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2008年10月 9日 (木)

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』

みかん星人を「ミュージカル好き」にしたのは『コーラスライン』だ。

と、もう何度も書いてきた。
どんな気分の時に観ても、この舞台は、私に涙と元気をもたらしてくれる。

2008年10月25日から公開される映画『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』は、
その『コーラスライン』のオーディションの模様を収めたドキュメンタリ映画。
しかし、この映画は、
単に「リバイバル上演される『コーラスライン』のメイキング映画」ではなく、
『コーラスライン』という舞台が、なぜあれ程に魅力的なのかを描き出すとともに、
副題のとおり、人にとっての「夢への道」がどんなものなのかを克明に描いている。

『コーラスライン』を観て感動した人には、ぜひ観ていただきたい映画だし、
「夢」を掴もうと努力する人にとっても、得るものが多い映画だと思う。
尤も、舞台を観ていない人には、そんなに面白くないかもしれない(笑)
もう、そういう観方ができないからなんともいえないけれどね。。。
ただ、14年、6000ステージにも渡りロングランされ、映画も作られて、
この映画の舞台となった2006年からのリバイバル上演が今も続いているから、
アメリカでこの舞台を観た人は相当な数になるのだろう。
いわば、ブロードウェイ・ミュージカルの『オズの魔法使』みたいなもので(笑)
「舞台を観て無い観客を想定して無い」映画だと思う。

以後、この映画に関して、かなり踏み込んでおりますので、
映画を観たい人は映画を観てからおいでください。
もし、この映画を観る前に『コーラスライン』を観ておきたいのでしたら、
この、映画のDVDを借りてきてくださいな。。。物語、ちょっと違うけど(爆)

『コーラスライン』は、マイケルベネットの、
「ダンサー達の生の声で紡いだ物語のミュージカルを作る」
というアイディアが原点の舞台。

ベネットは、1960年代からテレビで活躍していたダンサーで、
やがて振付師として活躍し、演出も手掛けるようになる。
自身のそんな経歴も踏まえて、彼は、
各地からブロードウェイに集まってくる「ダンサー志望者」に注目し、
なぜそこに集まり、なにを目指し、どんな不安をもっているのかを、
1974年に長いインタビューで導き出し、物語にした。
それを、当時売れっ子の作曲家マーヴィンハムリッシュの音楽に乗せて、
何度ものトライアウトの末に生み出したのが『コーラスライン』だ。

『コーラスライン』が好きな人は、この事は良く知っているだろう。
けれど、そのインタビューテープを聞いた事があるだろうか?
この映画『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』では、
そのテープの一部を聞く事ができる。
実際に、ベネットの声や、その雰囲気、伝えるメッセージ、
そして舞台に採用されたエピソードの幾つかを聞いていると、
『コーラスライン』で語られるエピソードが、
フィクションではなく痛々しい現実の物語だったのを思い知る。

もちろん、この映画が見つめるオーディションの現実も、
30年以上も前に紡がれた『コーラスライン』の内容が、
今もあまり変らずに存在している事を見せつけてくれる。
 (ショウビスに対する親の姿勢が当時とは違う気がするが・・・)

そもそも、当然だけれど、
この映画の構成自体が『コーラスライン』と相似になっている。
不安を抱えて集まる3000人のダンサーの全員が、
心の中で「I hope I get it.」を歌っているところから始まる。
まさに世界中から集まったダンサー、プロもアマも、が、
「I can do that.」と叫んで自分をアピールする。
でも、『コーラスライン』の冒頭同様で、
「なんでここにいるの?」と思ってしまう程度の人もいたりして笑ってしまう。

選ばれたダンサー達は、「役」を前提にして絞り込まれる。
そこで、重要になるのが、
『コーラスライン』における「役」がもつ意味の重み。
どんな芝居でも、無駄な役は無いし、全員に意味があるのだけれど、
この舞台の「役」一人一人には、
インタビューに答えたダンサー達の現実の息吹が仕込まれている。
だから、その「役」が舞台に立つ為には、
そのモデルとなった現実のダンサーを感じさせないと、遊離してしまう。

映画は、主要な役に絞ってオーディションを追う。
特に前半で重要な曲「At the Ballet.」を歌う、マギー、シーラ、ビビの役に注目。
バレエに夢中で、それが高じてブロードウェイの舞台に立った彼女達。
そのモデルとなった「ダンスに長けた人達」は、
子どもの頃から『赤い靴』を観て、母の願望を叶えたりしてきた。
けれど、モデルとなった人達は、その経歴をインタビューでは語ったけれど、
「歌った」わけじゃない。。。
この辺りからが、だから、本当に「舞台オーディション」の凄いところがみえてくる。

子どもの頃からバレエに夢中な「バレエがとっても上手い役」を、
バレエだけではなく、それを伝えるだけの歌唱力を備えているという条件で探す。
3000人も居た参加者が、あっという間に数人に絞られるのも道理だと思った。
さらに、最も重要な二つの役、ポールとキャシーに関しては、
「そんな役を演じられる人なんて、いるのだろうか?」
という不安さえ感じてしまうほどだ。
ポール役を選ぶオーディションは、まさにこの映画の白眉。
そして、最も困難な役・キャシーに関しては、大変なドラマもある。

ところで、
この映画には、初演『コーラスライン』のオリジナル・キャストが二人登場する。
一人はインタビューで登場する、オリジナルのキャシーを演じた「ドナ マケクニー」。
彼女もまた素晴らしいダンサーで、
「キャシー」のキャラクターは、その多くが彼女の経歴を反映している。
 (それが解る場面が、なんとも切ない・・・)
さらに「The music and the mirror.」でのキャシーの振り付けは、
マケクニーだからこそできるほどに高度な振り付けになっているそうだ。
確かに、劇団四季の『コーラスライン』でも、このキャシーは大変だと感じた。
数年前に高久さんがキャシーを演じたときには、
そのダンスの凄さに圧倒されたけれど、歌で残念な思いをしたものだ。

もう一人の映画に登場する初演キャストは、コニーを演じた「バイヨーク リー」。
150センチない(設定の役を演じた)彼女が、
リバイバル版『コーラスライン』の振り付けを担当している!
その振り付けの仕方が、これまたなんともコケティッシュで、パワフル。
そして、だから、この映画は、コニー役のオーディションにも注目。
その件は、映画でお楽しみくださいませ。

さて、やがて、オーディションは、ひと役に数人だけが残り、
8か月後の「最終オーディション」へと到達する。
この「8か月」というオーディションの期間もまた、ドラマチックだし、
ここにおいて描かれる事は、「夢」を捕まえるためのひとつのアドバイスになる。

舞台の『コーラスライン』と相似のこの映画のラストは、
だから、もちろん、そういうラストなのだけれど(笑)
改めて『コーラスライン』という舞台が、
オーディションという特異な状況を端的に伝えていたのを思い知るとともに、
そんな特異な状況においても、
人を魅了するのは「物語の普遍性」なのだと再確認できる。

ともかく、ミュージカル・ファンは必見の1本だ。

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コメント

ほんとに、コニー役のオーディションのところは面白かったです!
キュートといわれているところで、「私は強い女よ」と。
みせることと、みえることのギャップと、だからこその面白さに、しばし感じ入ったシーンでした。

投稿: きし | 2009年2月 4日 (水) 午前 12時21分

きしさん、コメントありがとう。

ええ、本当にそう、
バイヨークリーが、どんな人生を送ってきたのか、、、
そんな事をあの場面に感じましたね。
で、それがまたコニーという役に影のように纏わりついていることも。

ショウビズに限らず、クリエイティブな仕事をする人は、
》みせることと、みえることのギャップ
にこそ、意義があるのかもしれませんね。

投稿: みかん星人 | 2009年2月 5日 (木) 午前 12時39分

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