『社会保険労務士開業法』 by 久保貴美
- 久保貴美
- 同文館出版
- 1470円
『本が好き!』プロジェクトで、久しぶりにハウツー本を手にしてみた。
この『社会保険労務士開業法』は、
「どうやったら『社会保険労務士』になれるか?」という本ではなくて、
「どうやったら『勝ち組社会保険労務士』になれるか?」に関する本で、
ターゲットは2つ。。。
「社会保険労務士の資格を取って実務に乗り出した人」と、
「何か資格を取って、それでバリバリ仕事をしたいと思っている人」だろう。
そもそも「士業」の仕事の内容をよく知っている人は少ないのではないだろうか?
弁護士や行政書士・司法書士、それと税理士ぐらいは、
「なんとなく知っている」という人がいるだろうけれど、
この「社会保険労務士」となると、企業の人事関係にでも所属していない限り、
その仕事の内容を知っている人は少ないと思う。
逆にいえば、これらの「士業」の多くが「ブラックボックス」であるという事。
つまり、問題や事案、或いは帳簿をその「先生」に渡してお金を払えば、
判決や、登録、税金といった問題が解決されてしまうという存在。
そしてまた、そういった「士業」の人々も、
「私がやっている事」をアッピールしたり説明したりしていないという事、かもしれない。
この本は、そういう意味ではなかなか画期的で、
「社会保険労務士」がどんな仕事をして、あるいはすべきなのかを解説している。
例えば【就業規則】をご存知の人は多いと思うけれど、
この「会社の中の法律」を形にして、役所に登録して、時に見直す仕事が、
社会保険労務士にとって大変に重要な仕事である事が分かる。
実は、私も最近この【就業規則】の作成で四苦八苦しているのだけれど(笑)
社会保険労務士に頼んだ場合の報酬をこの本で知って愕然とした。
そんなに高額の報酬を得られるほどの仕事なら、苦労するのも道理だと
特に興味深く読んだのは、
「社会保険労務士も、積極的に仕事を創り出しましょう」という意識。
私の少なくない経験からすると、「士業」というのは「待ち」の仕事だった。
さっきも書いたように「ブラックボックス」的な部分があるので、
誰かがそれを必要として、仕事を入れてくれればすばやく反応はするものの、
自分の方から、
「こういう事にお金を払って、得しませんか?楽しませんか?」
と、積極的な営業はしないもの(できないもの)だと思っていた。
ところが、この本の著者は、かなり積極的に仕事を開拓している。
もちろん、それは「相手にとって必要だから」という事が根幹にあり、
最近うるさく言われる「法令順守(コンプライアンス)」の問題だったりする。
つまり、相手にとって有益である事を伝えて、仕事を得るという姿勢なのだ。
もちろん、これは著者に限った、珍しい事ではなく、
多くの「士業」で行われ始めていること。
おかげで士業間の競争が激化していて、顧客の争奪が起きてもいる。
要するに、「勉強している先生」が強いし、存在意義がある、という時代になている。
どんな業種でも、漫然としていては生き残れないという事だ。
実際、士業という「自由業」は、自分を強く律する事のできない者には無理な事。
そういう意味で、この本、
例えば「脱サラして士業で成功」を考えている人にとっては、
ここに書かれている事を「楽しそうだ」と思えないのなら、
転職は不可能だと判断する材料にもなるかもしれない。
似たような立場にいる私から見ても、
まあ近すぎて客観的に読めない部分もあるのだが(笑)
なかなかよく書かれている本だと思う。
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