『アイーダ』 @ 四季劇場海 by 劇団四季
劇団四季の『アイーダ』は、何度観ても見飽きない。
キャストの違いによるブレがあったとしても(笑)
物語が内包している魅力と、メッセージ性の強いダンス、
そして何度観ても感嘆してしまう舞台装置によって、
毎回シビレル程の感動を得てきた。
しかしながら、今回観た『アイーダ』は、
これまで観てきたどの『アイーダ』とも比べられない。
今、海劇場で上演されている『アイーダ』は、次元の違う完成度だ。
(ここで言う「次元が違う」のニュアンスは、例えるなら、
06年に来日した『RENT』と昨年夏の『RENT』との違いみたいな感じ)
その理由は、実は、とても簡単で明確。
ラダメスを演じる阿久津くんがみせる演技の素直さと確かさにある。
また、この記事でも書いていたが、
そもそも好きだった樋口アイーダの、
ヌビア王女らしい様子(容姿?(爆))と凛然たる様子にもある。
更には、飯野ゾーザーや有賀メレブが、
阿久津ラダメスと樋口アイーダの自然な演技を受けて、
それまでの経験の中から、最も的確な演技で応えていたのも大きい。
やはり、メレブだけは、有賀くん以外には考えられないなぁ。。。
また、初々しい光川アムネリスも良かった。
(光川アムネリスに関しては、別記事に書こうと思う)
久しぶりに観た阿久津ラダメスは、まるで別人のように変っていた。
台詞の強弱、抑揚、そして自在なテンポ、、、恐ろしく上手い。
ラムタムタガーやS&Dでは勉強にならないと思うので(笑)
やはり『トロイ戦争は起こらないだろう』辺りの経験か。
これは、WSSのトニーを演じた福井くんでも感じたことだけれど、
演技のバリエーションが豊富になっている。
それまでは「強中弱」「大中小」しかなかったのに、
この日のラダメスは、その演技のバリエーションが多彩だった。
たとえば、、、
この日はこの場面から泣いてしまったのだが、、、晩餐会の場面。
杯を投げつけたラダメスがアイーダを呼び止めて問い掛ける。
その問い掛ける様子が、いままでのどのラダメスとも違って、優しかった。
そう、問い質すのではなく、まさに問い掛ける感じ。
これを受けての樋口アイーダの、若干訝しげな反応がまた上手く、
アイーダとラダメスが惹かれはじめる重要な場面の意味が際立った。
つまり、「将軍」とは違う「ラダメス」という冒険好きの青年人物が現れ、
そのラダメスとアイーダの心が響き合い、共鳴し、
やがて二人の夢を語り合うという流れが、とても自然だったのだ。
お陰で、この場面の後半にあるアイーダの本領発揮な部分も、
本当の「ラダメス」を感じたからこそ、
アイーダが感じた気持ちが爆発する様子が痛いほど伝わってくる。
話はそれるが、、、みかん星人は、この場面に関しては、
圧倒的に樋口アイーダの演技を買っている。
そもそも素晴らしいコメディエンヌの樋口さんらしいオドケぶりも可愛いし、
なにより、その気高さが遺憾なく発揮されていて、心地よいのだ。
さて、もちろん、阿久津ラダメスの改良点は台詞ばかりではない。
いやむしろ、阿久津ラダメス最大の見所は、歌にある。
福井ラダメスが、響きと滑らかさを特徴にしているのに比べて、
どちらかというと阿久津ラダメスは荒々しくて威勢が良い歌い方だった。
(例のメロディーの違いも、そういう部分から聞くと納得できる)
が、恐ろしく長いブレス(ロングトーン)を手に入れた阿久津くんは、
聞き手がドキドキするほど滑らかに、優雅に、丁寧に歌い上げる。
一息に歌える距離が長いお陰で、歌のニュアンスまでもが明確になる。
もう一点、今までの彼には無い「相手に合わせる」という感覚も素晴らしい。
声の響きを大切にしている感のある樋口アイーダとのデュエットでは、
彼女の響きにうまく乗るように、支えるようにして声を調整している。
いや、実際にそういう小細工をしてるのかどうかは解らないけれど(笑)
いままでの阿久津君は、相手の声を掻き消すほどのパワーだったのに、
今回の舞台では、そういう事が一度も無く、
アイーダとラダメスの声の響きが、まさに共鳴していた。
まだまだ書きたい事がたくさんあるのだけれど、
それは、もう一度観て、改めて別の記事にしようと思う。
ともかく、
いま舞台に立っている阿久津ラダメスと樋口アイーダの組み合わせは、
今まで観てきたどの組み合わせよりも相性がよく、
そしてなにより、『アイーダ』という物語を的確に伝えていると思う。
まさに、必見の舞台だ。
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コメント
柴さん、コメントありがとう。
まあ、ナベラダは論外ですからね。
あれ(爆)を初日に出してくる姿勢からして、すごく萎えました。
ここで「応援プロジェクト」なんて書いていたのが恥ずかしいぐらい(笑)
ま、でも、はい、良いですよ>あっくんラダ将軍
投稿: みかん星人 | 2010年2月14日 (日) 午後 11時02分
peachさん、コメントありがとうございました。
ブログも拝見してTBさせていただきましたよ。
共感していただけて嬉しいです。
かなり偏った観方というか、偏屈な記事を書いてますけど、これからも、よしなに(*^^*)
投稿: みかん星人 | 2010年2月14日 (日) 午後 11時00分
おぉぉぉぉお…
なんだか久々にアイーダ観に行きたくなっちゃいました
渡辺ラダメスと金田ラダメスを観てから、四季への興味が大幅ダウンしていて、なかなか劇場へ足が向かなかったのですが…。
久々に行きたいって思えました♪
ありがとうございます!!!
投稿: 柴 | 2010年2月11日 (木) 午後 09時58分
いつも的確なレポに感心させられながら、拝見させてもらってます。
私も最近このコンビで観劇したのですが、こちらのレポを読ませてもらいながら、「そう。そうなんだよ。。。」とうなずいて共感しているうちにまた行きたい衝動に駆られています((笑
あの感動と興奮がよみがえってきました!
素晴らしいレポありがとうございます。
投稿: peach | 2010年2月11日 (木) 午後 09時56分