『The Musical AIDA』 @ 東京国際フォーラムC
もちろん「生演奏」で、ピットには20人編成のオーケストラ。
そして、当然の如く、指揮者の挨拶で舞台が始まる。
「ミュージカル」と標榜してるくせに生演奏では無い舞台は、やはりおかしい(爆)
始まって早々、物語の展開に大変驚かされる。
なんと、この物語のアイーダには、兄がいる
しかも、ラダメスは、彼女アイーダがエチオピアの王女であることを知ってる
その上、アイーダは、開幕早々に、
「憎しみの連鎖を断ち切るべき」とラダメスに説教する
いやはや、こちらのアイーダ姫は、なんとも大胆で明確だ。
オペラのアイーダ姫は、「王女の自覚」という部分では少々甘く、
第3幕で、それを父のアモナズロから非難されて罠にはまる。
ブロードウェイの(ディズニーの、ティムライスの、若しくは劇団四季の)アイーダ姫は、
エジプトへの反発というよりも、ヌビア人(エチオピア人)としての誇りが強く、
それが、正体を明かさない事によってラダメスや、アムネリスを魅了もする。
3つの『アイーダ』が描く3人のアイーダ姫は、微妙に立場が違うようだ。
それにしても、「姫だと知られているアイーダ」というのは、なかなか凄い。
このため、アイーダ姫とアムネリス姫の関係が、
他の『アイーダ』とはかなり違っている。
オペラのアムネリスは、アイーダを「妹」とも呼ぶほど可愛がるし、
ブロードウェイのアムネリスは、利発で物怖じしないアイーダを気に入り、
やがて自分の「王女」としての立場に理解を示すアイーダに友情を感じる。
けれど、宝塚版のアムネリスは、アイーダを仇として見ている。
お陰でアムネリスの他の侍女達から、アイーダはいぢめられたりしてしまう
随分と違うものだなぁ、、、と感じたのは、このアイーダ姫だけではない。
むしろ、より一層の「相違」というか「違和感」があったのは、ラダメスだ。
どうにも「将軍」に見えない(笑)
と言うよりも、観ているうちに、
「あー、これって、凛々しい女性が演じたら、綺麗だろうなぁ」
と思ってしまった。
「どこがどう」とは表現できないのだけれど、
この宝塚版『アイーダ』のラダメスは、男として理想(夢想)的過ぎる。
例えば、、、ブロードウェイ版のラダメスが、
アモナズロが生け捕りになった事を知った時に見せるような「油断」が、無い(笑)
そういう部分に気がついてしまうと、
例えば「凱旋場面」でのエジプト兵のダンスや発声が、
「やっぱり、これ、宝塚だったら、すっごく綺麗で魅力的なんだろうなぁ」
なんて思ってしまう。
もう、一旦そう感じてしまうと、
2幕での沢木アモナズロの芝居が、浮いて見えてしまった。
(光枝ファラオの演技は、終始舞台を支配していて良かったけど)
初めて聴く曲の数々は、耳に残るメロディーはあるものの、
どことなく似たり寄ったりの印象があった。
で、後になって考えると、
昭和のテレビ番組『ステージ101』で聴いた音楽みたいだった。
どことなく懐かしくて、清潔で、でも毒の無い音楽(笑)
こうして3つの『アイーダ』をみてみると、
改めてブロードウェイ版における人間描写の深さを思い知る。
アイーダ姫を、彼女の凛とした姿の中にある冒険心やウイットで描き、
さらにヌビアの捕虜達との交流を通して観客に人柄を感じさせる。
ラダメスもまた、自らの戦歴を省みて後悔し、
自分の未来を模索しながらも逃げ出さない男らしさがある。
なにより、オペラや宝塚版との違いは、アムネリスにある。
ブロードウェイ版の『アイーダ』の主役は間違いなくアムネリスであり、
彼女の気付き、苦悩、変化、そして決断が、この物語の核なのだ。
あと1か月で、ようやく東京にブロードウェイ版『アイーダ』が掛かる。
が、どうやら、生演奏では無さそうなのが、本当に残念だ。
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コメント
ハイタカさん、コメントありがとう。
特に、脇坂さんがいない事が、どんな影響をもたらすのか。。。
台詞もあるたいせつな役だったので、これは興味あります。
3人のパパも、観どころですね。
(ゾーザーは飯野さんでしょーねー。。。他の二人も、あの方達かな)
この間まで自由劇場で飛び跳ねていた奴らが出てきてくれたりすると嬉しいんだけど。
(それなら、直ぐにでもいってみたい)
ブロードウェイ版のアムネリスは、本当に素晴らしい役どころですね。
私も、いろんな「役」を見ましたが、心理描写の難しさでは最右翼かと思いますよ。
オーケストラに関しては、ともかく、開幕を待ってみましょう(笑)
投稿: みかん星人 | 2009年9月16日 (水) 午前 01時04分
はいそうなんです。
通いそうといっても(猫も)チケットは2日目のものだけ(笑)
佐渡さんのアムネとかも観てみたかったのですが、お会いしたかった退団キャストがたくさんいるので(ダンサーさんも)どんなアンサンブル&キャストでくるか楽しみです。
開幕将軍はだれかな~・・・・パパはだれかな~。
職場の戦後の音楽ブック(某児童館からの廃棄本)のアイーダがかなりよくって(文章が)ああ・・・オペラはこうかととってもわかりやすかったです。
で、そこに書かれているアムネは結構好きでしたが、やっぱりブロードウェイ版がいいな~と思いました。
生演奏・・・本当に楽しみにしてたんですが
はあ・・・残念です。なんでだろう。
でも・・・・イラットする演奏されるよりはいいのかしら?ううむ・・
専用劇場に行った醍醐味は生演奏なのに。地方だから生演奏はあきらめてるところがあったのですが・・・・最近は本当にないんだもん。
投稿: ハイタカ | 2009年9月13日 (日) 午後 11時21分
ハイタカさん、コメントありがとう。
生演奏は、絶望的ですよね。。。
なので、チケットも1枚しか買っていませんし、
「アイーダ支援プロジェクト」も開店休業ちう。。。です(爆)
投稿: みかん星人 | 2009年9月12日 (土) 午後 08時48分
ああ・・・待ち遠しいです
早く姫にお会いしたくなりました。
ううむ・・・東京かよいそうだわ・・・
本当に生演奏がいいです
投稿: ハイタカ | 2009年9月12日 (土) 午前 10時43分
あむねさん、コメントありがとう。
》宝塚版は、民族間の戦争の虚しさや惨さから
》戦いのない、平和な世界を築きたいという
》ラダメスとアイーダの願いが強調されていたような
》感じを受けました。
はい、そういう感じです。
観ていて「そうだ、ラダメスって、権力を持っているんだった」と再認識しましたよ。
オペラ版では「奴隷解放」はありましたが、
ブロードウェイ版のラダメスには、解放という大胆さはありませんですものね。
オペラ版の『アイーダ』は、その制作由来からして【WHEN】と【WHERE】を描いたものだったのでしょう。
ブロードウェイ版は、そこに【WHO】と【WHY】を入れて、
「どんな人が、なぜそんな結末に」というドラマを描いたのでしょう。
そして宝塚版では【WHAT】と【HOW】が描かれたように感じます。
当時起きたであろう事はどんな事で、それがどのように進んだのか。。。
ブロードウェイ版が「内面重視」。
宝塚版は「行動重視」なんでしょうかね?
3本合わせると、当時から今も変らぬ問題が浮き上がりますね。
うーん、、、機会があったら、『王家に捧ぐ歌』も観てみたいものです。
投稿: みかん星人 | 2009年9月11日 (金) 午後 08時31分
こんにちは♪
オペラ&The Musical AIDA
双方ともの感想を読ませて戴きました。
ありがとうございます。
後者は宝塚版「王家に捧ぐ歌」と類似しているとの
事ですので
私はDVDで
湖月わたるラダメス&安蘭けいアイーダで
見てるので、ストーリーは、だいたいそのラインなの
かな…と想像しています。
今度の連休中に、大阪で観劇予定です。
確かに、宝塚版は、大人数で素晴らしい舞台セット
でした。
ラダメスも美しい出で立ちで……
四季版の男らしい将軍様とは、大分に
設定が違います。。。当然かも…
宝塚版は、民族間の戦争の虚しさや惨さから
戦いのない、平和な世界を築きたいという
ラダメスとアイーダの願いが強調されていたような
感じを受けました。
いずれの舞台も、現代社会に
一石を投じる普遍的なテーマが盛り込まれている
と思います。
私も、近々の大阪でのAIDA
そして10月開幕の四季のAIDA
観るのが、本当に楽しみです。
投稿: あむね | 2009年9月11日 (金) 午前 10時49分