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2009年11月28日 (土)

『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』 by 演劇集団キャラメルボックス

演劇集団キャラメルボックスの新作を観てきた。

キャラメルボックスの芝居を観るのは、久しぶり。
この前観たのは「クロノス・シリーズ」で、2008年2月のこと。
ちなみに、
来年早春には、この「クロノス・シリーズ」の新作が掛かるらしい。

閑話休題

2009年クリスマスツアーのタイトルは、
『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』
「イヤーズ」は"Years"ではなくて"Ears"、
つまり『天使の耳の物語』というわけ。

1961年生まれの中年男性が主人公。
48歳になった彼は、いままで、すべてが順調だと信じていた。
ところが、ふとした出来事から、彼は息子の嘘を知ってしまう。
更に、その時のイザコザで頭を強打したことから、
ひとの「心の声」が聴こえるようになってしまう。

1年半ぶりにキャラメルボックスの舞台をみたくせに、
こんなことを言うのはおこがましいけれど、
「久しぶりに、キャラメルボックスらしい作品を観た」と感じた。
みかん星人にとって「キャラメルボックス」の根幹は、
けっして「子どもの頃の傷を大人になって解消する話」などではなく、
大人の視線で描かれた、大人同士の純愛物語にあると思うし、
その原動力は「守りたいものを必死で守る」という決心にあると思う。

そういう意味で、今回の舞台は、
まさに「キャラメルボックスらしさ満載の舞台」と言えるだろう。
サスペンスも交えて、最後までワクワクしながら観る事ができる。

できる、、ハズだ、、、
もし、この不思議で魅力的な演出に混乱しなければ、だけれど(笑)

実のところ、この作品は、物語よりも、その演出に魅力がある。
ここ数年の間に観た舞台芸術の中でも、
『プレイ・ウイズアウト・ワーズ』に並ぶ演出の面白さだ。

既にチケットを手にしているキャラメルボックス・ファン、
あるいは、劇場で初めてこの演出に戸惑ってみたいという人は、
「続き」を読まずに、もちろん他の情報も読まずに、劇場へどうぞ。

主人公・三沢静治(西川くん)にだけ聴こえる「心の声」の演出が、
たいへんに面白い。

「心の声」を演じる俳優が、舞台の上に配されるのだ。
たとえば、静治と妻の詠子が対話する場面では、
詠子のすぐそばに、もう一人の俳優が居て、
その俳優が詠子の「心の声」を喋る。
つまり、二人の会話なのに、3人の俳優で芝居が進むという具合。

こうして二人だけの会話ならまだしも、
家族5人全員、静治の妻をはじめ、彼の母、息子、娘が話し出すと、
それぞれに「心の声」担当がついて喋り出すので、
「発声された声」と「心の声」が入り乱れる。

正直なところ、「心の声」が登場した当初は少々混乱した。
が、その演出の意図が解ってくると、
普通より多く交される台詞のやり取りの妙に引き込まれると同時に、
「よくもまあ、こんなスリリングで面白い舞台を実現させたものだ」
と、高度に完成されたアクロバットを観ている様な興奮を感じてくる。

演出家によると、いつもより苦心したのは、
「リズム感」や「緩急」というタイミングの「精度」だったそうだ。
誰かが話す、続いて「心の声」が聴こえて、それに静治が反応する。
本来は無いハズの「心の声」の時間の分だけ下手すれば芝居が間延びする。
けれども、実際には、舞台を観ている間、そんな妙な間を感じる事は無かった。
当然、俳優が積み上げた稽古の苦労も相当大変だったようで、
キーマンを務めた阿部くんは、
「この芝居、いつか、できる日が来るのだろうか?」
と思っていたそうである。

前半にも書いたが、
こんな複雑な演出作品の物語そのものは、かなり簡潔だ。
が、この素晴らしい演出によって、実に奥行きがある。
SF的な要素を織り込んで描かれる「もしも」のシュミレーションは、
主人公と同い年の私にも充分満足できるものたったし、
「これぞ、キャラメルボックスにしかできない作品だ」
と言い切れる。

12月25日まで、池袋のサンシャイン劇場で上演される。

大袈裟ではなく、今年最後の、必見の舞台である。

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コメント

キャラメルの記事、久しぶりではないですか?!
←ちょっと嬉しい。
私は毎公演行っていますが、今回は再来週です!
続きを読む以降は、my観劇が終ったら、
読ませていただだきますねっ。
会報には、最近のお気に入り阿部丈二が
西川さんやあんりちゃんと共に写っているので、
ちょっと活躍かも!?と楽しみにしているところです。

投稿: ハルカ | 2009年12月 2日 (水) 午後 03時47分

ハルカさん、コメントありがとう。
ハルカさんは、再来週のご予定なのですね、、、ブログ、楽しみにしています。


ともかく、物語よりも、
「舞台の上で起きている出来事」
を楽しんでしまう舞台でした。

阿部君は、終演後の疲れも見せずにブログ記者会見に登場されて、
私の目の前で(笑)とても真剣に今回の舞台について語ってくれました。

ホント、今回の舞台では、彼の芝居が肝ですよ!
すっごい期待を抱いて、差し入れなど持って(笑)劇場に行って下さいhappy01

投稿: みかん星人 | 2009年12月 4日 (金) 午後 07時31分

こんばんは。
コメント&TBありがとうございました^^

確かに作る側とすれば心の声の緩急、テンポは難しいですよね。
でも今回そのテンポが絶妙だったと思います。
特に手話と組み合わせる部分、奏が通訳して、
心の声と二重に聞こえてくる場面なんかは
役者さんの努力の成果が見られますw
こういう役者の演技・独特の演出に加えて、あの引き込まれる物語ですから、もう言うことはないですね。

投稿: メッキー | 2009年12月 6日 (日) 午後 10時41分

メッキーさん、コメントありがとうございます。

「手話」の部分、かなりゾクゾクきましたね。
キャラメルの芝居には、聾者が登場する作品があるのですが、
今回の手話の使い方というか、心の声として伝わってくるというその感覚は、
なかなか斬新で、画期的だったと思います。

そのうちDVDになると思いますので、
ゆっくり時間をかけて楽しみたいと思っています。

これからもヨロシクです。

投稿: みかん星人 | 2009年12月 8日 (火) 午後 12時27分

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受信: 2009年12月 6日 (日) 午後 10時42分

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