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2013年4月20日 (土)

『リンカーン』

第85回アカデミー賞で『美術賞』、
そして「ダニエル デイ=ルイス」に3度目の主演男優賞をもたらした、
スピルバーグ監督の『リンガーン』をみてきた。

Lincoln

この映画、思った以上に「娯楽大作」で、
こちらがアカデミーの作品賞をとっても、まったく不思議では無いと思う。
というか、本来はこっちが取るべきなんだろうなあ。

ただこの映画、日本人には、ちょっとしたガイドが必要な部分があると思う。

それは監督も分かっているとみえて、冒頭に1分ほどの背景説明がある。
が、実は、これだけでは足りない。

どうしても知っていた方が良い事があるし、
知っていたらもう少し楽しめるポイントがある。

先ずは「アメリカの議会制度」。
上院と下院があり、それは最初の議事堂の1階(下院)と2階(上院)が由来。
映画では、【奴隷解放の修正案】は既に「上院」を通過している。
この「上院」というのは、イギリスの「貴族院(元老院)」みたいなもので、
各州から2名が選ばれている議席数100名の議会。

一方、映画の舞台となる「下院」は、人口に比例して選出されるもので、
映画の背景当時の定数は230名ほど(現在は435議席)。
憲法の修正なので、この2/3の賛成を得るための物語が、
この映画のひとつのプロット。

ところで、下院で対立しているのは、リンカーンが代表する『共和党』と、
南部を代表する『民主党(オバマ大統領もこちら)』の二大政党。
「共和党」というのは、実は、この奴隷制度廃止を目指して結党された政党。

今では、共和党は自由主義で、民主党は平等主義というイメージがあって、
オバマ大統領や、ヒラリー元上院議員は民主党。
けれど、当時は逆転と言うか(まあ、今が逆転なんだけど)していた。

これは、映画の中でも描かれるけれど、
「奴隷所有者=大資本家」というのが当時の社会情勢だった。
リンカーンの父も、奴隷を抱えている事業に対抗できず、撤退した。
つまり、「奴隷」と言うのは、それを所有している南部の強みであり、
北部の事業主にとってはどうにも対抗できない「商業障壁」だった。
そこで「自由に商売しよう」というスローガンが、「反奴隷制度」となり、
それが『共和党』として結集することになったわけ。

逆に、じつは当時の「奴隷制」というのは、
確かに人身売買といった非人道的な側面がある一方で、
「輸入してきた有色人種をコントロールし、生活を維持させる」
という側面もあった。
「奴隷を解放するという事は、奴隷たちに『自由』という苦悩を与えるだけだ」
という感覚は、奴隷の側にもあって、
例えば100年後の公民権運動を描いたミュージカル、
『アイ・ハブ・ア・ドリーム』においても描かれている。
そういった意味で、国民皆保険などを推進した民主党と、
奴隷制度を維持しようとした民主党には通底する物がある。

さて、主人公・リンカーンに関しても、ちょっとしたガイドを。。。。

リンカーンと妻・メアリーは1842年11月に結婚した。
一度は婚約を解消した二人だったけれど、なんとか結ばれる。

で、映画にも出てくる長男・ロバートが、1843年8月に生まれる。

つまり「できちゃった婚(死語かな?)」で、
その事は映画の中でも一瞬だけ触れられている。

1846年には二男・エドワード、1850年には三男・ウィリーが生まれるが、
エドワードは4歳直前、ウィリーは11歳直後に亡くなってしまう。
映画においても、この二人の子どもを失った事が大きな影を落としている。

また、映画の中では「希望」のように描かれる四男・タッドは、
父に溺愛されて実に美しいのだけれど、
映画の最後から6年後の夏に、18歳で亡くなってしまう。

こうした事は、アメリカでは知られているので、
「そうなんだ」と知って観ると、その描写がじつに痛々しい。

ところで・・・・

リンカーンと言えば有名なのが、
「ゲティスバーグの演説」と言われる演説だろう。

「人民の、人民による、人民のための政治」

この有名なメッセージは、映画の中でも登場するが、
そのオリジナルの原稿というのは、残っていない。

こんにちアメリカに伝わっているこの演説には、5つのコピーがあって。
それは、こんな感じで本になって売られている。

Lincoln

5つのコピーのうち2つは、
リンカーンが自ら渡したものと言われていて、
現在、スミソニアン博物館に保存されているそうだ。

さて・・・・

最後に少しだけ映画について書いておこう(笑)

「ややこしく、難解な映画」という意見があるようだけれど、
私には実に単純で、よくできた、分かりやすい映画だった。
特に人物の描き分けが見事で、
「えっと、彼は誰だっけ?」
などと混乱することは無かった。

この映画でもその魅力を十分に堪能できたのは、
撮影監督・カミンスキーの映像の、圧倒的な、美しさだ。
『戦火の馬』でもそうだったけれど、
心情をそのまま画にしたような質感・色合いは、見事としか言いようがない。

まさに、映画館で観なければならない1本だろう。

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コメント

ワラワ的には、
“ジェームズ・スペイダー”の名前を見つけ、
“ちゃんと役者やってるんだぁ~”と
テンションが上がりました。
けっこう重要で、おもしろい役でした。

投稿: 舞姿 | 2013年5月 7日 (火) 午後 09時12分

なんといっても『セックスと嘘とビデオテープ』ですよね>スペイダー
あとは『エンドレス・ラブ』の兄ちゃんか・・・

いま、こんな感じです。
http://www.imdb.com/name/nm0000652/

ちなみに、、、この映画では、票を集めるリーダーで、言われて観ていたとしても、面影感じなかったかも。。。。

投稿: みかん星人 | 2013年5月 8日 (水) 午前 09時36分

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