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2012年6月 9日 (土)

植田正治作品展『童暦・砂丘劇場』 @ JCII PHOTO SALON

恵比寿にある「東京都写真美術館」のエントランスには、
写真芸術の記念碑のように、大きな写真が3枚掲げられている。

一つは、ドアノーの『市庁舎前のキス』。
そして、ロバートキャパがスペイン内乱で撮った写真。

こうした、世界で最も有名な写真に並んでいる3枚目は、
鳥取県が生んだ世界的な写真家・植田正治の写真だ。
(ちなみに、
 日本で最も人口が少ない鳥取県は、大スターの「小野ヤスシ」氏をはじめ、
 水木しげる先生や、岡本喜八監督と云った偉大な才能を育んでいる)

その、世界が認めた、
しかし鳥取県だけをホームグラウンドとした写真家・植田正治の写真展が、
東京・半蔵門にある「JCIIフォトサロン」にて開かれている。

この作品展の素晴らしいところは、、、まあ当たり前の事だけど(笑)
「オリジナルプリントが掲出されている」ところだ。

この「オリジナルプリント」という部分も織り込んで、
6月9日土曜日昼下り、ハービー山口氏によるトークショー、

『ぼくが植田正治さんから学んだもの』

が行われて、
予てより植田氏とハービー氏のファンだったので、駆けつけた。

ラジオ番組などで馴染みのあるハービー氏は、
この日、いかにもブリティッシュという雰囲気のストライプ・ジャケット。
自ら「美少年」というだけあって、いつもながらダンディーだ。
(実際、ハービー氏の若い頃の写真を観ると、美少年なのだ!)

ハービー氏は、若い頃、友人から「植田正治の写真集」を見せられて、
「こういう優しさを写し取りたい」と感じたのだそうだ。

ただ、植田正治氏と、ハービー氏の作風というか「スタイル」はかなり違う。
トークショーの最後に、質問に答えて、この部分を特に語ってくれたが、
「スタイルとは何か」という話は実に深いものだった。

至極簡単に言ってしまうと、「スタイルとは航跡」という事だろう。

目ざすものや、表現の手法が同じであっても、
一人一人の表現者が描き残す「航跡」は、全く違う。
そこには、もちろん個性もあるし、社会情勢もあるし、運もあるわけで、
だから、誰かがその「スタイル」を真似ようとしても無理だし、意味が無い。

先に書いた「オリジナルプリント」の部分にしても、
ハービー氏は、こんな経験を話してくれた。
ハービー氏と、ミュージシャンの福山雅治くんと、植田氏の3人で、
暗室に入って写真のプリントをした時にハービー氏が見たのは、
「プリント(印画)の天才・植田正治」のセンスだったそうだ。

細かいことは省略するが、
植田氏は、自分が好む階調(白から黒への段階)を得るために、
とてもコントラストが強い印画紙を使っていたのだそうだ。
例えば、
今回の展示作品の中に、頭に怪我をしてる少年の一枚があるが、
展示されているそのオリジナルプリントでは、背景が黒く沈んでいる。
ところが、どうやら、この背景には、もっといろんな物が写っているらしいのだ。

こうした、自分が表現したい部分に拘るという事。
そうした連続が「スタイル」として、観る者を魅了するのだろう。

じっくり、ゆっくり、しかも無料で植田氏の作品と向き合える展示なので、
写真に興味がある人には必須の展示会だろう。

7月1日まで。

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