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2010年6月 1日 (火)

『騙し絵』 by マルセル F.ラントーム


騙し絵

  • マルセル・ラントーム
  • 東京創元社
  • 987円

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書評

「マルセル F.ラントーム」という著者は、フランスの人。

フランスのミステリといえば、子どもの頃に夢中で読んだ、
モーリスルブランの『ルパン・シリーズ』がある。
子ども向けの本での表記は「ルパン」だけど、
この『騙し絵』の出版社『創元推理文庫』さんでは「リュパン」だった。
フランスというと、『メグレ警部』というシリーズもあった。
マンガ『名探偵コナン』に出てくる警視庁刑事の名前は、ここからだ。
他にも「ル・コック」というスポーツ用品のような名前の、
しかしながら世界で最初と言われる探偵(刑事)小説もフランスのもの。

要するに、フランスというのは、意外とミステリ小説の宝庫なのだ。
が、最近では、あまりパッとしない印象がある。
女流の「フレッド ヴァルガス」辺りが、近頃麗しいのかもしれないが、
そもそも、フランスの小説は、
ミステリのトリックよりも心理描写に重点があるという定評だし、
どことなく「クルーゾー警部」が潜んでいる予感もあったりする(笑)

まあ、フランス・ミステリ概略はともかく、この『騙し絵』。

1946年の作品で、日本語翻訳版はこれが初めてだそうだ。
著者は、この作品の前に『聖週間の嵐(1944年)』という作品、
そして続いて『十三番目の銃弾(1948年)』を書いて、そしておしまい。
寡作というよりも、「書いてみたかったので、書いてみました」という感じなのかも。
実際、ラントーム氏は、巻末の「訳者あとがき」によると、
熱烈なミステリ・ファンで、英語で読んでいたそうだ。
そのせいもあってか、この『騙し絵』は、
仏文学に漂う「ややこしいレトリック」は(翻訳に因るのかもしれないが)ほとんど無く、
とてもストレートに読み進む事ができた。

そのお陰もあってか、トリックもなかなか明快で(笑)
ラントーム氏は、ご丁寧に「読者への挑戦」をしているけれど、
丁寧に読み進むと「それしかない結末」に到着する事になっている。
もっとも、みかん星人は、ミステリ小説における「トリック」は必要条件であって、
大切なのは「物語」にあると思っている。
で、この『騙し絵』は、けれど、残念ながら物語は平凡だった。
(まるで『名探偵コナン』レベル、というと、失礼なのかな(笑))

ただ、
物語舞台の時代よりも50年前の話が、妙に「前時代的」であったり、
1946年から考えた「未来の夢」がギリギリ現実不可能として描かれていたり、
時代が、そして価値観が大きく変動する雰囲気が織り込まれていたのが良い。

フランスにも、こんなスタイルのミステリ小説がある、
という意味では、存在価値の大きな一冊であると思う。

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