『なぜかモテる親父の技術』
「詐欺と殺人は、癖になる」
どの小説だったか、テレビの「刑事コロンボ」だったか、、、
ともかく、上に書いた台詞を聞いた事があります。
「詐欺」も「殺人」も、要するに、
「自分の都合で世の中を曲げる」という気持ち、欲望の表れであって、
過剰な自尊心と身勝手な解釈で、世の中を独断・曲解する姿勢が窺えますね。
この本を読みながら、この言葉を思い出していました。
著者は、『サンデー毎日』や『週刊金曜日』の編集長を務めていたそうです。
そんな著者がこの本の冒頭に書いているのは、
その「メディア」が流布するインチキ常識に関してです。
具体的に、雑誌『LEON』を取り上げて「詐欺師」呼ばわり(p.23)します。
ところが、なんと著者自らも、
その「メディアのインチキ」に加担してたと告白までします。
自ら真っ赤なウソと告白する内容の本を出版までしていた(p.15)そうです。
さて、こうして、
「実は、むかし、悪い事をやっていたんだよねぇ。。。」
と、まるで暴走族あがりの様な告白を聞かされたとして、
それに続く言葉を信じるためには、どんな条件が必要ですか?
もしも、こんな告白に続いて聞かされる言葉が、
「本当の事はこうだと決まっているんです!間違いありません!!」
という強烈な思い込みによる独断に満ちていたなら、
その人の言葉なんて、信じられない、とは思いませんか?
この本の著者・北村肇氏は、何を狙っているのか知りませんが、
最初に、自らの過去の悪行(笑)を書いておきながら、
「そうしなければ売れなかったし、騙される方も悪い」
と、自分の過去を正当化するところからこの本を続けていきます。
そして、そんな自分の知識、見識、経験、判断、推測を正しいと強調し、
事あるごとに「間違いありません」と断定する。
いったい、この本は、なにをテーマに書いてあるのだろう?と、
何度かタイトルを見直してしまうほどに、自己中心的で説教臭い。
書いている人が「モテる親父」とは程遠いものに思えます。
実際、この本には「モテる技術」はほとんど書かれていないと思います。
書かれているのは「心構え」とでも言うべきものばかり。
唯一、それらしい「技術」として出て来るのが、
「モテオヤジの共通項は”聞き上手”なのです」という事だけ。
ま、、、実際、これは難しいことで、言われても簡単にはできません(笑)
で、随分と批判してしまっているこの本ですが、
実は、最後の最後に、とても重要な事を書いてくれています。
それは、私がこの本を読み始めた時から考えていた事なのですが、
「モテるとは、どういう事なのか?」という問題です。
その答えを、著者は、
「素の自分を受け容れてほしいという事」としています。
いかにも自己中心的な著者らしい回答ですが、間違ってはいませんね(*^^)
更に続けて、
「受け容れてもらうために必要なのは、相手を受け容れることです」(p.193)
とまで書いています。
えっと、、、たぶん、これこそが「技術」だと思うのですが(笑)
なんとこれは最後のページに書かれている事なのです。。。。
(この後に「エピローグ」はありますけれどね)
ここで、冒頭に書いた暴言を思い出していただきましょう。
「詐欺と殺人は癖になる」
これ、暴言だとは思いますが、こうしてこの本を読んでみると、
所詮、人の弱みにつけ込んで(著者も自認している)詐欺的な商売をした人は、
その過去を告白しているこの本においても、
人の心を弄ぶ様なセンセーショナルな書き方しか出来ないのだな、、、
と実感してしまうわけです。
なぜ、本の最初に、
「モテると言うのは、どういう事なのか?」
という事に真剣に向かい合おうとしないのでしょうか?
著者本人も、
最後になって「モテるとは、どういう事なのか?」に言及する事を、
「最後に来てこんな事を書くのはルール違反かもしれません」(p.188)
と、卑怯である事を認めているのですから、始末が悪いです。
もしも、最初に、
「モテると言うのは、どういう事なのか?」という命題から始めて、
「それは自分を受け容れてもらうことであり、
そのためには相手を受け容れなければならない」と続け、
「相手を受け容れるために必要な信頼はどうやって築くのか?」
「受け容れてもらう自分とはどんな存在なのか」
という部分を語る中で、
「”親父”である事の強み」を語っていたなら、
この本は、とても面白くなっていたと思うのですが。。。。
最後に、もうひとつ苦言を書いておきます。
この本は、新書などというスタイルの【書籍】にすべきものではなく、
懺悔の意味も込めて、どこかの雑誌、
出来れば『LEON』か『UOMO』にて連載掲載して欲しいですね。
著者は、この二誌を目の敵にして辛辣に批判していますので、
堂々と挑戦してみてはいかがでしょうか?
実際、新書となっているこの本をちゃんと読む親父達は、
雑誌に書かれている記事に踊らされたりしていませんから、
著者のセンセーショナルな書き方には踊らさたりはしませんし、
むしろ、
その浅薄な著述姿勢に苛立つとすら思います、間違いありません(笑)
- 北村肇
- KKベストセラーズ
- 720円
【書評リンク】
つぶ庵 by つぶ庵さん
本が好き!プロジェクトに参加してます。 by honsumiさん
fjkktkys blog by fjkktkysさん
mixi
フレパ
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
dada2さん、コメントありがとう。
ぜってーモテねーっす、、、間違いありません(笑)
そも「モテたい」って思った時点で、基本的にアウトですわね。
いや、そもそも、この本、
「読んだことが恥しい」かもしれない。
そもそも本にカバーをしないで読むのですが、
献本は特に宣伝も兼ねてカバー無しで読みますが、
この本はとりわけ恥しかったなぁ(^o^)
『江戸の閨房術』以上でした。。。
投稿: みかん星人 | 2007年2月14日 (水) 午前 09時52分
こんばんは。
みかん星人さんとつぶ庵さんのコメントを読む限り、
この本を真に受けてもてようと思っても、ぜってーーーもてねえと思いますデス。
投稿: dada2 | 2007年2月12日 (月) 午後 11時37分
つぶ庵さん、コメントありがとうございます。
題名のこと、とても鋭い指摘ですね!
そう、この本だって、最後に言いたいのは、
「親父だからモテるのではなく、
自分らしく人と接していれば受け容れてくれるんだよ」
というメッセージなのですから。。。
逆に言えば、
いかに著者が自分を信じておらず、
センセーショナルに書かないとモテないと思っているか、が表れてますね。
ところで、TBを仕掛けたのですが、上手く行きません。
ゆるゆると、折りあるごとに挑戦してみます。
これからも、同年輩のよしみもありますので、よろしくです!
投稿: みかん星人 | 2007年2月12日 (月) 午後 07時54分
みかん星人さん、こんにちは。
拙ブログにお越し下さり、コメントまで頂き、
ありがとうございます。
書評を拝見させていただきました。
とても的を得た素晴らしい書評です。
私は言いたかったことが半分ぐらいしか書けませんでしたが、
それを代弁すべく、的確に指摘されてますね。
さすがです、恐れ入りました。
最終的に著者は題名の付け方に問題があったのではないでしょうか?
『暴露 ! 「モテる親父の技術」の実情』
とでもすれば、ある程度納得して読むことができ、
星印も3つ位は獲得できたのではないでしょうか。(笑)
でも所詮、書籍として読むレベルの事ではないですよね。(笑)
私もトラバをさせて頂きました。
これからもよろしくお願いします。
ありがとうございます。
投稿: つぶ庵 | 2007年2月12日 (月) 午後 04時11分