉川友さんは、
凛とした声と立ち姿がなんとも美しい。
ヒロイン・貴子役の小林日奈子さんも、力強い声で今後が楽しみだし、
融役の加藤良輔くんの情熱あるクールな青年も良かった。

もちろん、こうした要素も、演出の力が無ければまとまらないのだが、
演出の深作健太氏は、とても明確な軸を設定して巧みにまとめていた。
それは、
「この物語は境界線をめぐる物語である」
というもの。
この軸と、回想という形式をとった脚本のおかげで、
観客は自ら超えてきた境界線を甘酸っぱい思いと共に再体験する。

更には「水戸芸術館ACM劇場」の魅力も大きい。
「天王洲銀河劇場」や「グローブ座」のような円筒形の劇場で、
3層の回廊が取り囲む400席ほどの劇場なのだが、
この3層目の回廊は舞台をぐるりと周回している。
この大変に特徴のある劇場を見事に使い切っていたのも素晴らしい。

この作品は、この劇場だからこそ成立する。

だから、京都に行かなければ見られない『ギア』のように、
ぜひとも「この劇場でしか観られない作品」として成長して、
「素晴らしい青春音楽劇を観たかったら、水戸へ!」
と言われるほどの作品になってほしい。

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