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2008年6月29日 (日)

『ウェストサイド物語』 @ 京都劇場

急遽、いろんな時間に仕事を押し込んで(笑)時間を作って、
京都劇場の『ウェストサイド物語』を観にいってしまった。。。

もちろん、福井晶一くんがトニーを演じているから。
だけど、ここでも書いたように、
映画も含めて、私はこの物語が好きになれない。
最大の要因は主人公の片方・トニーの人格設定の曖昧さにあるし、
その設定の曖昧さを起因にして描かれる、
「若い者にありがちな悲劇」という都合の良い展開が好きになれないから。
そんなトニーに、福井くんがどう挑んでいるのか。。。

劇場に到着して、改めてガッカリしたのだけれど、
「京都劇場」の『ウェストサイド物語』は生演奏ではない。
だから、
オーバーチュアで『体育館でのダンス』が流れても楽団員の「マンボ!」が無い。
どーせ客席には空席が目立つのだから、
でっかくオケピを開けて、生演奏という価値で客を呼べは良いのになぁ。
あの躍動感溢れる音楽が録音で流れて、それに役者が合わせるのでは、
『ウェストサイド物語』の魅力の大半を捨てているようなもの。

でも、舞台の上の役者達は、とても素晴らしかった。
特に、松島リフが率いるジェット団のなんとも言えない仲間意識は、
東京の頃よりも更に心地よくなっていて、ほほえましかったなぁ。
彼らの『Cool』は、もう本当に最高。。。絶頂時の「ピラミッド」レベルだ。
それと、彼らとは相対するシャーク団のアニタ!
団こと葉さんのアニタは初めてだったけど、これがもう、実に素晴らしい。

・・・いや、その前に、、、だ。目的の福井トニーのお話。
今回も「幻覚」炸裂モードだなぁ(爆)

トニーが最初に歌う場面の、なんとも上手く抑制の効いた発声の優しいこと!
私が知る福井くんは、マンカストラップであり、ラム・タム・タガーであり、
そしてラダメスだけれど、こんなにも「思い」を秘めた歌い方は記憶に無い。
僅かに『ラダメスの手紙』に感じられるけれど、あれは「相手在っての優しさ」だ。
しかし、ここでの「思い」は、実に若々しい「わくわく」や「じれったさ」であり、
この冒頭の1曲『なにかが起こりそう』だけで、
映画のトニーや阿久津トニーとは明らかに違うポジショニングをしていると分かる。

福井トニーは、何も持たない青年として登場してきたように感じた。
もっと言うと「自分が何も持っていないことをイヤと云う程に思い知った青年」だ。
ジェット団の創始者(笑)でリーダーだったのかどうか知らないが、
そんな肩書きなど社会の中で何の意味も無い事、
むしろ、そんな「群れ」を作らなければならない程に「底辺」にいたことを、
福井トニーは思いきり思い知らされ、焦りとともに自覚もしている。
だから、今宵、空から舞い降りてくるかもしれない「なにか」に期待する。
それはジェット団という過去への逆戻りかもしれないのに、
彼にとっては、そんな事より、導いてくれる「光」を求める気持ちが強い。

福井トニーの朗々として優しさを持った声は、
その「なにか」を優しく、大切に待ち受けるように聞こえるのだけれど、
それが、マリアとの出会いへと綺麗に繋がって行くところが心地よい。
マリアとの出会いは、福井トニーにとって、まさに「奇跡」で、
出会いの瞬間から「恋」を越え、トニーにとってのマリアは「光」そのものとなり、
その名、まさに「マリア」は祈りの言葉となっているのが伝わってくる。
映画のトニーや、秋劇場で見た阿久津トニーにとってのマリアが、
「自分の空虚を満たしてくれる恋愛の相手」であったのとは異なる印象。

これは、どことなく地に足が着かない雰囲気の花田マリアが相手だからもある。
歌い出すと圧倒的なパワーを披露するこのマリアは、
けれど話すと何処か不安定で(笑)憧れの国に来て1ヶ月という風情が面白い。
そんなマリアの仲裁の願いを、まるで「戒律」のように受け止める福井トニー。
阿久津トニーが「ぼくに任せて!」と腕の見せ所のように反応するのとも違う。
だから、一幕の最後の叫び声が違って聞こえるから、芝居は面白い(笑)

ただ、こうして福井トニーに感じる、崇拝にも似たマリアへの気持ちは、
残念な事に物語の最後、トニーの最後の台詞で完全に混乱する。
そもそも私は、あのトニーの最後の台詞にこそ、
彼の人格設定の曖昧さが出ていると思っていたのだけれど、
福井トニーの内省的な芝居のお陰で、
あの最後こそが、この『ウェストサイド物語』最大の欠点だと確信できた。
あれは「信頼」を問う場面ではなく、
あれは「信義」を問う場面でなければならないのだ。

ともかく、今までの福井くんとはかなり違う歌と芝居が堪能できる。
私は、彼が歌う「恋」という音の中に、アスペクツのアレックスの可能性を感じた。
いつまでいてくれるのか分からないけれど、間違いなく必見のトニーだ。

必見という意味では、先にも書いた、団アニタがなんとも素晴らしい。
それは「一緒に決闘に参加しに行きそうな樋口アニタ」とは全く違って(笑)
彼女は、黒蘭の香水風呂に入って恋人と過ごせるアメリカが大好きで、
人と心を通わせる力を持った素敵な女性として存在している。
今回、みかん星人は『アメリカ』の場面で最も感動した。
自分でも驚くけれど、あんなに陽気な曲を聴きながら泣いてしまった(笑)
それは、アメリカで得られる「そこそこの満足」の中で、
愛情を育もうとしているアニタの様子に魅入られていたからだと思う。

そして、やっぱり思う。。。
曲やダンスは最高だけれど、大嫌いだ・・・この物語っ。

【追記】
この公演で、福井晶一くんの「くせ」というか「弱点」?を見つけてしまった(笑)
「それ」が気になりだすと、
「ああ。。。これが『不器用』と言われたり、『スーパー・サブ』となる要因かな?」
なんて思ったりもするのですが。。。
ま、彼の真面目さとも受け取れますので、よしとしますか(笑)

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コメント

>みかん星人さま
追記がとても気になるのですが(笑)
嬉しいレポをありがとうございました!
弱点って、“ラ行”でしょうか?
私にはそれしか思いつかないんですけど・・・
遅くなりましたが、遠征お疲れ様でした。

投稿: ク~ミン | 2008年7月 3日 (木) 午前 02時37分

ク~ミンさん、コメントありがとう。
幸せな日々が続いていて、なによりですね。。。
しかも、関西ですからね・・・・catface

京都劇場の、意外な見易さに、私も驚きましたし、
あの福井トニーのお陰で、物語を深く見る機会ができて、
なかなか楽しい日々でもあります。

さて、弱点。。。週末に、また特派員が行きますので、
その辺りを確認してもらおうかとも思っていますが、
「ら行」でも、歌でも、発声でもない部分です。
逆に言うと、
「どーうして阿久津くんって、あんなに圧力を感じるんだろう」
という感触の裏返しですね。。。
福井トニーは、とても「内省的」に感じた理由が、
ある意味で弱点だと感じているのです。

次回の特派員報告の中で、少し書けると思います。

投稿: みかん星人 | 2008年7月 3日 (木) 午後 02時49分

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