『マンマ・ミーア!』 by 劇団四季 @ 新名古屋ミュージカル劇場
と、言うわけで、
セーラー服を着たナナちゃんが待つ名古屋に行ってしまった。
もちろん『マンマ・ミーア!』観たさの愚行。
それでも「サムカーマイケル」が荒川くんだったからの決断だ。
そもそも、関西に行く度に無理して通った大好きなこの演目を、
名古屋で観るのはこれが最初で最後という事になってしまったのは、
ひとえに、サムを演じる役者の問題だった(爆)
くわえて、「ビルオースティン」を脇坂くん、
そして五東ドナが観られるのなら文句はまったく無い。
これで映画とのタイアップでもあって、
「映画の半券を見せたらギリシャビールサービス」
なんてのがあったら天国だ。。。
(結局『ミソス』は飲んでしまって、マンカスはへべれけだけれど)
はじめてソフィ役でみた可絵ちゃんは、とっても普通のお嬢さん。
透明感のある声と長い脚がステキなのね。
彼女は「電通海劇場杮落とし公演」の時からプログラムに名前のある人で、
ある意味で、最もソフィー役の近くにいた人なのかもしれない。
随所でそれを感じたけれど、見せ場は2幕冒頭の悪夢の場面だろう。
それまでのどのソフィーよりも、可絵ソフィーの苦悩と戸惑いは明確だった。
増本さんのターニャもはじめてで、前田さん並の迫力が強烈。
また、増本・青山・五東のトリオは声の相性が良いのか、
滑らかな五東ドナの声にさらに艶を加えていて心地よい。
相性という意味では、荒川サムと五東ドナの『S.O.S.』も高域が綺麗に絡んで、
歌の内容とは相反する清潔感があって、ちょっと四季的(笑)
前々から観たかった脇坂ビルは、いわゆる「ピエロの巧さ」で、
無骨で不器用なビルが、少々若々しく、存在していた。
さらに、最も観たかった五東ドナ。
母親的な「こわさ」とか「きびしさ」は上手い。
もちろん歌も上手い、、、んだけど、上品過ぎるきらいがある。
『Money, Money, Money』では、資金繰りに苦しんでいるようには見えない。
見た目も、早水ドナほどではないにしても、ちょっと「和風」で、
この演目を日本風にアレンジして、
例えば伊豆の初島にある和風旅館を切り盛りする女将なら素敵(笑)
和装で髪を結い上げての『Dancing Queen』を観たい。
さて、
そもそもは映画の『マンマ・ミーア!』を観たことからの観劇
比較する、というよりも、映画を踏まえての幻覚を以下に。
だから、まだ映画を観てない人は、ここまで!
舞台にも【コロス】が登場していましたね。
今まで「それ」とは気がつかなかったのですが、
『Mamma Mia』の時に壁の向こう側に現れるアンサンブルは、
あれはまさに【コロス】として意識した演出だと思った。
舞台の方が、物語が細やかに感じられた。
(映画の情報量の方が多いと思っていたので、意外)
それは「日本語」として話されているからだとは思うけれど、
例えば、サムがホテルを「自分の子どものようだ」と言う部分や、
「普通は、母親が娘の日記を盗み見るものよ」というコミカルな部分は、
残念ながら映画の中には無かったと思う。
もちろん、映画には、
野郎3人とおば様達が島へ来るまでのエピソードがあったり、
『Dancing Queen』の圧倒的な群舞があったりと、
映画らしくダイナミックなのだけれど、
物語を深くするために書き加えられた部分は少なかった。
そして、この「物語」の骨子というか、軸、あるいはテーマが、
舞台と映画では、微妙に違っているのだと思う。
舞台のソフィーが求めるものは、あくまでも自分のアイデンティティで、
父親の存在を機転にして、「私は誰?」という思いと格闘する。
だから、二幕冒頭での『Under Attack』による悪夢が用意されている。
が、この場面は映画には無くて、その代り、ビルの船が登場している。
この船で過ごす時間で、ソフィーは「父親」を疑似体験するばかりでなく、
自身の中に眠っている「才能」にも気がついてゆく。
『S.O.S.』でソフィーとサムが交わす会話も、お陰でかなり違っていた。
これは、いかにもハリウッド的な展開だなぁ、と思ったり。
映画の、その船の場面のところで『Our Last Summer』が使われる。
これは舞台ではドナとハリーの思い出をたどり、ドナに微笑みが戻る部分だけれど、
映画は、この曲を背景にして、ハリーの”Spontaneous:自発的な衝動”が語られる。
これは映画の物語においてはとても重要な場面となるのだけれど、
舞台でのこの『Our Last Summer』も、なかなか魅力ある場面だ。
みかん星人は、この舞台の中でも、このシークエンスがかなり好き。
「まるで映画みたいだなぁ」と思って観ていたものだ。
そして、楽曲における最も大きな違いは『Thank You For The Music』だろう。
映画では、なんとエンドクレジットに使われて、それはそれで感動的だけど、
やはりこの曲が舞台で登場する場面が無いのは実に惜しい。
この曲が前半で歌われる事によって、父親候補3人が「音楽」で結ばれてゆく。
このお陰で、その後、野郎達が歌を唄っても違和感が生じない。
特に、サムがこの地に残って、過去と向き合おうとする状況が明示されるのも好い。
逆に、映画の中での『The Winner Takes It All』は、圧倒的な力を持っていた。
正直、この部分だって舞台の方も健闘していると思っていたのだけれど、
映画でのメリルストリープのパフォーマンスは、おそらく保坂ドナと比べても、圧倒的。
歌の上手下手ではなく、体全体を使って、そしてあの景色の中で唄う映像に、
あの曲に込められている総てを見事に昇華していると思った。
ただし、映画のそういった「自由度」が、
舞台に対していつも優位かというと、決してそうではない。
それを強く感じるのは、一幕のクライマックスの部分だ。
『Gimme! Gimme! Gimme!』から『Voulez-Vous』にかけての部分で、
映画では、カットを重ねて、次第に緊張感を高める事に成功しているけれど、
舞台の上で総てが連続して表現されるダイナミズムには到底敵わない。
アンサンブル達が見事なパフォーマンスを見せる中で、
ソフィーと、サム、ハリー、そしてビルが順番に対峙するその動きの総てが、
「まさに、いま、目の前で役者が紡ぎだしている」というスリル!
映画のフレームの外にある総てを、舞台では、観客が選んで注視できる快感!
やがて、舞台に全員26人が登場して円を描き動くその躍動感!
映画が、どれほどの人員をつぎ込んで製作しても、
やはり舞台の上の現実のパフォーマンスには及ばないものなのだ。
(もちろん、劇団の質にもよるんだろうけれど・・・)
映画でも「?」と感じたサムのプロポーズ場面だが、今日の舞台では「!」だった。
それはもう、ひとえに荒川サムの資質によるのだと思う。
ここが綺麗にまとまってこそ、ソフィーとスカイも心置きなく旅立てるというもの。
いま、名古屋の劇場で演じられている『マンマ・ミーア!』は、
サム役が荒川務くんである限りは、みかん星人は大いにお薦めいたします。
なにしろ、ミュージカル映画を観て、
直ぐにそれ以上に素晴らしい舞台を観られる機会なんて、そうそう無いものです。
(『ドリーム・ガールズ』や『ヘアスプレー』は、舞台が観たくて、じたばたしたっけ)
しかも、理解できない事に(笑)
こんなタイミングなのに、この『マンマ・ミーア!』は、あと28ステージしか残ってない。
千載一遇のチャンスを逃す手は無いですぞ!
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コメント
るいさん、コメントありがとう。
2時間ですかぁ。。。近いですねぇ。
行くべきです・・・なんとしても(笑)
八重沢ターニャの魅力も加わりましたしね
投稿: みかん星人 | 2009年2月 3日 (火) 午後 06時36分
みかん星人さん、、、ここから2時間で名古屋に行けるんです。。。
『行け』ってことですか?(笑)
映画を見た今なら、舞台を200%楽しめそうです
投稿: るい | 2009年2月 2日 (月) 午後 09時41分