ミュージカル『シャーロック ホームズ アンダーソン家の秘密』 @ 東京芸術劇場 プレイハウス
東京芸術劇場の「プレイハウス」って、なんだろう?
と思って行ってみると、かつての「中劇場」、
つまりエスカレーターをあがった先に在ったあの劇場が、
約800席の、実にスタイリッシュな劇場として蘇っていた。
そこで観たのは、韓国ミュージカルを翻訳したもので、
『シャーロック ホームズ アンダーソン家の秘密』
という、とてもミュージカルとは思えないタイトルの、ミュージカル。
韓国で2011年に制作されたそうなんだけど、
これが大評判で、いくつもの賞をとったらしい。
それを、あの『サイド ショウ』を手掛けた板垣氏が演出し、
「あの」森雪之丞先生が訳詞をしての日本版。
詳しい事は公式を、、、というか、東京では明日千穐楽なんだけどね。
先に書いてしまうと・・・明日の千穐楽、立ち見で良いからもう一度みたい!
ともかく、まだ立春もしてないのに、
早くも今年のベスト・ミュージカルか!?
と、そう思ってしまう程に、満足してしまった。
まず、冒頭がイカしている。
ステージの奥に5人のミュージシャンが陣取っていて、
アコーディオンとヴァイオリンにピアノがぽろぽろと絡む序曲が演奏される。
このアコーディオンの滑らかさと、ヴァイオリンの心騒ぐ感じが、
いかにもヴィクトリア朝のロンドンという雰囲気を醸し出す。
で、そのバンドの前に暗幕が降りてきて、そして舞台が始まるんだけど、
これがプロジェクション・マッピングが冴えまくりで、
とても単純な、ただのドアを書き並べただけのボードが、
実に饒舌に背景を描き出し続けていく。
そして始まるのが、、、なんと『踊る人形』のエピソードなのだ!
私も子どもの頃に読んで大興奮して、
自分の名前を(ローマ字表記で)人形にしてみたりしたものだけど、
あのホームズ・シリーズでも屈指の名事件が、
アバンタイトルよろしく展開されてゆく・・・しかも、ミュージカルで!
この30分ほどの冒頭のおかげで、
ミュージカルで描かれる「ホームズ」の違和感が、あっさりと、払拭される。
また、このパートで聞こえてくる俳優たちの歌唱の見事さが、
ミュージカル舞台を観ている歓びを、感じさせてくれる。
ホームズを演じる橋本さとし君の声量と面白さ。
ワトソンを演じる一路真輝さんの美しい動きと、それを益々輝かせる声。
・・・そう、ワトソン君が女性なのがまた、舞台としての面白みを加味している。
『踊る人形』のエピソードが終わって、
いよいよ、オリジナルのミステリ『アンダーソン家の秘密』に入るのだけど、
プリンスの一人・浦井くんが演じる双子の兄弟が、
これまた見事なキャラクターの描き分けがされていて面白い。
そして彼らと絡むヒロインを演じる昆さんが、
エボニーヌの時にも魅了された力強く透き通った声で聴かせてくれる。
こうして役者がそろったこの作品だけど、
やっぱり「物語」の面白さというか、仕掛けがなにより素晴らしい。
「仕掛け」とは言ってもトリックの事では無く、
物語が重層的な「入れ子」になっている事や、
「シャーロック ホームズ」という人物が何を信条としているのか、が、
トリックや謎解きを通して浮き上がってくる仕掛けが素晴らしい。
音楽も、無理やりミュージカルにするという程には量が無く、
質の高い、少しばかりジャジーな、エッジと湿度が同居する不思議な曲が、
時に見事に物語をドライブし、時に見事に感情を爆発させて聴かせてくれる。
それは「メロディが耳に残る」というよりも、
台詞や情報、そして感情が充分に伝わってくるというところが好い。
ともかく、東京では残すところ明日の2月4日のマチネだけ。
その後は、福岡、松本、名古屋、仙台、岩手へと旅するんだけど、
もし、お近くにくるという方がいらしたら、
またしても「みかん星人に騙されて」観に行ってください。
これは、ミュージカル演劇を楽しむ魅力に満ちた作品ですぞ!
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント