『天使の耳の物語』 by 成井 豊
- 成井豊
- ポプラ社
- 1575円
この本には、
2009年12月23日の夜に起きた事が書いてある。
物語の主人公は、1961年10月生まれのの高校教師で、
みかん星人と同い年の、つまりは48歳の初老の男だ。
そしてまた、この本は、
明日、12月25日までサンシャイン劇場で上演されている、
『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』の小説版でもある。
(いちおう、帯では、舞台の原作と解説されているが、
舞台化を前提にしてるのだから、「原作」とは微妙に違うと思う)
この舞台に関しては、こちらの記事を読んでいただこう(笑)
私は、子どもの頃から、映画や芝居の小説版を読むのが好きだった。
映画を観れば原作本や、ノベライズを手にしていたし、
読んだ物語が映画や舞台になれば、たいていは観にいった。
この『天使の耳の物語』を読んでいて、思ったのだけれど、
あれは、要するに、
「もっと詳しく、重層的に、物語を知りたい」
という欲があったのだろうと思う。
同じ映画や舞台を、ついつい何度も観てしまうのにも、
この辺りに理由があるのだろう。。。と、言い訳ひとつ。
閑話休題
すでに舞台を観ているので、
これを「小説」として純粋に読む事はできなかった。
舞台とは、大きな設定で違うところもあるし、
舞台ではなされて無い説明がキッチリと書かれていたりして、
『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』を観た人には、
「もっと詳しく知りたい」という願望がかなり叶えられる。
特に、バンド(デュオ)の名前に関する部分は、ちょっと面白い。
この物語は、一人称で書かれている。
それが芝居になるとどうなるか、というと、
そう、主人公が中心になって、ずーっと話している舞台になってしまう(笑)
小説として読むと、気にならない事だけれど、
舞台を観た者が読むと、改めて、主人公役の苦労が分かったりする。
舞台では「心の声」として、実に見事な演出となっていた部分は、
この本の中では、フォントの変更で対応している。
贅沢をいえば、色を変えて欲しかったりして(笑)<むしろ邪魔か?
キャラメルボックスの芝居を小説で読んで、改めて感じたのは、
「根っからの悪人が出てこないなぁ」という事。
悪事を働いても、それなりの理由を用意してあるし、
なにより、サスペンスは成立しても、スリルというか恐怖が甘い。
舞台では、それなりの演出と俳優の力で「恐怖」は生まれるけれど、
残念ながら、小説の中では、ちょっと難しかった。
説明不足もあって、悪事の全般が見えてこないのも、残念かな。
それでも、不満というわけではなくて、
そういった、ちょっと隣にある悪事みたいな雰囲気が、
キャラメルボックス、そして、成井氏の美点なのだと思う。
それにしても失敗したなぁ。
『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』は、
ブログライターという枠で見させてもらって、
観劇の後に、脚本&演出家として、この著者・成井氏に質問する機会があった。
舞台だけを観ていた分には感じなかったいろいろな事が、
この小説を読んで、いろいろと聞いてみたいと感じている。
もったいない事をしたなぁ(笑)
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コメント
ゆきのさん、コメントありがとうございます。
中学3年生にとって、「中年男の物語」はどんな感じだったのでしょう。感想など書いてくれると、とても嬉しいです。
本ですが、こういうデータになっています。
単行本: 210ページ
出版社: ポプラ社 (2009/11/2)
ISBN-10: 4591112543
ISBN-13: 978-4591112540
では!
投稿: みかん星人 | 2013年7月31日 (水) 午後 07時11分
こんにちわ(◎´∀`)ノ
中三です。
今年の読書感想文によみました。
お願いなんですが、、、
天使の耳の物語の発行所と発行年を教えてください。
本のサイズも教えれたら、お願いします。
投稿: ゆきの | 2013年7月31日 (水) 午後 06時03分
みひろさん、コメントありがとう。
今回の「悪事」も、詳細不明ですね。
「なぜ、手に包帯をする事になったのか?」
は、かなり気になる部分なのに、
その辺りは説明が無い。
や、舞台で説明が無いのは良いとして、
小説版には、詳しく書いてあっても良いのになぁ。。。と、
尤も、
その辺りを詳しく知りたがるのは、
ある意味、ワイドショー影響を受けているのかも(笑)
あの舞台のDVDは、久しぶりに欲しくなりました。
投稿: みかん星人 | 2009年12月31日 (木) 午前 01時37分
ご無沙汰してます。
キャラメルには根っからの悪人が出てこない、
というのはいつも感じることなのですが、
その裏返しで、それ故に
悪事を徹底追究できない歯がゆさみたいなものが
残ることが結構あります。
勧善懲悪じゃないからなんとなく不全感が残るんだけど
でも、それが日常の中にある物語だと感じる所以だなと
思います。
今年は久しぶりに『さよならノーチラス号』を観て
それを感じて、
『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』でも
似た気分になって
みかんさんの指摘でなんか腑に落ちました。
それにしても、小説版では
私とご同業なのですね(^^;;;<静治さん
これはますます必読かも。。。
投稿: みひろ | 2009年12月26日 (土) 午後 08時59分