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2008年6月26日 (木)

『思い出を売る男』 by 劇団四季

「自由劇場」という空間を生かす、いやむしろ、あの劇場ならではの演目
もう何度も観ているけれど、こうして記事にするのは初めてか・・・
「面白い」とか「楽しい」というものではないけれど、
しばしば笑いも起きるし、背景から考えればその重苦しさも軽微なもので、
満足度の高い舞台だと思う。

戦争が終って6年目の昭和26年。
講和条約の締結があり、独立直前のこの時代の事など、もちろん知らない。
けれど、特段の解説が無くとも「その頃」が見えてくる。
あの「三部作」のような解説などが無くとも背景を感じられるし、
いやむしろ、解説が無いお陰で、この舞台は永遠の普遍性を手にしている。
 (もちろん三部作を舞台にかける意味は理解しているつもり。
  それは「演劇としての完成度」や「ミュージカルにする意味」とは別だが(笑))

何度みても、そして不思議と感動してしまうのは、G.I.の場面。
この場面こそ「ミュージカル・プレイ」の原点だと、みかん星人は思う。
音楽に導かれて、壁の向こうに幻をみるG.I.のその様子は、
舞台の上に自らの心の投影を期待して集まる我々観客そのもの、だと。

相変わらずの「オールスター」感があるキャスティングのこの舞台。
特に、日下さんは絶好調というか、もう「乞食」そのもので、
総ての瞬間、その「よたっ」とする風情も含めて、完璧だった。
そして他にやれそうな役者がいないほどに似合う芝ジョオは、
不思議な雰囲気のカーテンコールが一番素敵かもしれないなぁ。

胸板の厚い金田G.I.は、初めて見たのかな?軍服姿がご立派。
なぜか「米兵」じゃなくて「濠兵」に見える辺りが面白いんだけど、
自分の身に起きた「思い出の奇跡」がもたらした効果を見事に表現していた。
対する西ジェニィは、二人の距離を掴みそびれている感があったけど、
 (もう少し近くの人に語り掛けているので良いと思うのだが)
カーテンコールでのお姿にくらくら(爆)

とても「謎」だった野村さんによる街の女は、「あると思います」という感じ。
というか、
「実はすごいお金持ちの有閑マダムが『昼顔』のようなことをしている」
ようにも見えたりして、なかなか複雑(笑)
もうひとつの「謎」だった味方広告屋
台詞回しが下村広告屋と似ている気がするんだけれど、
こうして「真面目な人」が演じてみると、ニュアンスが違ってくるのが面白い。
いままでハッタリ屋としか思えなかったのに、奥行きを感じた。

そう、今回のキャストは「芝居の面白み」よりも、「役の奥行き」を感じさた。
もちろん、みかん星人の加齢による思い込みもあるのだろうけれど(笑)
が、
その中で、残念ながら主役にだけはその「奥行き」を感じ取れなかった。

タイトルロール(こういう演目でもそう言うのだろうか?)の男は、
なにか酷い逆境を経験し、その中で「人に必要なもの」を掴んだ男、だと思う。
そしてたぶん、作者の加藤道夫氏自身を色濃く反映しているのだろう。
 (そういう「解説」は幕前に行われる)
が、残念ながら、今回の「思い出を売る男」には、そういった過去を感じない。
子どもの力強い生命力に感嘆し湧きあがる希望、
悲痛な経験と日々の中で擦り切れてゆく女性に寄り添うようなまなざし、
経験豊富な年配者と向き合う時の憧れや畏敬、、、そういったものが、無い。

なにより残念に感じたのは、サックスの音。
管楽器の音は、吹く人によって音色がかなり変るものだけれど、
田邊くんのサックスは、とても軽い。
その音と同じ「軽さ」を、彼の芝居のどの部分にも感じてしまった。
もしかしたら「稽古不足」なのかもしれないけれど、
こういう大切な演目なのだから、それは許されないと思うなぁ。

あらためて、石丸さんがいなくなった「寂しさ」を感じる舞台でもあった。
特に、街の女を野村さんが演じるのなら、その対峙を観たかった。
今回の組み合わせだと、街の女がいつ「母です」って言い出すのかと・・・(爆)
あと・・・プログラム。表紙は良いんだけどねぇ。。。
記事が変らないのはともかくも、
掲載されているキャストが単独ばかりなのは、こりゃあ、どういうこったい?

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 先日、劇団四季の異国の丘を観に行ったばかりですが(その時の記事はこちら)、今回は同じく劇団四季の芝居、思い出を売る男を観に行ってきました。 [続きを読む]

受信: 2008年7月 6日 (日) 午後 08時19分

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