《独奏》 ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番『春』 第1楽章
『船に乗れ!』は青春哲学小説だそうですが、
「青春」とくれば、当然「恋愛」を抜きには語れません。
入学式の日に、チェロを専攻する生徒の中でも、
自分が一番巧いらしいなんて事を知ったサトルは、
クラスの同級生の女子を見渡して、
「三十人近くも女子がいたにもかかわらず、
可愛いなあと思える女の子は、びっくりするぐらいいなかった」
と身の程知らずな事を思います。
教室を出て、廊下で「ほかのクラスの女の子」を見繕っていたサトルは、
「明るい笑い声」の女の子に目を留めます。
「髪は肩までしかなく、背も決して高いとはいえなかった」
「ちょっと高すぎるくらいの鼻に大人びた唇。
そして見たこともない澄みきった、やや細い目をしていた」
その女の子に、サトルは次第に惹かれいくことになります。
南枝里子という名のその女の子は、ヴァイオリンを専攻していて、
発表会で『白鳥の湖』を演奏するオーケストラで、
一年生ながらも「第二バイオリン」のトップ裏に指名される実力の持ち主。
その南ちゃんが、サトルに弾いて聞かせるのがこの曲です。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第五番『春』
ヴァイオリンを弾いているのは庄司紗矢香さん。
この時には27歳なのでイメージとしてはちょっと無理があるかな(笑)
日本の女の子がこの曲を弾く映像がなかなか無いので、
とりあえず「こんな感じ」と言うことで。
サトルは、南ちゃんがこの曲を練習していると知って、
とある名盤を手に入れて聞いていました。
それは「アルテュール グリュミオー」がヴァイオリンを、
「クララ ハスキル」がピアノを弾いた1956年のレコードで、、、これです。
まさに「ロマン派」の先駆とも言うべき美しいメロディで、
書かれて200年も経っているのに瑞々しい歓びを聴く者に与えてくれます。
ベートーベンの曲なので、
「ヴァイオリンソナタ」とはいうもののピアノがとても重要で、
それがまた、
この『船に乗れ!』の中で、クラシックファンを弄んでくれるわけです。
(この三重奏の意味合いが深くなる)
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