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2011年3月26日 (土)

グランド・ミュージカル『回転木馬』 @ オーバード・ホール

正式には「富山市芸術文化ホール」というそうだけれど、
JR富山駅北口の目の前に、それはそれは立派なホールがある。
その愛称を『オーバード・ホール』という。(オーバードとは「朝の曲」の意)

そのホールで、3月25日、26日、27日に『回転木馬』が上演された。

わざわざ富山まで観に行ったのは、
この『回転木馬』の主役を、我らが「上野聖太」くんが演じるからだ。

そして、オーバード・ホールで観たのは、
奇跡のように美しい、とても充実したミュージカル・プレイだった。

Carousel

舞台は、上野くん演じる主人公の「ビリー ビグロー」が、
そのハンサムな容姿と、愉快な口上で、
遊園地にある回転木馬の呼び込みをしているところから始まる。

この「回転木馬」が、まず、とても素晴らしい。

上野くんもブログで「すごい」と書いていたけれど、
実際に舞台に登場すると、唖然とする程に見事なセットだ。
上に貼ったような「木馬」が、外周に8台、内周に6台あって、
カルーセルの直径は少なくとも8mはあったのではないだろうか?
それが、もちろんちゃんと回転するとともに、
舞台の奥からせり出してくる!

これは、オーバード・ホールの「可動式舞台」という仕組みがあってのもの。
(オーパードは、3面半の可動舞台を有しているそうだ)
この「可動式舞台」は、2幕でも大活躍。
なんと、今度は舞台全部が奈落へ沈んでいく(笑)
20人近い人を乗せて、セットを乗せた舞台がゆっくり沈む場面は、
その場面の重厚さもあって、とても印象的な演出だった。

その演出は、劇団四季でWSSの演出もしていた宮島春彦氏だ。
「既成のアメリカン・ミュージカルは、もう、やらない」
とプログラムでも言っている宮島氏だけれど、
この『回転木馬』には、
「破綻していると思えるほどにさまざまなモチーフが詰まっていて、
 オープンな結末が観る人に様々なテーマを託してくれるだろう」
と感じて、そして演出しているという。

実際、この『回転木馬』は、正直言って理解しにくい物語だ。

『回転木馬』は、史上の名コンビ「ロジャース&ハマースタイン」の作品で、
『オクラホマ!』に続く大作として1945年に公開された。
その後、1949年の『南太平洋』、1951年の『王様と私』、
そして1959年の『サウンド・オブ・ミュージック』が、
「ロジャース&ハマースタイン」の五大作品と呼ばれているそうだ。

1943年に公開された『オクラホマ!』は、戦地へ赴く兵士たちに、
【郷愁】、【郷土愛】そしてひいては【愛国心】を感じさせて大成功。
それまで「物語」とは無縁だった「ミュージカル・コメディー」を、
とうとう「ミュージカル・プレイ」にまで昇華させた作品。

第二次世界大戦が終わる1945年に公開された『回転木馬』には、
「どんな状況であれ、人は誰かと結びつき、そして前進できる」
というメッセージをこめてあり、戦後の新しい時代を感じさせている。

その象徴ともいえるのが、最後の曲『You'll never walk alone.』だ。
これもまた、上野くんのブログにも書かれているが、
この曲は、まさに今の日本に対してのメッセージでもある。
本当は、著作権の関係があって、
ブログには歌詞を書いてはいけないのだけれど、
敢て禁を破って、プログラムに書かれている訳詞を掲載する。

作詞:オスカー ハマースタイン2世
訳詞:尾形 香代子

『誰かがそばに』 You'll never walk alone.

嵐のときも 顔を上げて 歩き続けよう

嵐の向こう 金色の空 雲雀の声響き

雨風に 怯まずに歩こう 夢が遠くても

進もう希望胸に

And you'll never walk alone

誰かがそばに

この、あまりにもタイムリーな曲、テーマを持ったこの舞台に、
主役として、カーテンコールの中心として、上野くんが立っていた姿は、
きっと私の記憶に永遠に残るだろう。

それも、ただハンサムで、歌が上手いというだけでなく、
複雑な内面を持つ、繊細な役を見事に演じていた。

もちろん、それは、奇跡のように集ったキャストに支えられてだ。
『塔の上のラプンツェル』で見事なヴィランズを吹き替えた剣幸さんは、
役処そのままに、頼りになる姉御を演じていたし、
「天国の裁判官」を演じた石田太郎氏は、見事な演説で泣かせてくれた。

また、舞台に登場しただけで拍手が巻き起こった岩田守弘氏は、
ボリショイ・バレエのソリストでもあるダンサーだそうで、
確かに2幕のバレエは、まさに夢のような時間でもあった。

それでも、我らが上野くんの健闘は素晴らしかった。
この経験が、彼の中でいつまでも回転し続けてくれることが楽しみだ。

そして、この『回転木馬』が、ほかの都市でも上演されることも期待しよう。
特に、復興なった東北の各地で上演される日が来ることを願っていよう。

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コメント

「ぶたれても痛くないこと」
なんて絶対ない!

投稿: 舞姿 | 2011年3月31日 (木) 午後 11時41分

おとみさん、コメントありがとう。

例えば『ポーギーとベス』や、『オクラホマ!』なんかも、「誰が主役やねん」的な印象がありますが(笑)
この『回転木馬』のビリーは、そもそも主役としての資質と言うか、魅力に欠ける設定だと思いますね(笑)
「なんで、あんな奴に魅了されるのか解らない」と思いながら観ていましたもの(笑)

まあ、映画の『回転木馬』では、冒頭の工夫もあって、ちょっと違う印象ですけれどね。

なんにしても、これ、WSS並に「物語が好きになれない」作品であると思います。
ですから、記事の中では物語にほとんど触れていません

ただ、
「ぶたれても痛くないこともあるのよ」
という台詞そのものが、ヒロイン・ジュリーが伝えたいメッセージそのものなのだろうとは思います。

ミュージカル・プレイが、『アイーダ』級のテーマと感動の一体感を伝えてくれるまでには、もう数年掛かったという事かもしれません(笑)

投稿: みかん星人 | 2011年3月31日 (木) 午前 07時27分

>みかん星人さま
某カンパニーの回転木馬で、1時間ほど経過した頃、連れが、いったい何時になったら主役が出てきはるのと、素朴な疑問を呈して以来拝見してません。ぶたれたら痛いようにも思いますし。
そうですかぁ。そんなに凄いんや。チェックチェック。

投稿: とみ(風知草) | 2011年3月30日 (水) 午後 05時34分

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