今日の、吉原光夫くん、、、これが、大和魂か。。。
東宝が「このバルジャンでもいける」と判断したわけなので、
「光夫バルジャン」だって、勿論、ちゃんとバルジャンだろうとは思っていた。
で、それは、想像よりももっとずっと「ふつう」のバルジャンだった。
それはでも、ガッカリするというものではないし、
「なるほど、これこそ、どの日の舞台を観ても満足できる仕組み」だと感心した。
キャストによってのバラつきが激しい、、、
というか、キャストの変更で観劇意欲が激変する劇団四季よりは、
遥かに安定していると思う。
それでも、なんといっても「ジャン バルジャン」といえば主役であるし、
過去の罪を背負いながらも、神の導きで成功し、
充足した人生を送るまでになるという、実に難しい役なので、
演じる俳優の個性が、いろんなところに滲んでいる。
別所くんは、正に誠実で堅実なバルジャンだし、
今井くんは、どこか最後まで自分自身の弱さと戦い続けるバルジャンだ。
最高にユニークだった橋本バルジャンは、絶えず自問自答しているし、
山口バルジャンは、神の教えに導かれる事に陶酔している感があった。
そして、我らが光夫バルジャンは、
ただひたすらに「神」に、あるいは「演出」(笑)に忠実であろうとするようだ。
バルジャンという人物を自分の中に探し、そして表現するという、
実にオーソドックスだけれど、無茶の無い、丁寧なバルジャンだ。
が、一か所だけ、今まで観たどのバルジャンとも違う、
そして、光夫くんらしさが発揮されていた場面があった。
それは、2幕、バリケードで休むマリウスを前にして歌う『彼を帰して』だ。
この綺麗なメロディーが魅力である曲は、
バルジャンが神への祈りを歌い上げている、のだけれど、、、
光夫バルジャンの『彼を帰して』は、神への祈りには聞こえなかった。
それは、「自分よりも若くして死に往く者」がいることの辛さや、
自分が、この幼い革命の中で無力であることの悔しさ、
そして、ついには、「マリウスを守ること」が、
まるで、神に与えられた使命のように受け入れる潔さを感じた。
「ああ、これが、彼の言う『大和魂』なのか・・・」と、そう思った。
自分の命に代えてでも守りたいものがあり、
そして、その使命を果たすために生き続けようとする力強さ。
これは、これまでの神の教えに従うバルジャンとは、かなり違う。
光夫バルジャンが紡ぎあげた、この『彼を帰して』は、
この一曲だけでも長く記憶に残るパフォーマンスだと言えるだろう。
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コメント
ハイタカさん、コメントありがとう。
また、すごい席の調達、ありがとうございました。
そうですね、様々な思いを抱いた「人間」でしたね。
そういう意味では、劇団四季の精神を受け継いでいるのかもしれません。
投稿: みかん星人 | 2011年6月 4日 (土) 午後 02時49分
donaさん、コメントありがとう。
私も、今井さんのファントムは知らないのです。
ちょうどあの頃の四季と、いちばん相性が合わなかったので(笑)
プロであるというのは、日常の隣にも感じることがありますが、
こうして舞台芸術をみていると、特にプロであることの難しさを感じますね。
投稿: みかん星人 | 2011年6月 4日 (土) 午後 02時48分
お世話様でした
そしてありがとうございました
ううむ相変わらず見事な文章
彼を帰しては、ほんと凄かったです
光夫バルジャンはほんと神とともに…と人間を演じていたなぁとおもいました
いろんな愛がねぇ見えて。
生きることの素晴らしさを意味を感じるバルジャンだったなあと。
すべてに感謝です
投稿: ハイタカ | 2011年6月 2日 (木) 午後 11時29分
こんばんは~
みかん星人さんと同じ演目見ただけで嬉しくなってしまうミハ~でございます。
5月31日夜公演にいきました。
スペシャルキャストでした、一緒に行った友人は年齢的に無理があるかも~と言っていましたが、とっても良かったです。
私・・デビューが遅くて?今井さんのファントム知らないのであります。
今井ファントム見たかったな~と余計な事考えてしまう。。叶わぬ夢です・・・
その二日前にはマンマミーアで八重沢さんが開演30分前に肉離れをされた舞台をハラハラしながら見ました。
さすがキャリアのある方なので、ブウレーブーの時踊りの輪には入らず、ペッパーとジャレような演技をされていて、前後を考えると、踊りの輪に入るより自然な気がしました。。
代わりの無い舞台、プロ根性を見せてもらったような気がしました~
みかん星人さんは興味ない話しを興奮して聞いてもらっちゃいました~
いつも勝手ですみませ~ん。。
投稿: dona | 2011年6月 2日 (木) 午後 11時07分