『アーティスト』
今年のアカデミー賞で、
作品賞、監督賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞を獲得した、
白黒で、サイレントの、フランス映画を観てきた。
詳しいことは、例によって公式ページで。
なるほど、これは、とてもとても面白い。。。すばらしく楽しい。
そして、改めて実感するんだけど、
「せりふ」というのは、諸刃の剣で、
それはイメージを明確にするとともに、単純化して固定してしまうのだ、と。
みかん星人が「ミュージカル」という、
「言葉にならない思いに満ちた作品」
が好きなわけを、この作品はとてもはっきりと教えてくれた。
『アーティスト』には、
様々な名作のオマージュがある、、、ということで、
実際そう思う場面も多いんだけど。。。。けれど、
それは多分「名作の引用」というよりも、
「その場面を最も印象深く描く構図、光、動き、音楽」
を突き詰めてゆくと、過去のそれらと同じような様子になる、
という事のなのだろうと感じる。
それをとても強く感じるのが、音楽だ。
さすがにオスカーを取っただけのことはあるこの音楽は、
2つの意味で、とても胸に染みてくる。
一つは、音楽というものがどれほど饒舌なのか、という事。
画面に寄り添い、時にリードし、時に余韻をのこし、
ある時にはまったく背を向けたようでありながら、予感を提供する。
こうした音楽と、俳優の微妙な(時に誇張された(笑))表情だけで、
観客は、少なくとも私は、映画の中でイメージを自由に広げられた。
もう一点は、こうして奏でられた美しい音楽は、
ただひたすら「娯楽」であった時代の映画においても画に寄り添っていた事。
そのことに思いが及ぶと、既に失われた多くの白黒フィルムとともに、
いまではもう人々の心のなかにだけ残る音楽のこと、
そして、そうした音楽たちが積み上げた歴史をも感じ取れる。
美しい歴史の果てに、いま、居るのだ、、、と。
この映画のパンフレット、いやもう「プログラム」と呼びたいほどだけど、は、
定価700円なれど、必ず買ってほしい。
そして、映画を見終わった後、おもむろに最後のページを開いてほしい。
そこには、この映画の、いや映画の歴史のすべてがある!
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