『バイ・バイ・ブラックバード』 by 演劇集団キャラメルボックス
『演劇集団キャラメルボックス』の劇団創立25周年記念の第2弾は、
完全に劇団オリジナルの新作『バイ・バイ・ブラックバード』という作品。
タイトルは、ジャズのスタンダード曲に由来するものだけれど、
曲自体が劇中に登場するわけではない。
この曲は、単に、通り過ぎて行っただけだ。
『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』を観たものの、
その後の『グロノス・ジョウンターの伝説』に行けなかったこともあり、
再び「キャラメルボックス」から遠ざかり始めていて、
今回の『バイ・バイ・ブラックバード』は、
事前情報をまったく知らないままに鑑賞してしまった。
後から考えると、けっこうに複雑な、というか面倒な話なのだけれど、
相変わらずの上手な説明展開で(笑)
物語の骨子は、それでも、自然に理解できる。
が、しかし、やはりこの物語は、本当に「やっかい」だ。
なにが「やっかい」かというと、、、
この作品が提示する「問題」は、
「もし、それが私だったら・・・」という置き換えが容易だという点にある。
だから、舞台を観ている間じゅう、心のどこかで、
「自分だったらどう考えるだろう?」という問い掛けが止むことがない。
もちろん、たいていの演劇作品で、観客は登場人物に同化し、
「私ならどうするだろう」ということを考えたりはするのだけれど、
この作品では、その「私だったら」を考える事が、実に多面的で、
私は、時々、舞台をみながら、自分の事を考えてしまっていた。
そういった意味で、少々、物語が複雑すぎた気がする。
3つのうち、1つは無くても良かったかもしれない<謎
この作品で、最も素晴らしいのは、客演の有馬自由氏(扉座)だ。
キャラメルボックスの役者陣は、最近はそうでもないのだけれど(笑)
全体に「若い人」が多い。
そんな中に、実年齢で登場する有馬氏の存在感は、大変に美しい。
さて、以下少々内容に踏み込んでしまうけれど、
この物語は「記憶・思い出」の意味、意義を問い掛けている。
「記憶・思い出」と言えば、森博嗣先生の『すべてがFになる』に、
「思い出と記憶って、どこが違うか知っている?」
という、素晴らしい命題があったけれど、
それが、この作品でも、少し説明されていて、
そしてまた重要なポイントにもなったいた。
もう1つ、、、
日頃このブログを読んで下さっている奇特な方には、
「思い出」という言葉で、『キャッツ』の名曲を思い出されるだろう。
T.S.エリオットの遺稿に着想を得た『メモリー』の歌詞は、
「どんな思い出であろうとも、それこそが未来を導く」
というニュアンスに読み取れるが、
この『バイ・バイ・ブラックバード』もまた、それに通じていると感じた。
劇団のページでも、「2度観たくなる作品」と宣伝しているが、
確かに、複雑さだけではなく、
この物語が「腑に落ちた」後で、冷静に見直したくなる作品だとも思う。
東京での公演は残り5公演と少なくなっているが、
続く神戸でも9公演ある。
友人にサポータークラブの人がいれば安くも観られるし、
相変わらず、舞台演劇が好きな人には、大いにお薦めの1本だ。
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