『アイーダ』 by ミラノ・スカラ座
とうとう「ミラノ・スカラ座」の舞台にやってきた。
マリアテレジアが設立した、イタリアオペラの殿堂、
あの「スカラ座」の、もちろん、日本公演。
なんと、この日2009年9月4日の公演が、
「ミラノ・スカラ座の日本における100回目の公演」だった。
カーテンコール早々に楽団員がオーケストラピットから居なくなったと思ったら、
楽団員全員、もちろん、マエストロのバレンボイム氏も含めて、舞台の上に登場。
俳優、楽団員、スタッフなど総勢200人以上が舞台に乗って、
100回目の公演が、盛況に、無事に終った事を、枡酒とともに祝った。
こんな破天荒なカーテンコールは、初めて観た。
初めて、と言うか、新記録もある。
今日の『アイーダ』は、今まで観たどの舞台よりも、高価だった。
今までの最高記録は、オペラ『ポーギーとベス』で18,000円、もちろんS席。
と思っていたら、
なんと、やはり同じ『アイーダ』@新国立劇場のS席が28,500円だった。
しかしながら、今日のこのミラノ・スカラ座による『アイーダ』は、
NHKホールの3階のB席でありながら、51,000円(ちなみにS席は67,000円)
もちろん、オペラの来日公演がおしなべて高価なのは知っているし、
「ミラノ・スカラ座」ともなれば、いろんな意味で妥当な価格かもしれないけれど、
(スカラ座でのオペラ公演だと、1階席は約30,000円だそうだ)
それを自分が手にするなんて、思ってもいなかった。
それほどまでして観たかったのは、
【演出:フランコ ゼッフィレッリ】に惹かれての事。
前出の、新国立劇場で観た『アイーダ』も彼の演出だったが、
さて、名にし負う天下のミラノ・スカラ座でゼッフィレッリがした演出とは・・・
新国立劇場で観たゼッフィレッリの演出に関しては、
リンク先の記事で、我等がクマ達が語っているけれど、
あの時感じた「まるで映画の一場面」と表現した感覚の理由がよく解った。
舞台装置が、具体的で、リアルなのだ。
「リアル」って表現も妙だけれど、
博物館や「エジプト展」で見る遺物が、新品として舞台に設置されている感覚。
石の階段は綺麗に切り立っていて、装飾に施された輝石も(まさに)輝いている。
織物も鮮やかに発色していて、それでいて自然な風合いがある。
映画『ハムナプトラ』の冒頭のシークエンスをご存知なら解るだろうけど、
つまり、舞台に古代エジプトが、砂に埋もれる前のエジプトが、ある。
不思議な感覚だけれど、私は『善光寺』や『浅草寺』を思い出していた(笑)
人々が、今もなお面々と、日々神聖な祈りを捧げている場所。
「舞台」というと、どうしても象徴的だったりして特殊な空間を感じてしまうけど、
ゼッフィレッリが用意したのは、当時の神殿をそのまま再現したかのような舞台だ。
そこで織り成されるドラマは、だから、人物に感情移入がしやすい。
「昔のことだから・・・」という感覚は無く、情緒が素直に伝わってくる。
ようやく「オペラの聴き方」が解りかけてきた感じの初心者だけれど、
こういう演出のおかげと、物語にも馴染んでいるので、
全編、吸い寄せられるように舞台に夢中になっていた。
スカラ座は『アイーダ』を6月から7月に掛けて本拠スカラ座で上演していて、
その時のキャスト・メンバーがこの日も登場している。
中でも、アイーダ役の「ヴィオレッタ ウルマーナ」と、
その父・アモナズロ役の「ホアン ポンス」が掛け合う第3幕は圧巻。
他にも、ファラオ役の「カルロ チーニ」や、
ランフィス(司祭長)「ジョルジョ ジュゼッピーニ」もスカラ座上演時のキャストだ。
残念な事に、
スカラ座でアムネリスを務めた「ルチアーノ ディンティーノ」が不調で降板。
代役の「エカテリーナ グバノヴァ」は、確かに上手いけれど、
アイーダに敵わない感じだったのは、幻覚かもしれない。
「永遠の夢想少年」であるラダメスは「ヨハン ポータ」という44歳のおじさん。
前半はちょっともの足りなかったけれど、
第3幕でアモナズロと対峙してからは素晴らしいラダメスだった。
この、ゼッフィレッリ演出によるスカラ座の『アイーダ』は1963年が初めて。
その後も、時折演出家を変えて『アイーダ』を上演しているが、
ゼッフィレッリ版は2009年6月の上演で54回の公演を記録している。
一方、新国立劇場で上演されるゼッフィレッリ演出の『アイーダ』は、
杮落とし公演7回、2003年再演6回、2008年再々演6回
で、次の公演初日が20回目となる(笑)
正直なところ、舞台としての面白さは、新国立劇場版の方が面白い。
より重厚な感じがあったり、2幕のバレエが楽しかったり、
なにより、2幕2場の凱旋行進が呆れるほど長くて華麗だったと思う。
ただ、音楽においては、これはもう圧倒的に、
「ミラノ・スカラ座管弦楽団」の音、そして響きが美しい。
巨匠「ダニエル バレンボイム」によって導かれ、紡がれる音は、まさに至福。
滑らかで、光沢のある、しっかりとした織物が、
魔法の絨毯のように自由に宙を舞踊るようだ。
特に、歌と呼応するような木管の響きは、身体中を音楽で満たしてくれる。
なにより、物語を強く意識させてくれる抑揚が素晴らしいと感じた。
冒頭に書いた、収集のつかない雰囲気のカーテンコールは、
最後に一人カーテンの前に登場したバレンボイム氏への喝采を以て終った。
そうそう。。。
これほどのグランド・オペラをなぜ間口(高さ)の狭いNHKホールで?
と思っていたら、11月20日に教育テレビ『芸術劇場』で放送されるそうです。
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コメント
あむねさん、コメントありがとう。
はい。。。そして、会場は「大入」の看板で、ほぼ満席。
実際にミラノへ行って、
しかも好きな演目を観る、という奇跡を考えれば、
パフォーマンスに満足できれば、かなりリーズナブルなのかもしれません。
で、私は実際、かなり「得」をした気分です(笑)
国際フォーラムの、宝塚系『アイーダ』は、、、明日です(爆)
投稿: みかん星人 | 2009年9月 6日 (日) 午前 01時22分
こんばんは☆
お久しぶりです。
世界のミラノスカラ座オペラを見に行かれたのですね。
しかも驚き(゜▽゜)の、お座席代!
フランコ・ゼフィレッリの演出は、
如何なものでしたでしょうか
私も1度はオペラの
《アイーダ》を、見てみたいものです。。。
国際フォーラムの方の《The Musical AIDA》は、ご覧になられましたか?
東京は、色々盛りだくさんで、羨ましいです。
投稿: あむね | 2009年9月 5日 (土) 午前 12時47分