『サンデー・イン・ザ・パーク・ウイズ・ジョージ』 @ パルコ劇場
2008年トニー賞で「ミュージカル・リバイバル作品賞」をはじめ、
いろんな賞にノミネートされたものの、ことごとく?『南太平洋』に敗れた作品、
『サンデー・イン・ザ・パーク・ウイズ・ジョージ』を観てきた。
演出は宮本亜門氏で、もしかしたら、彼の演出作品は初めてかもしれない。
主演は石丸幹二くん、、、こちらも、退団後は、初めて舞台で拝見。
そして、吾が愛しの戸田恵子さまがヒロイン。
本日初日だったけれど、二人とも、さすがによく役を掴んでいたと思う。
というか、先に書いてしまうと、
石丸くんが演じた役「ジョルジュ スーラ」は、
他に役者が思い当たらないほど、石丸くんに似合っていると思った。
言ってみれば『ブラックコメディ』のブリンズリーみたいな感じで、
スーラの特異さと、そこから来る高貴さと、孤独感を上手く表していた。
「パルコ劇場」では、一昨年『コンフィダント』という演目でもスーラが出ていて、
それは中井貴一くんが演じていたんだけれど、
要するに、スーラという人物のニュアンスは、なんとなく、そんな感じ(笑)
ついでに「パルコ劇場」について。。。
ここは500席無い小さな劇場で、二階席が無い。
だから、劇団四季の「自由劇場」より小さいのだけれど、
意外と横幅があるし、なんとなく舞台まで遠く感じるのが不思議。
ま、それはともかく、
この『サンデー・イン・ザ・パーク・ウイズ・ジョージ』という演目は、
舞台の演出がもの凄く変っていて、、、というか、それが魅力なんだけど、
それを充分に堪能できるのは、たぶん、センター席に限られると思う。
今日座った席は、サイド席で通路から3つ入った比較的後方で、
微妙だけれど、もう少し中央で観たいと、何度か、感じた。
冒頭に「ミュージカル・リバイバル作品賞」と書いたけれど、
初演は1984年の事。。。その時に、
「ミュージカル装置デザイン賞」と「ミュージカル照明デザイン賞」を取っている。
で、実際、その装置と照明は、とっても素晴らしい。
そして、もちろん、ソンドハイムの作品だけに、音楽は、とても難しかった。
映画にもなった、ソンドハイムの作品『スウィニー・トッド』は、
映画という技法のお陰もあって、メロディーと情緒の関係が掴み易かった。
が、初見の舞台となると、これはなかなか難しい。
メロディーが伝えようとする気持ちが解った頃には、歌詞は過ぎ去っているし(笑)
歌詞を追っていると、見事に心理とシンクロしているそのメロディーを聞き逃す。
つまり、音楽を聞いてないことに、あとから気が付く。。。
まあ、良くできたミュージカルというのは「そういうもの」なのだろうが、
こうなると、ほとんど、抑揚のハッキリしたストレート・プレイを観てるのと同じだ。
もっとも、この『サンデー・イン・ザ・パーク・ウイズ・ジョージ』の物語は、
良く考えてみると、ありふれた、実に簡単で、平凡なものだと思う。
ただ、その背景に、当時・・・19世紀の終わりごろ・・・の世相、
つまり「科学」が進歩して高い鉄塔が建築され工業が発展したり、
ゆえに「労働者」が政治に対して強い力を持つようになっていたり、
「南北戦争」という内乱から開放されたアメリカの台頭があったり、、、
といった世相が上手く織り込まれているのが特色に過ぎず、
こういった部分を排除してしまえば、
物語は『コーラスライン』のザックとキャシーのそれと、変らない(笑)
この『サンデー・イン・ザ・パーク・ウイズ・ジョージ』の最大の見所は、
だから、舞台そのものだ。
物語を追うのは諦めて、不思議なメロディーと、
それよりも数倍不思議で美しい舞台に心を奪われていた。
更に、二幕は、舞台の上で交されているセリフはそこそこにして、
「そこで、なにが、起きているのか」に注目して観ていた。
公演のプログラムに、宮本・石丸・戸田の鼎談が載っているのだけれど、
宮本氏が、「二幕のための一幕だ」と言っていて、本当にその通りだと思う。
この舞台の基点となった、
『グランド・ジャット島の日曜の午後』に関する解説などを頭に入れて、
メロディーと舞台の上に描かれるものを観ていれば、
きっと、この舞台の存在意義を納得できるだろう。
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