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2007年1月30日 (火)

『ルイの九番目の命』 by リズ ジェンセン

『本が好き!』というプロジェクトに参加して、これが17冊目。


ルイの九番目の命

  • リズ・ジェンセン_::_池田真紀子
  • ソフトバンククリエイティブ
  • 840円

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書評

この本が、今までで最も難しいかもしれません、、、感想を書くのが。

ひとつには、ミステリなので、内容を書くのが難儀なのです。

もう一点は、、、余りにも「男」が情けないと感じた事。
ラビリンス』といい『サフラン・キッチン』といい、
どーして女性が書いたフィクションに出てくる男って、
こーも情けないというか、面白くないんだろう(笑)
あまりにも「信念が無い」というか「意思薄弱」というか、、、
ともかく、登場人物として、あまりにも作者に都合が良く書かれているので、
「そんな簡単な人格」と思うと、紡がれる物語が安く見えてしまう。
物語にリアリティーが無くなってしまう。。。

もしかしたら、男性が書いた小説に描かれた女性も、
女性からみたら「なにこれ!」なのかなぁ。。。と思ったり(笑)
・・・えっと、渡辺淳一氏の本に出てくる女性、とかね・・・

不思議なのは、『ラビリンス』といい、この『ルイの九番目の命』といい、
ヨーロッパで売れた本に描かれる男が「こう」って事は、
今時のEU男性は、こんな感じなのかもしれないですね。。。2冊で独断(爆)
でも『ルイの九番目の命』のダナシェ医師は、半分主役であるだけに、
なんとも物語全体が「愚図」な感じとなるのは、いただけない。

さて、もう一方の「ミステリに触れてしまう問題」の方は、、、、
以下、内容に踏み込んでますので、ご覚悟を。。。

「母性本能とは、要するに、女性の自己保身の方便だ」
という学説を読んだ事があります。
もちろん、女性ホルモンの分泌が変化するという生理的な本能行動ですが、
「なぜ、そんな仕組みになっているのか?」
という部分を考えると、
「子どもを養育する立場にある女性は、社会から守られる」
という事がその根底にあるのではないか?という説なのですね。。。

で、この『ルイの九番目の命』を読んで、最初に思ったのはこの学説でした。
何度も絶体絶命を経験する子・ルイに対して、
「あの子は絶対に死なせない」と口にする母・ナタリーの心情を、そう捉えたのです。

で、改めて、この学説の「特異なパターン」を観たような気がします。
「ナタリー」という女性の「無意識で強烈な保身術」に、
周囲の男たち、やがて息子までが巻き込まれてゆく様は、なかなか面白い。
ただ、二点、妙な感じを受けてしまったのです。
ひとつは、ナタリーがどうしてそんな女性になったのか?
、、、という疑問に対する答が無いという事。
そしてもうひとつは、息子が手に入れた「テレパス」とも呼べる能力の起源。
前者に関しては描写不足で、後者に関しては説明不足。
・・・と言うよりも、後者は別のジャンルの小説ですなぁ・・・
このチグハグな感じが、なんとも妙で、座りが悪いのです。。。

そしてまた、男の中にある「護ってあげたい」という心理の気持ち悪さ。
ある種の「交流ゲーム(という学説)」がここに潜んでいるわけで、
それを使ったアイディアは、なかなか興味深いのですが。。。
いかんせん、ダナシェ先生が最初から弱腰なので、
それが「ナタリーによって引き出された深層心理」には見えないのが辛い。
 (この「弱腰」は、必ずしも「ルイの受信装置」の必要充分条件ではないハズ)

ただ、著者が「深層心理」に関心をもって書いているのは判りますし、
それを「物語」にしてケーススタディするというのは、ちょっと面白いです。
何度か出てくる「深海生物」は、
よく人の深層心理を説明する時に使われるもので、上手なメタファでしたし。

そうそう、、、
この本で最も魅力的なのは「シャールヴィルフォール刑事」ですね。
この人を主役にして、深層心理を扱った小説を読んでみたいです。

【書評リンク】
風の谷のナオスケ by さくらぼんさん
ゆっくりと世界が沈む水辺で by きしさん
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コメント

>最も魅力的なのは「シャールヴィルフォール刑事」ですね。
そうでしたね~。ちょっとしか描かれないのが残念。
それにしても知識が豊富だと、ほんとに読み方も変わるのですね。思わず自分の記事を読み返してがっくりきてしまいました。

投稿: きし | 2007年1月30日 (火) 午後 10時53分

きしさん、コメントありがとう。

・・・なにを仰いますやら(^o^)


閑話休題

408ページからのシャールヴィルフォール刑事が素敵。
こういう「台詞で魅了する」というのが、この本に足りないものかも、、、
どうしてもモノローグで物語を進めなければならないのは判るのですが。。。

投稿: みかん星人 | 2007年1月31日 (水) 午前 08時13分

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