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2007年3月25日 (日)

『花宵道中』 by 宮本あや子

女による女のためのR-18文学賞」の第5回大賞を受賞した小説。
つまりは、官能小説(死語?)なのですが、
私には、あまりエロチックには感じられませんでした。

一つには、舞台が江戸・吉原なので、絵空事に感じてしまったり、
「遊女」に関してエロスというものを感じられなかったという部分がありましょう。
 (まあ、この辺りが「女性が読む官能小説」という事なのか?)

そして、もう一点は、
この『花宵道中』という小説の構造が大変に素晴らしく、
「官能」という小さい括りを払拭してしまったからだと思います。
そう、この『花宵道中』は、なによりも先ず小説としての完成度が高いのです。

以下、本の内容に踏み込んでいます。。。。

この『花宵道中』は、表題作の他に四編の物語が収録されていて、
総て『花宵道中』のヒロイン・朝霧という遊女に少なからず関わる物語なのです。
どの物語も同じ「山田屋」という遊郭を舞台とし、
同じ人物、同じ出来事が、いろんな側面から描き出されるのです。

もちろん、こういう構造は珍しいものではないでしょう。
『エレファント』という映画も似たような構造をしていましたし、
『スター・ウォーズ』のルークの物語とアナキンの物語も、似たようなもの。
よく耳にする「スピンアウト、スピンオフ」という作品群もまた、
よりそのテーマ(物語)を深く、面白くさせる効果があって、
例えば『600万ドルの男』と『バイオニック・ジェミー』とか(笑)
それこそ『オズの魔法使い』に対する『ウィキッド』など、枚挙に遑がありません。
ただ、一冊の中篇集において、表題作を取り巻くようにして物語が綴られ、
それが、表題作が伝えたかったテーマを徐々に浮き上がらせてゆくさまは、
大変にドラマチックな読書体験となりました。

そのテーマですが、男の私が感じ取っても仕方ないとは思いますが(笑)
「恋の魔力」という事の様に思います。
ヒロインを、吉原、遊郭という社会しか知らない遊女という立場に置いて、
「一夜だけの妻になる」ことを日常にしている中に、
「特別な貴方」を感じさせてしまう仕組・仕掛を通して「恋」や「官能」を描き出す。
みかん星人が特に「上手いなぁ」と感じたのは、
貧しい村に生まれた娘が、売られてやってきた遊郭で、
初めて「米の飯」を食べる事で、遊女という位置に安住するエピソード。
それが史実か否かはともかくも、その状況設定は説得力がありました。

もちろん、その「史実」という部分との整合性には疑問はあります。
殊更に、当時の「郭言葉」というような表現を使って読者を幻惑させるのも、
今日的な価値観で「恋愛」を描くのも、どことなく疑問が残ってはしまいます。
が、設定と、きちんと統一された文体のお陰で、
とても上手な「まぼろし」が描かれていると感じます。

ともかく、いろんな意味で、とても、面白い小説でした。

最後に「官能小説」としての部分ですが。。。。少し前に、とあるブロクで、
「『恋愛映画』ってカテゴリーには意味がない」
という記事を読んで、私は大いに納得したのです。
だって、恋愛を全く描いてない映画なんて、どれほどあるのでしょうか?
『非恋愛映画』というカテゴリーに入る映画を、みかん星人は思いつかないのです。
と、脱線しましたが、
この『花宵道中』に描かれる「官能」は、
「心の在り様が、肉体にあらわれる様子」として描かれているように感じました。
女性に受け容れられる「官能小説」は、
恋愛小説の特異ないちジャンルである、という事なのかもしれません。。。

・・・ともかく勉強になりました。


花宵道中

  • 宮木あや子
  • 新潮社
  • 1470円

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書評

【書評リンク】
Ploject Black Swan by アンドーナツさん
BLOG<<FFsPaMs>> by mummykinoi1970さん
EXPLORE MONOGAMY BLOG by wtnbtさん
徒然書店 by 一条弥勒さん
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コメント

みかん星人さん、こんばんわ(^^)
実は私は、みかん星人さんの隠れファンだったので(別に隠れなくてもいいんだけど)、そんな憧れの人に書評の推薦までしていただけて舞い上がってしまいました。
本当に有難うございました。これからも宜しくお願いいたしますm(__ __)m

投稿: uririn | 2007年3月28日 (水) 午前 12時44分

uririnさん、コメントありがとうございます。

えっと。。。。えっと、、、、これからもよろしくです(^^;;


閑話休題

ここで書くのも今更ですが、
この本は「女性限定献本」にした方が好かったのかも・・・
なんて、ちょっと思ったりしてます。

もう少し考えて、プロジェクトの方で話題にしてみようかな。。。

投稿: みかん星人 | 2007年3月28日 (水) 午前 07時45分

TBありがとうございます。ご縁があったらしく、結局読むことになりました。
想像していたよりもずっとおもしろい作品でございました。えらそうな言い方になりますが、よくできているというか。
髪結いの弥吉さんにちょっと感情移入してしまいました。骨の髄まで爺好き…。

投稿: きし | 2007年11月22日 (木) 午後 09時10分

きしさん、コメントありがとう。
本来なら、私の方がコメントを残すべきなのですが、
この本に関する「おやぢ」の言葉を残されるのもお困りかと(笑)思いまして。。。


まさに「良くできている」感のある小説でした。
「官能」という看板が、むしろ、邪魔だったきがします。

弥吉さんの目線で書かれた一遍があったら、最も「官能的」だったかもしれませんね。。。
女性の髪というのは、本当に厄介です(笑)

投稿: みかん星人 | 2007年11月23日 (金) 午後 05時38分

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花宵道中著:宮木あや子出版社:新潮社定価:1470円livedoor BOOKS書誌データ / 書評を書く _uacct = UA-918914-3;urchinTracker(); ★★★★★縋ってしまうから、優しくしないで。 どこかへ行ってしまうのなら、痕を残さないで。 お願いだから、もうこれ以上好きにさせないで。 〜『十六夜時雨』より〜 生まれたときから吉原で育ち、ただ黙々と男に抱かれ、幸せも不幸せも感じないまま、生まれてから死ぬまでの道筋まで見失っ... [続きを読む]

受信: 2007年3月26日 (月) 午前 12時00分

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