『ハロー・ドーリー!』
「ミュージカル映画」というジャンルは、
基本的に映画に音がついた(トーキー映画)時から始まったわけで、
そのトーキー映画の第一作『ジャズ・シンガー』からして音楽がテーマの映画だった。
『ジャズ・シンガー』は1927年の映画なのだけれど、
直後の大恐慌のお陰で、多くのエンターテイナー達がハリウッドに集まり、
「ミュージカル映画」が多く作られるようになったらしい。
中でも、「フレッド アステア」と「ジンジャー ロジャース」のコンビで、
【RKO】という映画会社が作った「ジンジャー&フレッド」の映画は大評判。
当時の映画技術を集約したような「ミュージカル映画」は、ジャンルとして確立し、
1940年代からは、ライオンが吼えるオープニングで知られる【MGM】社のものとなり、
やがて「ミュージカル映画といえばMGM」という時代になる。
1951年にオスカーを手にした映画『巴里のアメリカ人』が、
MGMミュージカル映画の頂点となるが、
しかし、次第にそれは【20世紀FOX】社の得意分野となる。
『オクラホマ('55)』、『回転木馬('56)』、『王様と私('56)』、『南太平洋('58)』、
そして『サウンド・オブ・ミュージック('65)』という名作が作り続けられた。
これらのミュージカルは、そう「ロジャース&ハマースタイン」の作品達で、
20世紀FOX社は、こうして「ミュージカル映画も得意な映画会社」となった。
さて(笑)その20世紀FOXが1969年に制作したのが『ハロー・ドーリー!』
なんと、ブロードウェイでは『マイ・フェア・レディ』の記録を抜いて、
2844回も上演され続けたヒット・ミュージカル。
詞曲を生み出したのは「ジェリー ハーマン」という人物で、
『メイム』や『ラ・カージュ・オー・フォールズ』を書いた人。
そーいえば、なんとなくどのミュージカルも似ている気がする(笑)
舞台では先に出たジンジャーロジャースも演じたという主役の「ドーリー」は、
映画では当時26歳の「バーブラ ストライサンド」が演じたことも話題となり、
『ハロー・ドーリー!』は、1969年第42回アカデミー賞で【音楽賞】を獲得。
また【美術監督賞】と【音響賞】も手にした記録に残る映画となった。
監督は、アステアと双璧のミュージカルスター「ジーン ケリー」。
俳優としてはMGMの大看板で、
特に『巴里のアメリカ人』と『雨に唄えば(主演と監督)』が代表作。
そんな彼が監督したこの作品にも、随所に「ジーンケリーらしさ」を感じる。
それは「流麗」というよりも「躍動」を感じさせる力強いもの。
この「躍動感」が典型的に現れているのが、
PIXER映画『ウォーリー』に使われている『日曜日は晴着で』の場面。
感情の高ぶりのままに唄い出し、ステップを踏み、
やがて止まらなくなって外に飛び出し、街を音楽とダンスに巻き込む。
『巴里のアメリカ人』のクライマックスを思い起こさせるこのシークエンスは、
そのまま『ウォーリー』の物語そのものへと昇華している。
が、この『ハロー・ドーリー!』、
みかん星人にとってはTDSの『アンコール!』の一曲として好きではあったけれど、
映画自体は、一度観ただけで、それほど好きになれなかった。
登場人物の心理が読めないし、結末は謎だし、
要するに「悪く言われるミュージカル映画」の典型のようにも思えていた。
いや、先日観直した時にも「やっぱり面白くないミュージカル」と思った(笑)
ただ、『ウォーリー』というすばらしい映画の中でああして使われると、
この映画の中で時々聞こえてくるそのメロディーにも心が動く。
未だ出会わぬ「運命の人」との出会いを信じて踊り出す男の子に、
ある意味「とてもミュージカルらしい快感」を感じもする。
いやはや、人の好き嫌いとは、曖昧なものだ(爆)
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