ブロードウェイ・ミュージカル 『サイド・ショウ』 @ シアター1010
北千住駅に隣接している劇場『シアター1010』で、
ブロードウェイ・ミュージカル『サイド・ショウ』の初日を観てきた。
「初日」とは言うものの、なんと初日からマチソワ公演で、
観たのはソワレ公演だから、初日だけれど2回目のステージだ。
そもそも、今回の公演はちょっと変則的で、
東京での11公演のうち、夜の公演が3回しかない。
なんとも、行きにくい公演と云うイメージだ(笑)
さて、そんなややこしい舞台を観に行ったのは、
我らが上野聖太くんがステージに立っているからだ!
上野くんは、この作品の「ミュージカル・ライブ」に登場して、
結局、そのまま、見事に再演のアンサンブルメンバーとなってくれた。
と、言うわけで、もちろん上野くんへの花も用意した。。。
余談だけれど、この背景は、劇場の一階上にある「屋上庭園」だ。
スカイツリーも間近に見えたりして、ちょっと楽しい。
閑話休題
さて、肝心の『サイド・ショウ』だけれど、、、
ライブを観た時になんとなく感じていた予感は的中した。
一つは、魅力的なメロディーの曲で構築された作品なので、
俳優の実力が作品を左右するだろうという事。
ソンドハイム的難曲であれば、歌えるだけでも大したものだが(笑)
この作品の自然で耳に残る美しいメロディーは、
故に丁寧に歌わないと、ごまかしが利かない。。。
演劇ってのは、大げさに言えば「見事に嘘をつく芸術」なので、
俳優は、虚構を信じて、その中で約2時間を生きる事になる。
それは、たぶん、とても集中力がいる仕事だろうし、
ミュージカルにおいては、更に、その中で歌わなければならない。
だから「歌が上手い」だけでは、ダメなのが、ミュージカル俳優だ。
(先日BSで放送されたミュージカル俳優たちのコンサートは、
「歌が上手い」だけのコンサートになっていて驚いたが・・・)
『サイド・ショウ』に登場した俳優、よくこれを達成していた。
いまでは、もう、すっかり独特のスタイルを確立した大澄賢也くんは、
振付も担当しながらも、とても強烈な個性を発揮していたし、
モトヅカのヒロイン、貴城さんと樹里さんは、
「役者の役」というポジションを見事に表現していた。
モトシキの下村さんも、期待を裏切らないパフォーマンス。
そして、圧倒的に素晴らしかったのが、これまたモトシキの「光夫さん」だ。
複雑で、なかなか「なり切る」ことが難しい役を丁寧に演じていた。
また、一幕の最後に聴かせてくれる曲は、
この1曲のためだけにでも行きたくなるほどに魅力ある歌唱だった。
もう一点は、この作品は、観る者を試すだろう、という事だ。
この作品には、観客に対する、二つの大きな「挑戦」があると思う。
一つは、ヒロインの二人を「そういう二人」だと思い込めるか?だ。
つまり、演劇上の「お約束」を、演じる側はもちろんの事、
観る側も「そうである」事を信じ続けないと、
この作品は、端から破たんし、おそらく酷い観劇体験になるだろう。
(トニー賞でのライバルだった『ライオンキング』は、この入門編だね)
もう一点は、観る者の中にある「違和感」から逃げられない事だ。
それは、この作品のテーマだとも言えることで、
観る者が、自分の中に湧き上がってくる「違和感」と向き合わないと、
それもまた、つまらない観劇体験としかならないだろう。
この点に関しては、プログラムにある演出家からのメッセージも鋭い。
おそらく『サイド・ショウ』が持っているこうした資質が、
ブロードウェイでの公演が短期で失敗した大きな理由なのだろうと思う。
初演は、「2010年ミュージカル・ベストテン」で3位になっている。
登場する俳優も粒ぞろい、流れるメロディーも美しい、
素敵な、けれど、とてもスリリングなこの作品は、
日本ではちゃんと評価されているところが、なんとも嬉しい。
「我こそは芝居好き、ミュージカル好き」は、これを見逃す手は無い。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ハイタカさん、コメントありがとう。
予想以上に、素晴らしく、また、強烈な舞台でしたね。
》どのシーンにもそれぞれの「希望」「夢」が形をかえてあったなとほんとおもいました。
それは、ハイタカさんの中に、障壁を超えた向こうにあるのが「希望」や「夢」であるという気持ちがあるから、なのだと思います。
この作品は、ですから、自分と向き合う事になるんでしょうね。
私は、現実の厳しさと、決意・決断の大切さを痛感していました。
ALWの作品には無い、本当の人間の気持ちに寄り添った、ある意味で「まさに芸術」と呼ぶべき作品だと思いますね。
投稿: みかん星人 | 2011年10月 7日 (金) 午後 09時46分
ううむ・・・流れるような感想にうまなってしまいます(笑)。
ほんとおもしろかったです。初演も見たかったのですが、今回いったのが良かったなとおもいました。
大澄さんの怪しさ
下様の下様たる威厳
ヒルトン姉妹・・・
もっともっとと思うところもありましたが、千秋楽までに大化けするステージなのでは?とおもいました。
なんといってもジェイクでした。
ソロはもちろんのこと、あの演技
愛が狂気にかわるところ・・・けっして独りよがりでなく、きちんとサイド・ショーの中で生きている吉原さんの演技に説得力があってすごくいいな~っておもいました。
でもどのシーンにもそれぞれの「希望」「夢」が形をかえてあったなとほんとおもいました。
役者も様々なことに向かい合わなくてはならないからきついとおもいますが、観客も多いに試されて・・・
でもラストの姉妹の決断に・・・彼女たちが始めて歩き出した。歩きだせたようで、私は納得しました。
何かを与えてくれるステージ
ほんとそうだったな~って想います。
投稿: ハイタカ | 2011年10月 7日 (金) 午前 10時26分