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2008年9月15日 (月)

『ウィキッド』 @ 海劇場

久しぶりに『ウィキッド』を観てきた。

もちろん、レベッカさまが戻られたからなのだけれど(爆)
フィエロに北澤くんが入っているのも魅力だった。
そして、チケットを取った後になって、
エルファバに今井美範さんが樋口さんとのダブルで入るという僥倖があった。

そして、とうとう拝見しましたよ、今井エルフィー
ほかにも、北澤フィエロも、飯野陛下も拝見できました

とまあ、それよりも、、、ともかく我が麗しのレベッカさま。
戻られたポジションは開幕と同じで、シズ大学の制服が最高に似合う。
スターダストダンスホールでのダンスでも、やはり素敵。目が離せません。

もうどれぐらいのステージをこなしているのか知りませんが、
沼尾さんのグリンダは、本当に完熟している。
特に「笑い」を誘う手管が実に上手い。
この日の、緊張感漂う今井エルファバをも見事にリードし、
舞台全体に、彼女の気配りが及んでいたように感じられた。

さて、、、「そんなに好きじゃない」と公言するこの演目だけど、
なぜか、語り出すと、いつも凄く長くなる記事は、まだこれから(笑)

さて、かねてより楽しみにしていた、今井美範さんのエルファバ
アイーダ』でもそうだったけれど、
この『ウィキッド』でも、彼女はアンサンブルから主役へ到達。
その経緯があるからか、主役のキャラクターへの読みが深いと感じる。
また、どちらの演目でも、
濱田さんが演じるヒロインを隣でみていた時間が多いからか、
基本的に濱田スタイルのヒロインになっているのも興味深い。

エルファバ」というキャラクターは、その見た目もあって、
一見、なんとなく解り易い性格・個性のように感じられる。
「コンプレックスの塊だろう」と解るし、「父に愛されてない」のも解る。
だからといって、エルファバが社会に対して向けている視線は、
「コンプレックス」と「愛に飢えた」ものだけではなく、実はかなり複雑だ。
 (もちろん、単純な人間なんて、この世にはいないが、
  「演劇」という場において性格・個性は、しばしば単純化されるのものだ)

濱田エルファバが見せる彼女の姿勢は、
「綺麗な緑です」
という台詞に凝縮されていたように思う。
つまり、他者からどう見られても、自己卑下だけはしないプライドがある。

樋口エルファバは、観ていないから憶測だけなのだけれど(笑)
観た人(「福井狂さん」)の詳説を聞くと、彼女の姿勢は、
「ネッサを返して」と、それに続く騒動に現れる気がする。
つまり、何かにしがみ付く、或いは他者からの干渉を拒絶する攻撃性だ。

そして、今井エルファバが、その社会に対する姿勢をみせたのは、
『魔法使いと私』という曲そのものにおいてだった。
もちろん、他のエルファバもこの曲で見事にそれぞれの心を表現してるが、
今井エルファバがこの歌によって、
ようやく「私の存在意義(アイデンティティ)」を発散させるというのは、
この舞台がミュージカルであるという点から見ても、見事と言うべきだ。
また、それまでどうにも落ち着きのない今井エルファバが、
この歌の中で「僅かな自信」と「夢」を語る事で、
エルファバがオズ陛下に抱く期待も強烈に印象付けられる。

お陰で、今までもの足りなかった「オズが正体を明かす場面」で、
それまで感じた事のない、エルファバの悔しさと怒りが伝わってきた。
続くフライング(に見える)の場面も、
彼女が自由を掴む理由も、願いも、そして怖さ、悲しみも伝わってきて、
また『自由を求めて』も素晴らしい歌唱で、思わずうるうると。。。
 (幕が降り、休憩の間も、周囲には「凄い幕切れ」の声が溢れていた<同感)

二幕の「西の悪い魔女・エルファバ」を演じる今井さんは、
なによりその容姿によってもの凄く得をしていると思う。
なにしろ、もう、完璧に、画に書いたように、魔女なのだ!
 (まるでディズニー・ヴィランがそのまま舞台にいるような感じで、
  『魔法にかけられて』のナリッサとか『眠れる森の美女』のマレフィセントだ)
この魔女ぶりを見るだけでも、今井エルファバに期待する価値がある。

確かに、この「西の悪い魔女」となってからの今井エルファバの唄は、
その圧倒的な様子程には圧倒的ではなく、
『闇に生きる』では、間違いなく濱田エルファバには及ばない。
しかし、この日のキャストが彼女をとても助けていた。

一人は『二人は永遠に』でデュエットをする北澤フィエロだ。
後でまた書くけれど、やはり聞き慣れている日本語で語られ、
そして唄われると、微妙な情感の交流が解りやすくて嬉しい。
若干、今井エルファバの声が大きく、時に北澤フィエロが圧倒されるけれど、
それでも、その様子すら、二人の感情が伝わってきて微笑ましかった。

そして、すばらしい完熟をみせている沼尾グリンダとの『あなたを忘れない』。
あまり好きではない翻訳が多い中、この訳詞の完成度の高さは認めているが、
この日の、今井エルファバを思い遣りながら唄をリードする沼尾さんのお陰で、
今まで潜んでいた様々な「思い」が顕在化していた。
 (さらに、炎が消えたタイミングが良すぎで、またしても泣かされた)

さて、その「普通の日本語を話すフィエロ」だけれど、
こうして経験してしまうと「やっぱり、これこそ」という感がある。
受取る物語の情報量が圧倒的に違ってくるのだ。
例えば、
「君って、誰にも話させないつもり?」
というフィエロの台詞へのやり取りの微妙なニュアンスが違っている。
そして、先にも書いた『二人は永遠に』での交流、この違いは圧倒的。
フィエロの最初の「きみ」という歌詞の瞬間に、それがイヤでも解ってしまう。
ただし(笑)
時々、ラウルに見えてしまうのが笑えるし、
なにより、やはり北澤くんは歌手なので、ダンスが残念。
ダンスでは、もう圧倒的に李フィエロが素敵だった。
 (あと、例のシンバ・シーンでも、北澤くんではもの足りない。。。)

最後に、飯野オズ陛下に関して。
そう、この前の『ウィキッド』鑑賞理由は「栗原オズ」だったのだけれど、
飯野オズ陛下は、これまた違うオズの魔法使で、面白い。
初演キャストの松下陛下は、祀り挙げられた自分を楽しむ呑気な陛下。
栗原オズ陛下は、とても妖しく、妙な色気があって、この舞台に似合いの陛下。
そして、飯野オズは、本当はこの異国での日々に慣れてない陛下だ。
エルファバに出会ったとき、そして見抜かれたとき、
飯野オズ陛下は、どこかで安堵して、とても素直に応じていると感じた。
だから、君の力が必要なんだ
という陛下の台詞が、とても素直で綺麗に響く。
今まで、何度見ても納得できなかった『ワンダフル』で、
初めて、「なぜエルファバが気を許したのか」を感じられた気がする。
 (それでも、あの場面には無理がある)

今週は、西グリンダに樋口エルファバが登場しているが、さて、、、どーしよう(笑)

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コメント

るいさん、コメントありがとう。

そっか、るいさんは樋口エルフィーを観ているんですね。
でも苦手ですか。。。

うーん、、、怖いもの見たさの誘惑が。。。。

投稿: みかん星人 | 2008年9月18日 (木) 午後 11時11分

みのりちゃんのエルフィーを観てたら、
“福井くんフィエロも有りだ!”
と、思いました。
が、福井くん、シンバやってないから、
実現しないだろうな・・・

まず、あっくんフィエロだね。
・・・って、今でも、あっくん
フィエロ候補者になってるのかしらん?

投稿: 舞姿 | 2008年9月17日 (水) 午後 11時16分

こんばんわ。みかん星人さん。

今井エルフィーを観られたのですねぇ。。。
いいな(笑)
なんだか幻のような今井エルフィーですが、期待大ですね!!
私は樋口エルフィーが苦手なので(爆)
みかん星人さんの感想を読んで、とっても観たくなりました

出し惜しみせずに、しっかり今井さんに経験させてあげて欲しいですっ

投稿: るい | 2008年9月17日 (水) 午後 08時17分

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