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2008年11月 1日 (土)

『ブーリン家の姉妹』

チューダー朝のハイライトを描いた映画としては、
『わが命つきるとも』とか『1000日のアン』(これは観てない)という名作があって、
特に『わが命つきるとも』は素晴らしい映画なのだけれど。
この『ブーリン家の姉妹』は、その映画のちょうど裏側。

当時の、いろいろな「背景」を知って観た方が断然面白い。
少なくとも「イギリス国教会」に関する知識ぐらいは身につけて観るべきだろう。
映画のパンフレットに書いてあって驚くのだけれど、
登場する姉妹の「姉」と「妹」は、本当は、逆なのだそうだ。
つまり「1000日のアン」は妹なんだねぇ。

衣装やセットに力を入れた映画なのは良くわかるけれど、
やはり「アップ」の多い映画で、全体を眺められる場面が少ないのが残念。
それと、ずーっと不思議に感じていたのだけれど、
この映画は「カメラ」と「その対象人物」の間に「なにか」が存在する画が多い。
例えば、王がブーリン家に到着した場面。
王がブーリン家の者達と親しく会話しているその画は、
王が引き連れてきた兵士たち越しの映像で捕えられていて、
それこそ「アン」を映している画では、アンが手前の兵士の影に隠れてしまったりする。
また、室内での撮影では、
部屋の中に設えられている「格子」とか、掛かっている「カーテン」、
そして当時の技法で作られた、向こう側が歪んで見えるガラス越しの画が多用されて、
カメラと人物が素直に相対する場面は、かなり少ない。

そのかなり少ない場面の中で、更に「陽光」を浴びている場面が印象的。
それは姉妹が楽しげに語り合って歩く場面なのだけれど、
これらの総てには、当然、演出意図があるわけで、解き明かせれば楽しいかもしれない。

こういった「紗」が掛かったような演出の中で、
役者達の演技は、どれも皆素晴らしいものだった。
特に、我が愛しのナタリーポートマンは、人を狂わせるお姫さまパワー満開で、
ヘンリー8世を見事にダークサイドに導いていたし、
ラストの演技は、あれは本当に身の毛もよだつ凄さだった。
また『ロスト・イン・トランスレーション』で魅了してくれたスカーレットヨハンソンは、
時に「本当は、すっごい事を企んでるんじゃないの?」と、
アンが彼女を見て感じた不安そのものを、見る者に理解させる演技をしている。

絢爛な衣装と豪華な背景、確かな演技で綴られた、
16世紀の、イギリスをすっかり変えてしまった物語は、
けれど「結局、男ってバカだなぁ」と思い知らせてくれる、
とても普遍的な、ちょっと小ぢんまりした映画にまとまってしまった気がした。

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» ブーリン家の姉妹 [真昼の月]
初日に観てきた! 予告で気になり、本屋で本を手に取り(購入はしてない)、その帯に 「姉妹だから憎みあう」的な事がかいてあったので、... [続きを読む]

受信: 2008年11月10日 (月) 午後 11時25分

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