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2009年2月 4日 (水)

『ディファイアンス』

2月14日から公開される映画『ディファイアンス』をひと足早く観て来た。
 (”Defiance”とは「挑戦的態度」とか「反抗的態度」のことだそうだ)
この映画は、1941年にナチスドイツが「ベラルーシ」に侵攻したのを背景に、
ベラルーシに居たユダヤ人達をナチスの手から守った「ビエルスキ兄弟」を描いた映画。
まあ「ベラルーシのシンドラー」という宣伝文句が使われる感じですな。

上映前にトーク・イベントがあった。
登壇したのは、まさに「日本のシンドラー」(笑)杉原千畝氏のご子息、千暁さん。
お相手は、いろいろ話題の山本モナさん。
千暁さんは、千畝さんが「命のビザ」を書いていた頃には2歳だったそうで、
その当時の記憶は無いそうだけど、
その後、ルーマニア・ブカレストの大使館に着任していた頃の事は憶えているとのこと。
ある日、ソ連兵が、千畝さんの車を指して、
「これは盗まれた私の車だ」と言い掛かりをつけてきたそうだけど、
千畝さんはそれに対し毅然として「これは私の車だ」と言い通したそうだ。
横暴な軍人を相手に怯まなかった「頑固者」だったそうです(笑)
ちなみに、昨年の舞台『SEMPO』は、ご覧になってないとのこと。

さて、映画の事(笑)

冒頭、白黒の記録映画から始まり、
ユダヤ人の虐殺風景となり、それに色がついてくる。
この映画の背景は史実なのだけれど、
こうして当時の映像を引き継いで映画に入っていくと、
改めて「おそろしい事をしてきたんだなぁ、人間って」と思ったり。

『ライフ・イズ・ビューティフル』という、実はあまり好きではない映画の中で、
それでも「なるほど」と思った事のひとつが、
「ヨーロッパの各地にユダヤ人がいたんだ」という事。
その映画の場所はイタリアで、
当時イタリアとナチスは仲良しだったのでユダヤ人が受難した。
この『ディファイアンス』の舞台は東欧の小国ベラルーシ
 (エンドクレジットによれば、収録は、隣国のリトアニアだそうだ)
ここにも、多くのユダヤ人が住み、或いはゲットーに囲われていた。

この映画で面白いのは、
ユダヤ人は「英語」を話すのだけれど、
ここに侵略して来たナチスドイツは「ドイツ語」で、
ここをドイツの侵略から開放(奪取)しようとするソ連軍は「ロシア語」を話す。
だから、しばしば英語の字幕が登場する。
あ、日本語字幕は、御大・戸田女史です。
実はこの英語字幕が、なかなか面白くて簡潔。
戸田字幕の方が情報多いけど、
所々で、この英語字幕との乖離を見せて、妙な翻訳の正体を露呈していた(爆)

主演は、最新の007ですっかりメジャーのダニエルくん。
『ミュンヘン』の頃に比べて、この映画では、大変に「情」を乗せた演技が素敵。
弟の「リーヴ シュレイバー」は『ニューヨークの恋人』で注目したいかつい男。
みかん星人が好きなタイプの男優で、全編を通して素敵。
三男、四男?も登場しますが、彼らの成長もまた、この映画の魅力。

アカデミー賞の音楽賞にノミネートされているそうだけど、
作曲は「ジェイムズ ニュートン ハワード」という人。
あまり印象に残らないが、時々響くヴァイオリンの音が素敵。
やはり、ユダヤ人というと、フィドラーのイメージがあるねぇ。

それにしても、これが「史実」というのは重い。
ゲットーで「じっ」としていた人々は殺されてしまったのだけど、
この映画に描かれた「苦悩・苦難」を抜けた人々約1200名は生き延びた。
中で「生き延びることで復讐する」という台詞があったけれど、
この復讐は、おそろしい困難と苦労に満ちていたんだろうなぁ。

でも、そんな重い映画の中でも、ちゃんと「恋愛」は描かれていて、
また、人の成長や、苦境の中でも交わすユーモアの大切さを感じたりする。
ちょっと長い(実質130分)映画だけれど、観る価値のある1本でした。

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コメント

おとみさん、コメントありがとう。

そう、苦境の中で成長する姿が、なんだか凄かった。

解決手段としても「武力」というのには賛同しかねますが、
それでも、それが「人間」なのだとおも思ったり。

なかなか、深いですよ、、、最近の映画としては(笑)

投稿: みかん星人 | 2009年2月14日 (土) 午後 11時18分

>☆みかん星人さま
奇跡は起こらない。奇跡は人が起こす。少年が戦士に、少女がハンターに成長するところがじわーんとなりました。語りにくいからか、語られなかったこともフェアに描いてあって重く受け止めました。ユダヤの民が生きるために戦うこと、復讐という正義、考えても理解できそうにないですが知っておかないといけないと思いました。

投稿: とみ(風知草) | 2009年2月14日 (土) 午後 08時47分

この物語が興味深いのは、ドイツ人・シンドラーや日本人・杉原とちがって、
ユダヤ人を守り導くのが同胞であるという事でしょう。

つまり「モーゼ」と同じ存在なのです。
しかしながら、「人を殺してはいけない」という戒律が守られていない。

この映画は、
「虐殺から逃げ延びたユダヤ人」を描きながらも、
「けっして『迷える仔羊』ではなく『羊の皮を被った狼』である」様子も描いています。
もちろん、極限状態の中では、民族に関係なく、人は暴挙にでるかもしれない。
まして虐げられ、絶えず闘争の中に生きる民族には、
骨身に染み付いた「闘争癖」があっても不思議でないかもしれない。

けど、ともかく惜しいのは、それはどんな民族でも同じだけれど、
受けた痛みを他者に振り向けてしまうこと。
きっと、その心に、問題があるのでしょう。

投稿: みかん星人 | 2009年2月 6日 (金) 午前 12時15分

おそろしい困難と苦労に満ちていた歴史を持つ民族が、
なぜ軍隊を持ち、ゲットーのようなガザを攻撃するのだろうか?
杉原さんたちやシンドラーの行為の結果が、
今日のイスラエルとパレスチナの状態では報われない。

投稿: 舞姿 | 2009年2月 5日 (木) 午前 05時58分

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