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2010年10月20日 (水)

ゲートキーパー

「ゲートキーパー」という存在をご存じだろうか?

「ゲートキーパー」とは、
地域や職場、教育等の分野において、自殺のサインに気付き、見守りを行い、
専門相談機関による相談へつなぐ役割が期待される人材で、
『自殺対策基本法』が2006年に成立したのを受けて、
各自治体にある「心の悩み相談」などの窓口職員を対象に養成が行われている。

今回、一般人を対象とした「ゲートキーパー養成講座」があったので、参加した。

先の定義にもあったように、
ゲートキーパーの役目は、生きる力を失いかけた人を、見守る門番だ。
自殺のサインに気づき、生き難さを抱えた人を見守り、専門相談機関につなぐ。
どの部分をとっても大変に難しいし、覚悟が必要な事だけれど、いま必要なのだ。

1998年に自殺者が3万人を超えてしまった。
これは世界でも屈指の多さで、34.7%の人が「身近に自死者がいる」という現状。
つまり3人に一人の「知り合い」が、自死しているのが、この国なのだ。

自死に至る3つの大きな原因は「うつ病」「睡眠障害」「借金問題」で、
特に自死者の半数が精神神経科の受診を経験している。

この精神疾患、特に「うつ病」に関しては、最近こういう本を読んだ。


なぜうつ病の人が増えたのか

  • 冨高辰一郎
  • 幻冬舎ルネッサンス
  • 900円

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書評

自死とは直接関係のない本ではあるが、
いま、さまざまに喧伝されている「うつ病は治る病気」という宣伝の、
その背景に鋭く切り込んだ、なかなか面白い本だ。

で、この本にも書かれているのだけれど、「うつ病」患者は、一向に減らない。
「うつ病」という病に苦しんでいる人が、現実にたくさんいるのだ。
他にも、
上に挙げた項目の「睡眠障害」の多くはアルコール依存の問題も抱えている。

こうした、自死へのリスクが高い人に、どう接すればいいのか。
こういった人が、どんな自死のサインを出すのか。
 (例えば「疲れた」という言葉一つにも、そのサインが隠れている)

この「自死ののサインに気づく」ことが、まず、ゲートキーパーの最初の役割。
「気づく」というのが、なかなか難しい。
特に、身近な人が発するサインほど見逃しかちになるかもしれない。
「ゲートキーパー」としては、まずこの「サイン」を熟知することが肝心なようだ。

そして、何らかの「サインに気付いた」ら、次は「見守る」という役割になる。
「眠れてますか?」というような言葉を掛けたりすることで、見守り続ける。
また、大切なことは「時を置かない」という事でもある。
「次の機会」は無いかもしれないという事を念頭に置かなければならない。

そして、こうして見守っている、その生き難さを抱えた人を、
専門の機関(例えば「いのちの電話」など)に「つなぐ」ことをする。

「自殺」というのは、防止し得る、大きな社会的な喪失だと思う。
誰かがいなくなってしまう事で、実に様々なものが一気に失われる。
特に大きいのは、
自死者の周囲の人々、「自死遺族」と呼ばれてしまう人たちの喪失感だ。

「ゲートキーパー養成講座」の後半は、
こうした「自死遺族」に関してのレクチャーとなる。

冒頭に書いた『自殺対策基本法』の中には、
「あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り」
という文言が織り込まれている。

「遺されてしまった人」が背負うものも、大きな社会損失だと思う。
自死した人が社会の中に、本来、持っていた存在価値も失われてしまうが、
同時に、その自死者の周囲の人々もパワーを失い、
ひどい場合には、生きる力も失ってしまうことがあるという。

特に、遺された子どもが受ける衝撃は大きく、
「見捨てられた」とか「自分のせいでこうなった」といった自己否定や、
また「もう一人の親もいなくなってしまわないか」という不安を持ち続ける。

また、自死者の親や配偶者は、
「自死のサイン」を見逃してしまったのではないか?
という自責の念に苦しみ続けるそうだ。

この「ゲートキーパー養成講座」を受けて、実に多くの事を考えさせられた。

特に考えてしまったのが、
「自死へと繋がりかねない悩みは、実は、身近だ」という事。
「悩み事」というのは、人それぞれで、
人によっては重大だったり、些末だったする。
また、ちょっとしたきっかけで、解消する悩みも、意外と多い。
例えば「多重債務」なども、相談することで解決する可能性が大きい問題だ。

大切なのは、隣にも、悩んでいる人がいるという感覚を持つ事。
そして、その悩みを共有しようとする「やさしさ」を持つという事だろう。

最後に、自死と向き合って生きた人の「詩集」を紹介したい。
この本を読むと、
「自死」を選ぶ感覚が、そんなに特異な心境ではないことが理解できると思う。


亜久津歩詩集 いのちづな

  • コールサック社
  • 1428円

Amazonで購入
書評

「自死」を語るのは、話し合うのは、けっして禁忌ではない。
むしろ「自死」を特異なこととして差別視し、除外する感覚の中に、
この国で年間に3万人もの人が失われてしまう原因の根幹があると思う。

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