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2012年2月21日 (火)

『エビータ』 @ 自由劇場

と、言うわけで、
福井くんのペロン大統領と、秋夢子さんのエビータという組み合わせを鑑賞。
(あ、名前の順番が、キャスト表的には逆だなぁ。。。)

 

俳優には、過去がついてまわるもの。

それは、舞台俳優に限ったことでは無く、
例えば、ハリソンフォードを観れば「いつ鞭を使うんだろう?」と思ったり、
ブルースウィリスが居れば、いつ車で石の壁を壊すのだろうと期待する、
そういう、過去を纏っていて、ずーっとついてまわる、という感覚のことだ(笑)。

まして、生身の俳優が、
目の前で、とある人格(猫格)を演じているのを見続けていれば、
その俳優の向こう側に、そういった「過去」を、自然に、嗅ぎ取ってしまう。

今日、自由劇場に登場した主役のペアは、
だから、
『たとえ100回生まれ変わっても、きっと探し出すよ』
と誓い合った二人が、何回目かの人生において、
今度は南米の地で、24歳の年齢差をものともせず、出会った姿にも見える。

こうした感覚でいると、一幕の最後などは、
もうほとんど【ローブのダンス】と同じに観えてくる。
そういえば、JCSSにも同じように群衆が指導者に熱中する場面があったし、
LKの冒頭だって似たようなものだ。
ティムライス氏の「民衆」に対する感覚を感じ取れたりもする。

閑話休題

この、福井ペロン、秋エビータの白眉は、意外にも2幕の後半。

病に倒れてしまったエビータを呆然と見つめながら、
「次はどうする」と、2度、自問するペロン。
そんなペロンに「どこへ行くの?」と問いかけるエビータ。
問いかけに対して、吐き捨てるように云うペロン最後の台詞。。。
この一連の流れの中で、、二人の関係、
すなわち、同志であり、パートナーであり、恋人であり、
けれど「恋なんてものじゃない」と理解しつつ相手を利用してきた、
こうした総ての感情が、詳細に表現されている。

正直、いままで、この作品で一番「辛い」と感じていたのが、この場面。
この場面が無ければ、とても素敵な作品だと思っていた一方、
この場面こそが『エビータ』という作品を理解する肝なんだろうとも感じていた。

今回の、福井ペロンの登場で、
「あー、そういう事かぁ」と、ようやくにして『エビータ』が腑に落ちた感覚だ。

ともかく、こうして、
福井ペロンは、他にもいろいろと気づかせてくれる。

例えば、椅子取りゲームに勝ったあと、暗転する直前に見せる一瞬の表情。
例えば、労働者たちに熱狂的に支持され始めた時に見せる表情の変遷。
例えば、パリを歴訪したエビータの様子を聞いた時の表情の変化。

もちろん、こういった芝居は、今までのペロンもしていたのだろう(笑)
ペロンに注目していなかったので見逃していたと思うし、
福井くんだから、という事で「ああ」と思っただけの事。
けれど、
「そうだったのか!」と分かると、作品全体の印象が変わるこういった発見は、
福井くんが、繊細に演じてくれたからこそ知りえたのも確かな事。

磨きのかかった歌唱力に、さらに丁寧な演技が加わって、
ますます、これからが楽しみなのであります。

 

そうそう、秋エビータは、前回の自由劇場でも拝見している。
その時にも、今日と同じく2階の最前列で観たのだけれど、
余りにも、ただ、もう、綺麗で可愛いので、なにも書けなかった(笑)

で、実は今回も、ただ見惚れるだけだ、という事にしよう。

ただ、そう、ひとつだけ、、、歌においては文句ないのだけれど、、、
まったくもって素晴らしい野村エビータの演技に対して、
秋エビータが遥かに追いつかない場面をひとつ感じた。
それは、病をおして立ち上がり、マイクへと向かう場面。
この場面で、野村エビータの演技に手が届きそうになれば、
秋エビータで鑑賞する『エビータ』は、
今観られる最も素晴らしいミュージカルの1本と言って良いと思う。

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コメント

ぽんさん、告白ありがとう


ただ、実際には、大統領の方が地位は上なんですよねー。。。

ペロンが大統領だから、エバはファーストレディなのです。

けど、、、そっか、、、エバが亡くなった後、ペロンは失脚するんですよね、人気が無くなって。
って事は、やっぱり、エバの方が上だったという事かぁ。

投稿: みかん星人 | 2012年2月25日 (土) 午前 10時59分

福井くんのペロン大統領と、秋夢子さんのエビータ、、、
(あ、名前の順番が、キャスト表的には逆だなぁ。。。)


確かに(笑)

でも、そんなみかん星人さんのブログが大好きです

投稿: ぽん | 2012年2月24日 (金) 午後 10時37分

cooさん、コメントありがとうございます。

演じる俳優によってニュアンスが変わる、それもまた、舞台演劇を楽しむ要素の一つですよね。
劇団四季も、今回の『エビータ』では、

『“ふたりのエビータ”の競演を心ゆくまでご堪能ください。』

と宣伝しているほどですので、これは当たり前の事でしょう。

舞台俳優という仕事に限らず、仕事というのは、経験を積んで向上する物ですし、その向上した様子は、ひとりひとりの経験で全く違うものです。ですから、これまでの俳優さんの経験次第で、舞台に描かれる個性やメッセージは違ってきますし、それが多色の織物のように組み合わさって、毎回違って感じられるわけですね。

さて、あと4回、、、どんなタペストリーが描かれるのか、楽しみですね。

投稿: みかん星人 | 2012年2月23日 (木) 午後 03時07分

やっぱり演じる人によって受け取るメッセージが違いますよね。。。最近特に感じる今日この頃。。。

投稿: coo | 2012年2月23日 (木) 午前 12時16分

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