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2009年7月14日 (火)

『春のめざめ』 @ 7月9日夜・2階B席

自由劇場での千穐楽が発表されても、
「自由劇場でのロングランは、どんな演目でも、劇場がもったいない」
と思っていたので、そろそろ一旦終らせても良いんじゃないか?と、納得。

また、やがて100回も公演も続けているのに、
メルヒオールをずーっと柿澤くんが演じているのも、そろそろと思う理由。
アンサンブルでも、未だに交替が無い役もあるんだけど、
ともかく、主役候補が数人いるのに、一度も替えないという、
「いつもの劇団四季らしい起用方法」
は、56周年だかを迎えても、少しも変らない(笑)

その100回公演辺りでもう一度観ようかと思っていけれど、
魅力的なイベントが発生したので、久しぶりに自由劇場へ。

初めて拝見したのは、期待の高い谷口あかりさんのベンドラと、
前の観劇ではアンサンブルだった玉石まどかさんのアンナに
勝間千明さんのマルタ。
そして、大人の二人、、、都築さんと、田代さん。

この、初めてのキャストでは、マルタに入った勝間さんの声のお陰で、
女声コーラスに厚みが出た事が印象的だったが、
なんと言っても、田代さんの「大人の男性」が凄い!
今週は、もう、南十字星でも見に行かれたのか、消えてしまったけれど、
「大人の男性」の芝居だけで、あんなにも舞台が変るのは、驚きだった。

しかし、もっと驚くことが、この日の舞台にあった。。。

前回、ステージシートで観た時、
その強烈な体験もあってか、厂原モリッツに圧倒されて、
「やっぱり、モリッツって、こういうイメージだろう」と思った。

で、今回のモリッツは、ちょっと情け無さ過ぎる感のある三雲モリッツ。

この、三雲肇くんのモリッツに、完膚なきまでにやられた!

みかん星人は、芝居を観ながら、時々泣いてしまうヤワな野郎なのだけれど、
基本的には「物語」に泣かされる。
それこそ『アイーダ』の物語や、JCSSの「最後の晩餐」辺りの物語では、
どなたが何を演じていても、下手ではない限り、泣かせていただく(笑)
逆に、どなたかの、何かの役での演技に痺れるという事は珍しくて、
いまはもう辞めてしまわれたこの人の『メモリー』と、
1幕の最後に真剣に旗を振っていたプルベールと(笑)、、、ぐらいかも。

そして、今回の三雲君は、まさに「演技」で、私を泣かせてくれた。

初めのうちは、初日に観た彼と変る事も無く、淡々と過ぎて行ったけど、
授業が終って、メルヒオールとの会話が進むに連れて、
「え。。。このモリッツは、初日のとも、厂原くんのとも、全く違う」
と感じ始めて、目が離せなくなっていった。
特に、メルヒオールの部屋でのやり取りは、
まさに「15歳の男の子」であり、懐かしくもあり、気恥ずかしくもあり、
とても自然で、けれどちゃんと「翌日のモリッツ」を予感させる芝居だ。
更に『何も残らない』でのパフォーマンス!
一つ一つを書き出していたらキリが無いけれど、
クララの手紙、仲間達のコーラスー(オブリガード)、そして閉ざされてゆく未来、
そういった多くの要素に的確に反応し、
「何も残らない」という言葉に恐ろしいリアリティーを感じた。

厂原くんのモリッツは、
自分の中にある「モヤモヤ」の発散場所を探す感じで、
下手に手助けしたら、巻添を喰らいそうな危うさがあった。
で、私は、それがモリッツだと、感じたりもした。

が、三雲君が、いま見せてくれるモリッツは、
自分の中にある「モヤモヤ」に支配されて、追い込まれてゆく。
初日に観たモリッツは、
その中で、自分を(見)失う予感に怯えていた気がしたけれど、
今のモリッツには「見失う」という感覚ではなく、
その「自分自身」に、「ボク」という自我に戸惑っている気配を感じる。
 (それは、30年前のみかん星人にも思い当たる事だ・・・)
だから、観ていて、手を伸ばして助けてあげたい気持ちになるし、
この感覚こそ、『春のめざめ』が観客に伝えたかった感覚なのだとも思う。
 (コロンバイン高校の事件に触発された、という辺りからの印象として)

三雲君が凄いのは、その演技のニュアンスが、
この日私が座っていた2階の最後部にまでビンビン伝わってきた事にもある。
自由劇場の2階は、たぶん1階の後半部分よりも臨場感のある席で、
音に関しては「自由劇場なら2階で聞くべき!」という程の良さがある。
それにしても、
まるでステージシートに居るかのように、モリッツの情感が伝わってきた。
本当に、完全に、やられた。

最後に、ずーっと主役の柿澤くんについて。
著しい進歩というものではないけれど、セリフが自分の言葉になっていた。
ともかく、あの妙なカクカクした発声は影をひそめていて、
たとえば「なに考えてんだよ!」という、
いかにも15歳が叫びそうなセリフが、いかにも15歳が言っているように聞こえる。

どんなにかセリフが大切で、伝えなければならないものなのかは解らないが、
「言葉・単語」が聞き取れなくなって、「伝えたい気持」が重要なセリフもある。
さっきの「なに考えてんだよ!」などは、そういう言葉だろう。
その響きの中に、観客はキャストの幼さや、焦りや、苦悩を感じるわけで、
言った単語そのものに情感を感じるわけではないのだから。

そういった意味で、柿澤くんのメルヒオールは、ようやく熟し始めて、
だからこそ、クライマックスでの彼に、ようやく同情できたりもする。

と、いうわけで、、、
制作発表の記事に、我ながらいみじくも書いた、
「彗星のごとく若手俳優が登場し、舞台が日々過熱している」
その熱い風が、自由劇場に吹いている気配がしてきた。
今度の金曜日もイベントだし、楽しみなみかん星人であります。

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コメント

PRYCE16さん、コメントありがとうございます。
また、先日は、唐突に話し掛けまして、失礼しました。

いやほんと、、、顔出しブログの凄さですね(笑)
(ここも、最近、似たような雰囲気ですけれど。。。。)

気の利いたお話よりも、
お互いの「観たい願望」の暴露が面白かったですよー。

また、劇場で、、、キャスト次第ですけれどネ(爆)、、、お会いしましょう。

投稿: みかん星人 | 2009年7月19日 (日) 午前 12時41分

遅ればせながら、お疲れ様でした。
当日は劇場前で声を掛けていただきまして、ありがとうございました。突然だったものでちょっと舞い上がってしまい、気の利いた話も出来ず、すみませんでした。
また劇場でお会いした際はよろしくお願いします。


投稿: PRYCE16 | 2009年7月18日 (土) 午前 12時30分

yanaさん、コメントありがとう。

何度も観に行ける、、、その幸運に感謝ですね。

と、いうわけで、、、明日も行って来ます(笑)
今度は、質問を書かないでおこうかな

投稿: みかん星人 | 2009年7月17日 (金) 午前 12時16分

いつも記事楽しみに拝読しています。

役者さんたちが1人かわるだけで舞台の空気ががらりと変わったり、時間を経てその人の変化が見えるようになるのは、何度も観に行く醍醐味ですね。

そうか…三雲モリッツ。
私ももう一度観に行かなくては!

投稿: yana | 2009年7月16日 (木) 午前 11時04分

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受信: 2009年7月18日 (土) 午前 12時31分

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