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2008年4月19日 (土)

『SEMPO』

環状7号線から甲州街道を走って、新国立劇場へ。
案内係の適切なガードが素晴らしいこの駐車場は、
1時間で500円だけれど、舞台を観ると600円のサービスが受けられる。

このなかなか便利で立派な劇場に観にいったのは、
主演の吉川晃司くんと、音楽の中島みゆき嬢が、
ともに「初ミュージカル」というのが話題の『SEMPO』という舞台。
 (相変わらず、詳細は公式ページへどうぞ)

その公式ページでもお分かりの通り、これは「杉原千畝」氏の物語。
ドラマチックな実話であり、
またキャストが大変に充実している舞台だから、面白くないハズがない。
そして、実際、とても素晴らしく、見応えのある舞台でした。
特に中島みゆき嬢の音楽!
(残念ながら)全編が彼女の音楽ではないのですが、
舞台のために作られた6曲は、どれも一聴するだけで彼女の曲と分かり、
そして耳に残る素晴らしい楽曲。

残り東京で3公演、名古屋で3公演、神戸で7公演。
面白い事に、安いチケットが残っています(笑)
つまり、コアな演劇ファンが観に行っているわけではないのかもね。。。
ともかく、お薦めの舞台です。

さて。。。それでも、手放しでは褒め難い部分もあったりしますので、
続いては、内容に踏み込んでのお話です。

一幕で主人公が一曲しか歌わないけど(『美女と野獣』がそうか?(笑))
最初それは「スパイ疑惑の演出か?」とも思ったり(笑)

吉川君の「台詞」はなかなか渋くて恰好良い!
動きのぎこちなさも、脚が動かず上半身だけでの芝居も、
「もしかしたら千畝氏ってこんな感じかなぁ、、、不器用そう
なんて思えたり、、、ともかく、みかん星人は彼のファンになりました(笑)
しかし、
彼が夫人(森奈みはるさん)と歌う場面の【演出】は寂しい、というか違和感。
夫人の支えを得て、千畝氏がビザ発給を決意する「劇的」な場面なのに、
彼は歌いながら階段を「降りて」しまう、、、曲のタイトルが『翼をあげて』なのに。
確かに、「歴史的事実」からすれば、発給を決意したのは2階で、
事務室のある1階に降りるということなのだろう。
が、この典型的な「中島みゆき調歌曲」は歌いながら上に昇らなければダメ!

ことほと左様に、この舞台の「弱点」は【演出】の弱さにある。
それはつまり、制作に関わった人々が真面目すぎるという事、
そして、杉原千畝氏を愛し過ぎている部分に原因があるように感じた。

「舞台芸術」というのは、けっして「ルポルタージュ」ではない。
歴史的な事実が、それを知った者に大きな面白さや感動を与えたとしても、
その「歴史的事実」をそのままに舞台に乗せて、
観客に「面白さ」や「感動」をもたらすかと言うと、必ずしもそうでもはない。
物語のテーマを伝えるために「舞台芸術」に必要なのは、
伝えるための【演出】と、それを生かすための適度な【うそ】だと思う。
例えば、劇団四季に『異国の丘』という舞台があるけれど、
あれなどまさに適度な【うそ】と大袈裟すぎる程の【演出】の典型の舞台だ(爆)

この『SEMPO』は、杉原千畝氏の「したこと」を尊重するあまり、
「歴史的事実」に対して真面目に向き合い過ぎていて、
舞台を感動的、まさに「劇的」にするための【うそ】を織り込めなかったのでしょう。
また舞台を面白くする【演出】も、事実と逸れる事を避けてか、足りず、
伏線をたくさん張れる要素があるにも関わらずもほとんどなくて物足りない。
例えば「武士道」という言葉や「万年筆」に関しては、
一幕でそれに少しでも触れてあれば、それだけでも泣けると思うのに。

泣けるという部分では、曲ができ過ぎだからか、曲に頼りすぎている。
二幕では、打って変わって、吉川千畝氏が素晴らしい曲を歌う。
特に『掌』は、
「掌が小さかった頃の方が、掌に掴んでいた夢は大きかった」
という内容の、実にミュージカルらしい素晴らしい楽曲なのだけれど、
この時にも曲を引き立てるべき【演出】が足りなすぎる。
 (どんな演出だったら好いか、、、なんて無粋な事は書きません(笑))

それにしても、初めて観たミュージカル舞台なのに、
台詞だけでなく、歌詞の総てを聴き取り、理解できる舞台は、珍しい!
これは、ひとえに、出演者達のレベルの高さにあると思う。
音楽も生演奏だし、簡潔で表情豊かな舞台装置も秀逸。
最後に千畝氏がスキンブルシャンクスに見えるところも泣ける(爆)

あ!レベルの高い出演者の中で、相変わらず沢木さんは独特でした(笑)
が、それよりも凄くて、実に「良い役どころ」だったのは、田村雄一くん
彼ひとり、目茶目茶難しい、ソンドハイム風なのを歌わされてましたが、
細かい芝居が実にツボで、私は彼のお陰で「舞台らしい感動」を得ました。
最後、千畝氏に協力した彼の、ユダヤ人を招くその手の動きにご注目あれ!

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コメント

ドナさん、コメントありがとう。

ぜひ、猫メイクで帰ってくださいね。。。わくわく

私も吉川くんに惚れてしまいました。。。
カーテンコールで「中日」の挨拶があったのですが、
手を振りながらも、最後にその指先だけをペコリと曲げる様子まで、
ともかく、なんだか、もう、すっごく恰好いいんだよねー。。。

戦争に関する事をミュージカルにするという部分ですが、
私も、あまり、好きではありません。
この舞台は、その中にあっての暖かい光明を描いてはいるのですが、
やはり「背景」を描くに際して音楽を使うというのには違和感があります。

記事の中で【演出】という事にも触れていますが、
この素敵な意志を持った舞台は、もっと千畝氏の人物像に迫って、
周囲を描かなくても上手く成立する気がします。

ぜひとも、何年も掛けて練り込んで、海外に持ち出せる作品にして欲しいものです。

投稿: みかん星人 | 2008年4月20日 (日) 午後 05時59分

こんにちわ~
御無沙汰しております。
いつお邪魔したか???で調べたら昨年の12月でした。

SEMPO・・・私も観にいきましたよ~
ストーリーは感動ものだけど・・・
戦争もののミュージカルは、ちょっと違和感あります。
ラップの某部分に友人は???でしたが、私はそれもありかと・・・感想ってそれぞれ違いますね~~

ただ、ただ、私、吉川晃司好きになってしまいました。
ただのおバカさんかと思っていたので・・・ファンの方ごめんなさい。。
セリフの声、見た目、歌声、凄く良かったです。
でも、ライブより、ミュージカルに出てほしいね♪なんて勝手な事言ってしまいました。

みかん星人様にミーハーなオバちゃん感想で失礼いたしました。

次回の猫屋敷は30日です。
猫メイクのサービス?があるそうなんで、いい年してやってもらおうかと思っています。
メイクしたまま帰れないですよね?
たぶん、皆見て見ぬふりだろうな~

投稿: ドナ | 2008年4月20日 (日) 午後 03時46分

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