« 『サボテンの花』 by 演劇集団キャラメルボックス | トップページ | 『百年の孤独』 by ガブリエル ガルシア‐マルケス »

2007年4月 5日 (木)

『Watch with Me ~卒業写真~』

瀬木直貴監督の最新作、
Watch with Me ~卒業写真~』を試写会で観てきました。

「Watch with Me」とは、
新約聖書の「マタイによる福音書26章41節」にある言葉で、
「私とともに目を覚まして祈りなさい」という意味なのだそうです。
近代ホスピスの創設者・「シシリー ソンダース」氏は、
この言葉にホスピスの基本精神を託し、
「死が近い人を見守る」という意味で使用したのだとのこと。。。
そう、つまり、この映画の背景は「ターミナル医療」にあるのです。

主人公の上野和馬は末期ガン。
余命半年と宣告されて、妻の由紀子と故郷に戻って余生を過すのです。
この「結末が分かっている物語」の中で、
登場する人々が、そして主人公もまた一層強く「生」を意識する。

その主人公が意識する「生」の中で、
輝き、後悔、焦りとして描かれるのが、中学時代のとある出逢いと、出来事。
この二つの時間、「いま」と「あの頃」が描かれるのですが、
最初はちょっと変化がハッキリしなくて戸惑うのですが、
「いま」は冬、「あの頃」は夏という事になっていて、
これがいろんな意味で心に響いてきます。

瀬木監督の映画は、どれも景色が素晴らしく、
この映画でも「あの頃」の海辺のシーンなどは本当に美しいと思います。
更に、主演の二人、津田寛治さんと羽田美智子さんの台詞の間が良くて、
画面全体が持っている力が大変に強烈でした。
 (その分、笑える場面が少なかったし、
  笑ってしまえる演技は、しばしば浮いていた・・・)

今年は、あまり「大人のための真面目な映画」に出会えていませんが、
 (あえて言えば、『サン・ジャックへの道』ぐらいかな)
この映画は、まさに「大人のための真摯な映画」で、素晴らしいものでした。

で、その真摯さは多分、
主役の年齢設定が、監督とほぼ同年輩というところにもあるのでしょう。
監督はみかん星人より2年若いのですが、
ファッションや、フォークギターや、ドロップハンドルといった小道具だけではなく、
当時の中学生の心理、、、
・・・たとえば「義理チョコ」なんて無かった時代の恋愛感覚みたいなものが、
とても上手くて、「うん、そうだった」と思いながら観ていましたし。
そんな同世代の主人公が末期ガンであるという事を意識すると、
まさに「Watch with Me・目を覚ましなさい」という気分になります。

もちろん、「あの頃」を描く故の面白さもあって、
その最たるものが「二眼レフ」カメラと、それで撮った写真の現像でしょう。
このカメラが、やがて主人公の人生にとって大切な存在になるのですが、
その総ての原点を、「いま」では珍しいこのカメラが象徴していました。
 (そして、キーアイテムが仕舞われている箱もまた。。。)

この『Watch with Me ~卒業写真~』は、九州で先行ロードショーの後、
6月から全国で公開されます。
全国での公開規模は、九州での人気次第かもしれませんので(笑)
九州のあなた!ぜひ映画館でこの映画を観てください。
本当に素晴らしい、エンドクレジットまで愛しい映画ですから。
もちろん、6月になったら、もう一度映画館で観たいと思っています。

余談

この映画に関して書かれた、なかなか素敵なブログを見つけましたので、
こちらもご覧ください。。。

余談その2

有名な坂本竜馬の写真を撮った、日本最初の写真家の名前は、
上野彦馬」といいます。
この映画の主人公は、「上野和馬」です(笑)

余談その3

卒業写真』は、凄い曲だなぁ。。。

|

« 『サボテンの花』 by 演劇集団キャラメルボックス | トップページ | 『百年の孤独』 by ガブリエル ガルシア‐マルケス »

コメント

映像屋とん吉さん、コメントありがとうございます。

そうですか!ようやくDVDとなるのですね。。。
バスツアーも、近くの方には是非とも参加していただきたいものです。
詳しくは、こちら。。。かな?
http://blog.livedoor.jp/kmov/archives/50781267.html

投稿: みかん星人 | 2007年10月 7日 (日) 午前 08時21分

ご鑑賞頂き有り難うございました。
いよいよDVDがメーキング映像満載で11月に発売です。さらに11月にはロケ地巡りバスツアーも行いますので、まだまだ目の離せない「卒業写真」を宜しくお願いします。

投稿: 映像屋とん吉 | 2007年10月 5日 (金) 午後 09時21分

たっちゃんの妻さん、コメント、そしてTB、ありがとうございます。

こちらの方では、ようやく「前売券」が売り出され始めて、
Tジョイの映画館では「予告編」も始まりました。
http://www.t-joy.net/
瀬木監督の作品は、たぶん、全部観ていると思いますが、
映画館で予告編を観るのも、また劇場で前売券を買うのも初めてで、
それだけで私はちょっと興奮しているところです(笑)

瀬木監督が「多くの人に観てほしい、知ってほしい」と願って作った作品が、
たっちゃんの妻さんに受け容れられたという、この事、、、
「やはり、瀬木監督は凄い!」と妙な方向で感動しています(*^^)

全国公開の日まで、一人でも多くの人にこの映画を知ってもらいましょうね。

これからもよろしくです。

投稿: みかん星人 | 2007年5月 9日 (水) 午前 12時48分

はじめまして。
この卒業写真は、私の主人が映画と同じような状況だったので、ひとごとではなく、すごい思い入れがあります!!
だから、「大人のための真摯な映画」「エンドクレジットまで愛しい映画」というフレーズだけで、とてもうれしく思います。
あと、この映画関連のサイトは、渡り歩いていますが、まだたどり着いていなかったブログを教えて貰ってありがとうございます。
本当に、この映画、ぜひぜひ、全国で大ヒットして欲しいと思います!!

投稿: たっちゃんの妻 | 2007年5月 8日 (火) 午後 07時46分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『Watch with Me ~卒業写真~』:

» ホスピスでのおしゃべり [たっちゃんの肺がん闘病記]
今日、お墓参りの帰りにホスピスに寄って来ました。入院中にお隣の病室にいらっしゃった方と3時間くらいおしゃべりしてました。そして気付いたのが、お互いに「入院中にもっとお話すればよかった」ということです。映画「卒業写真」を見て気付いた「ああ、い...... [続きを読む]

受信: 2007年5月 8日 (火) 午後 08時16分

« 『サボテンの花』 by 演劇集団キャラメルボックス | トップページ | 『百年の孤独』 by ガブリエル ガルシア‐マルケス »