『エリザベート』 @ 帝国劇場 山口トート編
今夜は、山口祐一郎くんの「黄泉の帝王」を観に行った。
そこには、この『エリザベート』という演目が、
日本屈指の小屋・帝国劇場を3か月も占有できる理由が、居た。
きっと、山口トートのことを「耽美」と言うのだろう。
舞台からは物語が排除されて、
「さあ、美しいものを楽しみなさい」というメッセージが掲げられている。
これは、石丸トートでは叶わなかった事、、、という違いではない。
もし、石丸トートの舞台を観ていなかったら、
私はこの『エリザベート』の物語を知りも、知ろうともしなかっただろう。
また、たぶんきっと、正確な、端正なメロディーを耳に残すことも、
全体のバランスを眺めて、流れを感じて、記憶に留めることも、できなかった。
そう、、、石丸トートは『エリザベート』という作品を、
みかん星人の大切な「観劇経験」に織り込んでくれたし、
なにより、チケット代金に見合った満足を感じられる舞台だった。
けれど、山口トートでは、こうはいかない。
まず、舞台に登場すると、他の俳優が目に入らない。
トートダンサー達などは、帝王が巻き起こす風のようにしか見えなくなる。
なにより不思議に感じたのは、
「お金を払って観ているエンターテインメント」という意識が持てなかった事だ。
まるで、
「通りすがりに奇跡をみてしまった」という感覚とでもいえばいいのか。。。
【舞台演劇の何を楽しむのだろう?】という無粋な命題があったとして、
けれど、しばしば、その命題を忘れ去る瞬間に出会うことがある。
たとえば、、、
『ジーザス・クライスト・スーパースター』の、
『最後の晩餐』でのジーザスとユダ、そしてまだ理解してない使徒達のあの場面。
たとえば、、、
『アイーダ』の『迷いつつ』で、ラダメスが跪いて愛をささげる場面。
たとえば、、、
『アスペクツ・オブ・ラブ』の『ポーの山荘』でジョージとジェニーが踊りだす場面。
たとえば、、、
『ライオンキング』の『お前の中に生きている』でムファサが語る場面。
これらは、ほとんどの場合、ほぼ間違いなく私を泣かせてくれるし、
たとえその前後がグチャグチャになった舞台であっても(笑)
脳内変換を総動員することで、
「あー、芝居を楽しんだ、舞台を満喫した」と、至福の瞬間を与えてくれる。
その時間のためにチケットを買い、時間を用意して、劇場に行くのだ。
「この場面だけでも良いから、観たい」という理屈抜きの場面たちだ。
その「この場面だけでも」と思うその感覚に近いものを、
この『エリザベート』に山口トートが登場した時に、感じていた。
「これこそ演劇の歓び」とも言える快感が劇場を満たす。
彼の指先がライトを集め、光を放つ。
見開いた瞳がすべての意識を集め、支配する。
高いのか低いのかわからないその声が、心に直接染み込んでくる。
そっか、「死に魅入られる」というのは、ああいう瞬間なのかもしれない(笑)
ただ、、、褒めているようにも書いているが、
みかん星人は、もうこの『エリザベート』を観ることは無いと思う。
この演目は、少なくともこのシステムで上演される間は、
「山口トートの影響に支配された作品」としか感じられないと思うのだ。
私は「物語」が好きだし、ワンマンショーよりもチームワークが観たい。
けれど、この『エリザベート』には、それが無いと思った。
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コメント
花蓮さん、コメントありがとうございます。
引き続き、ご贔屓に
ブログ、写真が多くてきれいですね。
はい。。。贅沢にも、二人のトートを拝見しました。
石丸トートは、どなたかのブログに、
「はじめて、あの楽曲の正しいメロディーを聴いた」
という記事があって、思わず笑っていたのですが、
実際、まさに堂々たる正攻法のトートに感心しました。
けれど、はい、山口トートは、危険ですね。
軽々と、また朗々とした歌声は、すごすぎました。
投稿: みかん星人 | 2010年10月17日 (日) 午後 08時25分
はじめまして♪ 前のニックネームはあむねでした。。。
覚えてくれてらっしゃるかしら?ご無沙汰してました。
ブログも8月からお引越しして、ココログに居ついてます♪
≪エリザベート≫帝劇2回もいかれたのですね~。しかも
トート閣下を石丸さん&山口さんで観られたなんて
羨ましい!私は関西からの遠征なんで、今回は石丸トート
のみの観劇でした。山口さんも観たかったけど、過去4回ほど
観てるし、本当は城田トートも観たかったです。
人それぞれの感じ方ですが、私も石丸トートの歌声には
魅了されました。ねちこく熱いトートで、正直、びっくりしました
山口さんトートはまさしく帝王ですね。確かに山口トートの
舞台では、私も殆どトート閣下にしか目がいかず、
あ!っというまに、エリザベートの舞台が終わるので
、何回も足を運びました。おっしゃる事もわかるような気がしますです。
これからもよろしくお願いします。マイブログは、花蓮をクリック
して戴ければ、ジャンプすると思います
投稿: 花蓮 | 2010年10月14日 (木) 午後 06時41分