『マッスルミュージカル TREASURE』 @ 渋谷マッスルシアター
「歌もない、セリフもない、物語もない」という宣伝がなんとも不思議な、
『マッスルミュージカル』を観に行ってきた。
2001年にトライアウトで始まったこのカンパニー、
もう随分と長い歴史があるのには驚いた。
もちろん、みかん星人は初体験(「もちろん」と書く理由はのちほど・・・)
今回のツアーは「初のロングラン」という事で、
『TREASURE』と題されたもの。
「物語もない」という割りには、ちゃんと物語が設定されていたし、
ちゃんと衣装もあったりするし、しかも「コシノジュンコ」だったりする。
確かに、本物のアスリートが、
目の前で、緊張感を伴って、パフォーマンスを成し遂げる様子には興奮する。
特に、二幕の「リボン」「トランポリン」「巨大フープ」は素晴らしい。
名物?の「ボディー・スラップ」も、特設の建物を(わざと?)揺らすような迫力で、
けっして「観ても時間の無駄」というものでは無い。
(ただし、チケット代は意外と高い)
それと、みかん星人が子どもの頃には、
たとえば『万国びっくりショー』みたいな番組があって、
その中で「炎のジャグリング」みたいな曲芸をみて育ったので、
大人になったいま、それを目の当たりにする面白さもある。
(だから、鑑賞しながらのビールが、きっと、たぶん、旨いだろうなぁ、と思ったり)
ともかく、興味があるなら、行ってみて損は無い、かもしれない。
【モンスターボックス】を跳ぶマンカスくん、、、中身に期待するタガーくん、の図
ただし、やはり、もの足りない。
「やはり」とか、さっきも「もちろん観てない」と書いた原因は、
この舞台に「ミュージカル」という言葉がついている点にあると思う。
もちろん、
「『ミュージカル』は、こうでなければならない」などと言うつもりは無い。
『プレイ・ウイズアウト・ワーズ』のように、まさにセリフ無しでも傑作舞台はあるし、
『キャッツ』だって、たいした物語があるわけでも無い
だから『マッスルミュージカル』という名前も、ダメって事は無いだろう。
ただし、損をしていると思う。
それは、私のように「ミュージカルが好き」な者にとっては、
「どうせ中途半端だろう」という先入観を持たれてしまう事。
そして、逆に「ミュージカルが苦手」という人は、たぶん、拒否反応を示す。
この舞台が「既存のミュージカルとは違う芸術」なのにも関わらず、
そういう目で観られる、その点で、損をしていると思うのだ。
ともかく、それで、「もの足りない」一番の理由は、
「本当に観て欲しいもの、観せたいもの」が明確になってない点だ。
上演時間の9割近くにわたって、うるさくて単調な音楽が流れ続ける。
舞台の背景には、たぶんLEDの高輝度な、ビジョンシステムがあって、
折角舞台の上で炎が脅威を表現していたりしているのに、
それを打ち消すような背景を煌々と描き出して台無しにしてしまう。
それこそ、本当に「肉体の音楽」を聞かせたいのなら、
せめて「ボディー・スラップ」では音楽を止めて、肉体の音に集中させてほしい。
(あと、殺陣の時に使われるような擬音もやめてほしいなぁ(笑))
舞台は、特にミュージカルは、音楽の緩急あって盛り上がるのだから。
(キャラメルボックスの芝居など、まさにそうだ)
それから、これは観終わった後につらつら思ったことだけれど、
やはり「スポーツ」なんだから、目的というか、達成感のある演出が欲しい。
唐突だが【野球規則(ルール)】の最初に「目的」が書かれているのをご存知?
その「野球の目的」は実に単純で、
「相手より多く得点して勝つこと」であると明文されている。
おそらく、狭義の「スポーツ」で勝敗を決めないものは無いだろうし、
スポーツのファンも、勝敗を抜きにしては、夢中で観戦しないだろう。
けれど、この『マッスルミュージカル』には、あまり達成感が無い。
もちろん、大きな跳び箱を飛んだり、大勢で縄跳びを成功させたり、
そういう「やった!」と感じる場面が無いわけではない。
けれど、それがエンターテインメントにはなって無いし、
「舞台」としての流れの中には存在していない。
唯一、物語とも絡んで、見事だと思ったのは、二幕のトランポリンぐらい。
(この場面にはお金を払っても良いと思った)
他にも、なぜか女性には「群舞」が多くて、
個々の個性や達成感を感じさせてくれる場面が見当たらないのも残念だった。
と、否定的な事を書いてきたけれど、
こんなに長く存続しているカンパニーでファンは多いのだろうし、
観ていると、舞台としてのカタルシスを生み出す可能性の幾つかは感じる。
中でも、クライマックスでの「水中シンクロ」は素晴らしい。
『ライオンキング』の”迷場面”に、
妙な恰好のペアが名曲に合わせて踊る場面があるのだけれど(『愛を感じて』)
『マッスルミュージカル』のこの水中シンクロ『Heart to Heart』は、
LKのその妙な(重力に縛られた)演出に完全に勝っているし、
舞台芸術に新しい可能性をもたらしてくれるのかもしれない。
それと、そんなに揃ってはいないものの、
やはりパワフルなダンスというのは、観ていて心地のいいものだ。
(それでも『ミスティックリズム』の方が圧巻だとは思うが・・・)
と、いうわけで、みかん星人はもう観る事は無いだろうけれど(笑)
「ミュージカル」ではなく「レビュー」とか「お祭り」としてなら、
なかなか愉快な舞台だと思った。
箱の割りに小さい中身に呆れる彼らであった。。。
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コメント
yanaさん、コメントありがとう。
はい、、、音楽があれば「ミュージカル」というものではありませんよね。
「音楽劇」というジャンルもありますし、、、
この『マッスルミュージカル』のもう一つの残念点は、
「詰め込みすぎ」というのもあると思うのですが・・・
その辺り、もし行かれましたら、観てきてください!
投稿: みかん星人 | 2009年4月18日 (土) 午前 10時43分
こんにちは。
以前から気にはなっていたのですが、(みかん星人さんおっしゃるとおり)ミュージカルなのかなあ?と首を傾げて、見ていなかった作品です。レポート大感謝。
舞台って難しいですね。
ことにミュージカルって、一見音楽をつければ「すごく楽しめそう」に思えるけれど、その使い方がすごく難しい、ということに、気がつかない興行も割とあるように思います。
機会があれば…観てみようかな〜と思います。
投稿: yana | 2009年4月17日 (金) 午前 10時31分