陽なたpresents『オリーブ』 @ d-倉庫
副題が『~心には花を、頭にはスクラップブックを~』とあって、
あらすじは、19歳の大学生のこんな言葉で表されている。
真面目にうまく生きてきたつもりです
それなのになんで僕を取り巻く環境ばかりこんなに苛酷なのでしょうか
それでも僕は誠実に生きています、、、なんて偉いんだ僕、、、
その19歳の大学生を演じるのが、いまだ19歳の役に違和感のない、上野くん。
脚本にも、演出にも、そして何よりキャストにも恵まれて、
いつもながらの「観客の存在を前提とした演技」の主役という役どころで(笑)
そして、今までのどの役よりも、上野くんに似合っていると感じる役だった。
彼が演じたのは、これ。。。
ナス科の植物【イヌホウズキ】。。。別名【バカナス】。
その花言葉は、、、『嘘つき』と『真実』
実は、この【バカナス】、見かけによらず有毒な植物なのだそうで、
たぶん、花言葉もそこから来ていると思うのだけれど。。。
この、『嘘つき』で、けれど『真実』という花言葉の「レオ君」(上野くん)は、
境遇はちょっとばかり辛いが、真実を語れる19歳って存在だけれど、
実は無自覚に「本当のこと」と向き合うのを避けている、そんな青年だ。
その青年が、周囲の人々に翻弄され、やがて一つの「気付き」に至る。
この舞台は、その青年の覚醒が、とても心地よく堪能できるものだった。
(なんとなくキャラメルボックスの作品的な雰囲気があるなぁ・・・)
おかげで、土曜のソワレだけの観劇予定だったのが、
日曜のマチネまで観に行ってしまう程に、とても感動した。
この舞台が、見事に成立し、魅了してくれた大きな理由は、
もちろん台本の良さや、面白い演出にもあるのだけれど、
なんといっても、キャストの良さだった。
特に、上野くん演じる「レオ」をバカナス呼ばわりする老婦人、
タイトル・ロールの「オリーブ」を演じた荒井洸子さん。
荒井さんは『レ・ミゼラブル』の初演オリジナルメンバーの俳優さんで、
まさに上野くんの大先輩とのこと。
その荒井洸子さん演じる「オリーブ」が、
レミゼ後輩の上野くん演じる「レオ」の中にある『ごまかし(嘘)』を見抜いてしまう。
だからこそのバカナス呼ばわりではあったのだけれど、
そのバカナス・レオの中にある『真実』が、やがて「オリーブ」にも届く。
舞台は、もちろん物語を俳優が演じて成立するのだけれど、
「その俳優だから」「その俳優同士だから」という事で生まれる、
脚本には描ききれない相乗効果があると思う。
そして、それをこの『オリーブ』では、目の当たりにしたと感じた。
もし再演されるなら、上野くんが出るかどうかはともかくも、
もう一度、時を置いて、いろんな俳優で観たい作品だと思う。
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