『飛龍伝21~殺戮の秋~』 @ 青山劇場
再来年の3月で閉館される予定の『青山劇場』で、
「つかこうへい」作の名作『飛龍伝』を観てきた。
今回掛かっているのは、『飛龍伝21~殺戮の秋~』というもので、
これが7度目の上演になるという。
タテカンからも分かるように、ヒロインは桐谷美玲ちゃん。
ちなみに彼女は7代目だそうで、歴代はこんな方々(敬称略)。
1990年:富田靖子
1992年:牧瀬里穂
1994年:石田ひかり
2001年:内田有紀
2003年:広末涼子
2010年:黒木メイサ
なんとなく「ああなるほど・・・」感のある女優さんたち。
で、今回の桐谷さんは、まあ本当に華奢で、
途中、組み敷かれちゃったりすると、折れそうで怖いほど(笑)
だから「パワフル」という感じでは無いんだけど、
インテリ女子大学生らしい、
「(本来の意味での)斜に構えている感じ」が、なんだか可愛い。
(おまけに、そのまま夜のニュース番組に出てくるから、凄い)
いやしかし、それにしても、牽引力の強い舞台だ。。。
舞台は、のつけから、
何を言っているのかを聞き取るだけでも大変な状況になる。
しかも、【殴る】【蹴る】に効果音がついているものだから、
つまりは、
怒声が響き渡り、ドカ・バキ鳴って、音楽が爆音で轟く・・・
・・・という舞台が続く。2時間30分も、休憩なしで、、、だ。
いちおう、数年前に「つか芝居」は観ていて、
それも同じ青山劇場だったんだけど、確かに似たような感じで、
あらためて「そうだ、これが、つかこうへいの舞台だった」と痛感する。
痛感すると同時に、
そしてまた「つかこうへいはもう居ない」と解かりながらも、
舞台の上に、演出を、いや口立てをしてる「つかこうへい」の姿が見えてくる。
台詞の一つ一つを自ら発しながら、
その場のドラマを、物語を、人物を、感情を描き出す演出家の姿が見える。
もちろん、私が観た、そして記憶している、
「つかこうへい氏の口立て姿」は、テレビの中でのものだ。
いつ放送されたのかも忘れてしまったが、
「これが口立て芝居か」と呆れつつも感嘆して観ていたんだけど、
その時の集中力と支配力、そして人を夢中にさせるカリスマは、忘れ難い。
・・・・ちなみに、『口立て』というのは・・・
脚本はあるものの、演出家、あるいは俳優が、
その場の流れの中で台詞や、登場人物の関係性を、
口頭でどんどん変えて、(時に)まったく違う流れの舞台へと仕上げる事。
つかこうへい氏を失った「つか芝居」がどうなっているのか、
それを見たいという事もあって足を運んだのだけど、
そこにはまるで【歌舞伎】のように綿々と受け継がれている「つか芝居」があった。
そもそも、台詞を聞き取れない舞台が大嫌いなみかん星人なんだけど、
それでも、この『飛龍伝』では2点、とても魅了された。
ひとつは、台詞の5割が分からなくて、物語が見えてこなくても、
ときおり「どん」と響いてくる台詞が、逆に、とても魅力的だという事。
映画の中にしばしば登場する「銘台詞」のように、それらはやってきて、
前後関係が無い分だけ、強く、長く、心を騒がせてくれる。
もう一点は、言葉にはできない「わくわくした思い」に包まれるという点。
それはまるで「サーカス」を観ているような感覚で、
例えるなら・・・
「危険を冒して空中ブランコをする理由」の説明は無いけれど、
それでも大きくスイングするブランコから手を離した人間が、
美しい弧を描いてパートナーの手を掴むその瞬間の、
いわく言い難い昂揚感、、、、あれに通じる「わくわく」だ。
いろんな舞台を観てきたけれど、
言葉の応酬で紡がれる舞台を観乍ら、
台詞の無いパフォーマンスを観ているような気持ちにされられる、
他にはない演劇なのだと感じた。
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