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2010年2月11日 (木)

『アイーダ』10000分の1

『アイーダ』という演目は、とてもバランスの良い作品だと思う。

オペラ形式の『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』のように、
台詞が無く、軽快な群舞が少ない重厚な作品ではない。
また、同じようにオペラ形式ながらダンスが楽しい『エビータ』は、
しかし、物語が伝記なので、登場人物への感情移入が難しい。
感情移入はできても、所詮はライオンの物語である『ライオンキング』や、
そもそもが、猫の生き方を綴った『キャッツ』は、自ずと限界がある。

いま、比較的簡単にその舞台を鑑賞できるミュージカルの中で、
『アイーダ』は、『クレイジー・フォー・ユー』と並んで、
物語が面白く、舞台が華やかで、解り易い作品だと思う。
更に、『アイーダ』は、登場人物の造形が優れているので、
感情移入がとてもしやすく、また深淵なのも美点だと思う。

そんな『アイーダ』が、今日、100万人目の観客を迎えたそうだ。
みかん星人一行は、およそ、その1万分の1を占めている感じ(爆)

ところが、
そんな特別カーテンコールがあるという案内があったにもかかわらず、
当日券の残席が「有」という表記なのには驚いた。
「東京『アイーダ』応援プロジェクト」を掲げていることもあるし、
再確認したい事もあって、寒い中、今日も劇場に行ってしまった。

これは、100万人記念のチョコレート!
でも、『アイーダ』のチョコレートは、これだよなぁ。。。
 (あー、福岡って、ほんと、自由だったなぁ(爆))

100mil

行ってみると、意外と1階の客席は埋まっていた。
一安心といった気持ちで(望んで)最後列に座っての鑑賞。
劇場の構造もあってか、最後列でも充分に堪能できた。

ただ、明日のチケットは、B席まで「有」な状況。。。もったいないなぁ。

今日、もう一度感じ、確かめたかったのは、2点。
1つは、みかん星人が感じた「印象」の再確認だ。

その「印象」というのは、
この舞台を、まるで映画を観ているように感じた、という点。

「舞台」は、その瞬間毎の演技の積み重ねで構築されて、
まったく同じ演技を繰返すことが出来ないばかりか、
その日の微妙なバランス加減で、全体の雰囲気が大きく変ってしまう。
「昨日はあんなに良かった舞台が、今日はいまひとつ」
という事も、「舞台」ではよくあることだ。

一方の「映画」は、
周到に用意され、何度もリハーサルを重ねた演技が収録されて、
「これ以上無いほどに完成した世界」が延々と正確に再現されるものだ。

例えば、ハッピーエンドの「映画」は、観客や社会の価値観が変らぬ限り、
何度繰返して観ても、永遠にハッピーエンドだ。
けれど、「舞台」の場合は、
「この悲恋物語、今日は、もしかしたら、ハッピーエンドになるかも?」
という予感、あるいは本当にそういう奇跡が起きる可能性がある。
 (『ウィキッド』は、そういう可能性を秘めている)

さて、前置きが長くなってしまったけれど(笑)
いま、海劇場に掛かっている『アイーダ』では、
樋口アイーダと阿久津ラダメスという強烈ペアを迎え、
まさに「映画」を感じさせるような「舞台」になっている。

つまり、ひとつひとつの場面に、
何度もリハーサルを重ねて理想を追求した結果のように、
「その台詞まわし、歌い方、姿勢、視線、それ以外はありえない」
という満足を感じる事ができるのだ。

さらには、最後列から観ているにもかかわらず、
私には二人の様子をクロースアップのように感じる瞬間があったり、
ラダメスの肩越しにアイーダを眺めたり、
アイーダが楽しげに語る姿を眺めるラダメスのカットバックを感じたりもした。
まるで、頭の中で数台のカメラが機能し、
その時々の台詞や視線、動きに合わせて、最適な構図を描くように観ていた。

こんなことは、他のどんな舞台でも経験した事が無い。
まるで、自分自身が舞台の上に、
いや、古代エジプトのその場に立っているかのような気分になる。
そして、手に取るように伝わる二人の感情のお陰で、自然と涙が溢れてくる。

たぶんに、呆れるほど何度も観ているからだろう。
この物語、音楽、そして作品との相性が良いからもあるのだろう。
けれど、こんなにも贅沢な演劇鑑賞が出来る作品は、他に無い。
この感覚は、晩餐の場面に限らず、
エジプトへの船の中でも、凱旋行進の夜にも、結婚前夜の場面でも感じる。

我が幻覚も、ここまでくれば、見事でありがたい(笑)
そして、こんな作品に出会えた事に、無上の歓びを感じた。

Choco

さて、
もう一点は、新しいアムネリス、光川アムネリスについて。

初めて光川アムネリスを観たその幕間で、私は、
「このアムネリスは、最後、どーなってしまうのだろう?」
と、興味というか、不安というか、少々の苛立ちすら感じていた。
他のキャストが、アンサンブルを含めて良すぎるだけに、
ベテランの中で、王女さまだけが浮いていたのだ。

冒頭の歌は、なかなか聞かせてくれたし、
声に心地よい清潔感もあって、それなりに上手い。
ところが、プールサイドの場面で喋り始めた瞬間に、愕然とした。
まるで、テレビに出てくる今時の若い女の子そのもの(笑)
語尾には妙な癖と響きがあるし、王女が備えるべき気品も感じない。
まさに「着飾るだけの王女さま」そのものだ(笑)

アムネリス王女を演じた俳優として記憶に残るのは、
佇まいからして王女そのものだったシルビアグラブさん。
京都にしか登場しなかったかったけれど、彼女は素晴らしかった。
そして、最近まで演じていた五東由衣さんのアムネリスは、
コケティッシュであり、慈愛に溢れた麗しい王女さまだ。
どちらも、「気品ある」という言葉が相応しいアムネリスだった。

そんな事を考えながら迎えた2幕。
トライアングルでは、ちゃんと情が乗っているし、ちゃんと上手い。
「歌は上手いし、スタイルは良いんだけどなぁ・・・」
と思っていると、ゾーザーの作戦室の場面がきた。
と・・・を・・・台詞毎に変化してく、、、
と感じる間も無く、アムネリスが覚醒する。
この場面の最後の台詞には、1幕の時とは全く違う響きがあった。

さらに、クライマックスでのアムネリスの様子は、
衝撃的なほどに凛々しくて、気高い空気をまとっていた。
もちろん、「生まれながらに持っている気品」とか、
「慈愛」というニュアンスを感じるまでではない。
けれど、むしろ、そういう資質が無く、無防備である分だけ、
この数日の間にアムネリスが受けた衝撃の大きさを表現できるし、
その中で、どれほどの努力で最後の言葉を発するのかも伝わってくる。

後になって思い出したけれど、これは佐渡アムネリスに近いなぁ。

実は、もう一度観て確認したかったのは、
1幕の演技が計算されたものかどうか?だった。
で、今日、改めて観た感じとしては、
光川アムネリスの「素」は1幕のアムネリスだろう(笑)
そして、そんな彼女が、大変な気力と共に2幕の王女に変化する。

そういう意味では、最もアムネリスという役に近い俳優かもしれない。

それに、見た目の良さが魅力的だ。
邪魔なほどに長い手足と、小さな顔。
身長が高いお陰で、阿久津ラダメスと並んだ時にセレブな感じが出る。
 (きっと、ナベラダでは、貧弱で、相手にならないかも(爆))
ファッションショーでは、当然なのだけど、どの侍女よりも綺麗だ。
そして、今までのどのアムネリスと違って、二の腕がプルプルしない!

ほんとは金平イルゼのアムネリスが観たいのだけれど(笑)
光川アムネリスは、なかなか素晴らしいアムネリスを造形している。

ところで。。。『アイーダ』の延長分の発売が延期になった。
これは、どういう意味なのだろう

大きくわけて、二つの理由が考えられる。

1つは、ほぼ9割の確率だろうけれど、
次の発売に「千穐楽」が設定されるから・・・というもの。

もう1つの、確率が1割も無いであろう理由は、
オーケストラピットを開けて、座席レイアウトを変更するから・・・というもの。

あー、ほんと、これで生演奏の舞台だったら、
ますます破産に向けて劇場に通ってしまうのだけどなぁ。。。

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コメント

ハイタカさん、、、、わたしも、そう願っています(笑)

投稿: みかん星人 | 2010年2月14日 (日) 午後 11時16分

skybrightさん、コメントありがとう。

skybrightの記事、読みました。
http://skybright.blog39.fc2.com/blog-entry-269.html
ほんと、良いコンビ、そしてキャストですね。

で、チケットが取り易いのも、複雑な気分です。

こんなに満たされる舞台は、そんなに無いと思うのですが・・・・ね

投稿: みかん星人 | 2010年2月14日 (日) 午後 11時14分

次回はアイーダだなと(笑)明日は見送り。
・・・ええと・・・

座席レイアウト変更に1票!あれを生演奏で聞きたいです。

投稿: ハイタカ | 2010年2月13日 (土) 午後 02時21分

阿久津&樋口コンビは最強ですよね!!今月1回観ましたが、このペアのうちにあと数回…と思ってしまいます。残席多いのは気になりますね。。。
CFYはご覧になりましたでしょうか?花ちゃんポリー、がんばってますよ!!

投稿: skybright | 2010年2月13日 (土) 午前 09時15分

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