『愛と感謝の美容室 バグジー』1・2
久しぶりに『本が好き!』から献本を受けました。
選んだのは、株式会社インフィニティさまが発行している、
「『心を育てる』感動コミック」というもの。
『心を育てる』感動コミックは、
感動のストーリーを、読みやすい漫画形式でご紹介し、
思いやりと優しさを通じた
ES(従業員満足)CS(顧客満足)SS(社会満足)の
創造をサポートしたいと願っています。
と、扉に書かれています。
「漫画形式」にして伝えるというので思い描くのは、
『マンガで読む日本の歴史』みたいな感じのものですね。
さて、「画で教えられる関が原の合戦」みたいな感覚が、
どのように「ES」「CS」「SS」の創造と絡んでいるのか?に注目と云ったところ。
愛と感謝の美容室 バグジー 1―『心を育てる』感動コミック VOL.1
- 田原実
- インフィニティ
- 1050円
愛と感謝の美容室 バグジー 2―『心を育てる』感動コミック VOL.2
- 田原実
- インフィニティ
- 1050円
北九州で成功している美容室『バグジー』を舞台にして、
その経営者・久保氏の経営姿勢を描いた本。
成功している美容室とは言うものの、それは、
「社員の辞めないお店。お客様の再来店率・紹介率の高いお店」
であると言う事で、けっして「美容室」にしか通用しないものではありません。
そして、従業員も、顧客も満足しているからこそ、経営も順調であり、
社会的にも貢献できるようになる、という事を伝えようとするのが、本書です。
どういう姿勢(思い・感覚・気持)で従業員やお客様に接するのか?
という辺りの基本的な事柄は、
他の経営指南書に書かれている事と大差は無いようです。
つまり、モチベーションを意識しようとか、
「本当の商品(売り物)とは何かを考えよう」みたいなことですね。
この本は、その「モチベーションの高め方」や、
「より良い商品を生み出すための工夫」を「漫画」で描く事で、
より具体的に伝える事に、そこそこ、成功していると思います。
例えば、とある講習会で聞いたこと、
「嘘でも良いから、従業員に謝れるリーダーでありなさい」
を実践した時の様子(p.50)など、文章で表現するのは至難だと思うけれど、
経営者と従業員の間にある温度差や、経営者の思いこみ、
従業員が感じていた垣根が消える様子がなかなか上手く表現されてます。
他にも漫画にしている利点としては、
「人物の特徴」が漫画の線の微妙な描きこみで表現できる、点でしょう。
登場人物の心の微妙な変化が読み取れて良いですね。
また、「漫画的な表現」が、読後に印象深く残るのも強みです。
特にラストの一コマは、これ、なかなか良いですよ!
ただし!
本当に「漫画」という表現スタイルを生かしきっているか?と言うと、
多くの場面で不満が残ります。
読んでいて最も違和を感じるのは、「ト書」の多さです。
(漫画で「吹き出し」以外に書かれた文を何と呼ぶのか知りませんので(笑)
敢えて、戯曲などの「ト書」になぞらえさせていただきます)
冒頭、インフィニティの代表・田原氏がナビゲーターとして登場するので、
このト書は田原氏のコメントのようにも読めるのですが、
ともかく、この「台詞ではない言葉による解説」が多すぎますし、
時折、誰が、どの立場で語っているのかが分からなくなる事があります。
良くできた、読んで面白い漫画は、
その背景の説明すらも、登場人物の台詞となり、
その会話を読みすすむ事で物語の全体を納得できるようになっています。
(例えば、「ドラゴンボール」の説明をブルマが悟空にするように)
ところが、この『愛と感謝の美容室 バグジー』では、
漫画が、時折、まるでト書の解説に対する挿絵になってしまうのです。
先にも書きましたが、
漫画の長所は「印象的な絵でメッセージを記憶できる」ところにもあります。
(例えば『スラムダンク』の「対山王戦」の最後などは、
台詞が無いけど、その動きの総てが今も心に残り感動できますね(笑))
けれど、この漫画は「絵で説明する」ことをほとんどしないで、
「台詞ではない言葉による解説」に頼りすぎているように感じます。
そして、実際、
この本に書かれている事を一つ一つ「漫画で描く」ことをしいていたら、
2冊では終らないほどに長い物になるでしょう。
つまり、逆に言うと、エピソードが多すぎるのです。
エピソードを厳選して、伝えたい事を総て漫画で伝えると、
もっと「漫画形式」の意義が明確になるかと思います。
最後に・・・
実は、みかん星人も「経営をアシストする立場」にいるのですが、
その視線から言わせて貰えば、
この漫画で描き足りないのは「スキルの向上」という部分だと思います。
従業員の満足、顧客の満足、社会の満足は、
「モチベーション」という言葉に表わされる「心」の問題だけではなく、
最も肝心なのは、従業員の「技術力」なのです。
どんなに思い遣りがあって、モチベーションが高い人でも、
髪をカットする技術が未熟ではダメなのです(笑)
『バグジー』の経営者・久保氏は、その逆の人で、
「スキルは超一流だったけれど、モチベーションのベクトルが間違ってた」
のですが、それでも高級外車を乗り回し、毎夜遊べる生活ができたのです。
この本にも、何度か「スキル向上」の話が出ています。
けれど、「満足」をもたらす基礎には、
確固たる技術が必要である事もひとつの章で描いてほしかったですね。
なにしろ、
どんな時代になっても、身に付いたスキルだけは裏切らないのです。
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