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2007年4月10日 (火)

『百年の孤独』 by ガブリエル ガルシア‐マルケス

今年の1月5日に手にした本でした。
すぐさま読み始めたのですが、読み終わったのは4月10日。
奇しくも、およそ「百日の読書」となってしまいました。
それでも「苦労」という感じではなく、心地よく「彷徨」していた気分で、
いうなれば「醒めないでほしい夢」を見ていたような気分です。

実際には、身構えるほどに長い小説ではないのです。
私は吉川英治の歴史小説が大好きでしたし、
山岡荘八の『徳川家康』も読みました。
プルーストもジョイス(途中だけど)も時間を掛けて彷徨う感じが好きなのです。
で、この『百年の孤独』は、それらの超長編小説に匹敵する密度があります。
なにしろ、ほんの半ページに書かれているちょっとしたエピソードから、
きっと、とっても面白い映画が1本作れてしまうかもしれないのです(笑)
実際、
後年『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』となって、
映画や舞台の原作となる「エレンディラ」のエピソードも、
70ページの後半部分12行にサラリと書かれているのですから。

実は、みかん星人、意外なようですが、お話が下手なんです。
密かに憧れ、そして狙っているのが、
「ねえ、おぢさま、なにか面白いお話を聞かせて!」
と言われた時に、それに応えられる爺さんになることだったりします。
ところが、こうしてマルケスの「物語り」の上手さを読むにつけ、
これはなかなか難しいことだと思い知らされました。
ただ詳細に語るだけではないし、回り道をして面白くしているのでもない。
ここに描かれてる、そして興味をそそられる「物語」は、
一見「絵空事」のようにも思えるのに、
実は的確な人間観察によって裏打ちされた「納得できる物語」なのです。
「家を守る」とか「愛を受け止める」女性と、
「戦争をおっぱじめる」とか「自分の世界に浸る」男というマクロな視線から(笑)
生きているうち歌など一度も口にした事のないこの気丈な女は、
 いつも更紗のスカートのかすかな衣ずれ音を残しながら、
 明け方から夜更けまで、かたときも休まず動きまわった

と、何気ないけど、誰もが想像し、実感しうる生き生きとした描写まで、
読者が日頃意識のどこかでは気が付いている曖昧な事象を、
的確かつ具体的に繊細に織り込みつつ、
壮大な「ファンタジー・虚構」を描き出しているのです。
これは、私には無理ですねぇ。。。

で、この本は、
本当に「本を読むのが好き」という人にしか薦められないかと思います。
「活字中毒」とか「読書を通して何かを学びたい」という人にも無理です(笑)
本は、特に「文学」と呼ばれる本は、著者の描いた芸術作品であり、
それを読むという事は、つまり、芸術作品を鑑賞することなのです。
例えば、モーツアルトを「情操教育」のために聴くのを芸術鑑賞と言わないのと同等に、
この『百年の孤独』も、純粋にマルケスが描いた芸術を鑑賞する事が肝要なのです。
幻の様に現れた「町」を眺め、そこに吹く風と、漂う匂いを感じ、
人々が集い、愛し、戦い、憎み妬み、それでも求めあう切なさを感じ、
津波の様に押し寄せる「力」の怖さと、翻弄される運命を見守り、
やがて静かに、しかし強烈な求心力を以て収束する様を堪能する。。。

まさに「本が好き」な人のための芸術作品でした。

追記:読み終わったら、このサイトでしみじみしてください(*^^)


百年の孤独

  • ガブリエルガルシア=マルケス
  • 新潮社
  • 2940円

Amazonで購入
書評

【書評リンク】
雑食レビュー別館 by おおきさん
青空の下で昼寝 by 碧さん
青空の下で昼寝 by 碧さん(愉快なネタバレ)
404 Blog Not Found by dankogaiさん
Gori -ふどうさんやのおやじ- by Goriさん
mixi
フレパ

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コメント

百年の孤独・・宮崎の友達が持ってきてくれる焼酎~♪
本があったこと・・知りませんでした。飲みたくなりました。。いえ、読みたくなりました。(*'-'*)エヘヘ

投稿: taka | 2007年4月10日 (火) 午前 09時50分

takaさん、コメントありがとう。

この本の舞台は南米の「マコンド」という町なのですが、
そこに住んで、彷徨い、見守るつもりで、
のんびりと読んでみられてはいかがでしょうか。
読み終えた後の満足感は、他の本の比ではないですよ。

ところで、焼酎の『百年の孤独』ですが、
本当かどうかは知らないのですが、この小説が名前の由来だとか聞きます。
もっとも、製造している「株式会社黒木本店」のHPを読むと、
良い物を作るためには100年程の研鑽が必要なのだ、、、
というメッセージの様にも感じます。
http://www.oasci.co.jp/miyazaki/kuroki-honten/

ちなみに、私は焼酎が分かりません(笑)

投稿: みかん星人 | 2007年4月10日 (火) 午後 02時12分

TBいただきまして、ありがとうございます!
ガブリエル・ガルシア=マルケス、好きなのですが、私には表現力と理解力が圧倒的に不足しておりまして、みかん星人様をはじめとする皆様の素敵な素晴らしい書評にただただウットリとし、なるほどなるほどそういうことだったのね、フムフムと、読了後に納得することばかりでございます。
そしてまた、”まさに「本が好き」な人のための芸術作品”の記述に、なるほどなるほどと感嘆させていただきました!

投稿: Gori | 2007年4月10日 (火) 午後 04時45分

みかん星人さま、いつもリンクいただき有難うございます。

「ねえ、おぢさま、なにか面白いお話を聞かせて!」
のフレーズがツボにハマってしまい、そんな台詞を言いそうなお嬢さんを紹介したくなってしまいました。

と、言ってもお人形ですが。
http://app.blog.livedoor.jp/meea/tb.cgi/50173713
こちらのエントリで紹介している、人形作家陽月さんのサイトをご覧いただけたらと思います。
こんな女の子に、私も物語りが出来るように精進したいと思います。
あ、そういえば、
『わが悲しき~』を読んだときイメージしていた少女は、
陽月さんの少女人形なんです。
ご参考までに。

投稿: | 2007年4月10日 (火) 午後 10時08分

Goriさん、コメントありがとうございます。

マルケス程の小説家が書いたものならば、
正直なところ、満足な「書評」など誰にも書けないと思いますし、
と同時に、だからこそ誰もが、千差万別の「書評」を書ける気もします。

私も、このプロジェクトでファンになってしまいましたが、
『わが悲しき娼婦たちの思い出』の方が翻訳として優れていた気がしました。

これからも、よろしくお願いします

投稿: みかん星人 | 2007年4月11日 (水) 午後 02時37分

碧さん、コメントありがとうございます。

いやいや、、、ご紹介いただいた「陽月(ひづき)」さんの人形、凄いです。
しかも、ちょうど人形町(!)で個展を開催中との事。
興味津々です。。。http://hizuki-doll.jp/

人形にはとても興味があります。
家族が反対するので買えませんが(爆)
いつか美しい市松人形を手に入れたいと思っていますし、
実は、10年ほど前、「川本喜八郎」氏の諸葛孔明を買う寸前だった事もあります(笑)
(軽自動車1台ほどの値段と、置き場所がない事で諦めました)

大変いいものをご紹介いただきました。。。『陽月人形展』行きたいなぁ。

これからも、よろしくお願いします。

投稿: みかん星人 | 2007年4月11日 (水) 午後 02時52分

あなたの読書感想文(笑)自体が「読書を通して何かを学」んだ証拠ではないでしょうか()笑

投稿: | 2010年8月22日 (日) 午後 06時29分

あー、なるほどねー。。。そうかもねーconfident

投稿: | 2010年8月23日 (月) 午後 05時49分

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