『ルイの九番目の命』 by リズ ジェンセン
『本が好き!』というプロジェクトに参加して、これが17冊目。
- リズ・ジェンセン_::_池田真紀子
- ソフトバンククリエイティブ
- 840円
この本が、今までで最も難しいかもしれません、、、感想を書くのが。
ひとつには、ミステリなので、内容を書くのが難儀なのです。
もう一点は、、、余りにも「男」が情けないと感じた事。
『ラビリンス』といい『サフラン・キッチン』といい、
どーして女性が書いたフィクションに出てくる男って、
こーも情けないというか、面白くないんだろう(笑)
あまりにも「信念が無い」というか「意思薄弱」というか、、、
ともかく、登場人物として、あまりにも作者に都合が良く書かれているので、
「そんな簡単な人格」と思うと、紡がれる物語が安く見えてしまう。
物語にリアリティーが無くなってしまう。。。
もしかしたら、男性が書いた小説に描かれた女性も、
女性からみたら「なにこれ!」なのかなぁ。。。と思ったり(笑)
・・・えっと、渡辺淳一氏の本に出てくる女性、とかね・・・
不思議なのは、『ラビリンス』といい、この『ルイの九番目の命』といい、
ヨーロッパで売れた本に描かれる男が「こう」って事は、
今時のEU男性は、こんな感じなのかもしれないですね。。。2冊で独断(爆)
でも『ルイの九番目の命』のダナシェ医師は、半分主役であるだけに、
なんとも物語全体が「愚図」な感じとなるのは、いただけない。
さて、もう一方の「ミステリに触れてしまう問題」の方は、、、、
以下、内容に踏み込んでますので、ご覚悟を。。。
「母性本能とは、要するに、女性の自己保身の方便だ」
という学説を読んだ事があります。
もちろん、女性ホルモンの分泌が変化するという生理的な本能行動ですが、
「なぜ、そんな仕組みになっているのか?」
という部分を考えると、
「子どもを養育する立場にある女性は、社会から守られる」
という事がその根底にあるのではないか?という説なのですね。。。
で、この『ルイの九番目の命』を読んで、最初に思ったのはこの学説でした。
何度も絶体絶命を経験する子・ルイに対して、
「あの子は絶対に死なせない」と口にする母・ナタリーの心情を、そう捉えたのです。
で、改めて、この学説の「特異なパターン」を観たような気がします。
「ナタリー」という女性の「無意識で強烈な保身術」に、
周囲の男たち、やがて息子までが巻き込まれてゆく様は、なかなか面白い。
ただ、二点、妙な感じを受けてしまったのです。
ひとつは、ナタリーがどうしてそんな女性になったのか?
、、、という疑問に対する答が無いという事。
そしてもうひとつは、息子が手に入れた「テレパス」とも呼べる能力の起源。
前者に関しては描写不足で、後者に関しては説明不足。
・・・と言うよりも、後者は別のジャンルの小説ですなぁ・・・
このチグハグな感じが、なんとも妙で、座りが悪いのです。。。
そしてまた、男の中にある「護ってあげたい」という心理の気持ち悪さ。
ある種の「交流ゲーム(という学説)」がここに潜んでいるわけで、
それを使ったアイディアは、なかなか興味深いのですが。。。
いかんせん、ダナシェ先生が最初から弱腰なので、
それが「ナタリーによって引き出された深層心理」には見えないのが辛い。
(この「弱腰」は、必ずしも「ルイの受信装置」の必要充分条件ではないハズ)
ただ、著者が「深層心理」に関心をもって書いているのは判りますし、
それを「物語」にしてケーススタディするというのは、ちょっと面白いです。
何度か出てくる「深海生物」は、
よく人の深層心理を説明する時に使われるもので、上手なメタファでしたし。
そうそう、、、
この本で最も魅力的なのは「シャールヴィルフォール刑事」ですね。
この人を主役にして、深層心理を扱った小説を読んでみたいです。
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コメント
きしさん、コメントありがとう。
・・・なにを仰いますやら(^o^)
閑話休題
408ページからのシャールヴィルフォール刑事が素敵。
こういう「台詞で魅了する」というのが、この本に足りないものかも、、、
どうしてもモノローグで物語を進めなければならないのは判るのですが。。。
投稿: みかん星人 | 2007年1月31日 (水) 午前 08時13分
>最も魅力的なのは「シャールヴィルフォール刑事」ですね。
そうでしたね~。ちょっとしか描かれないのが残念。
それにしても知識が豊富だと、ほんとに読み方も変わるのですね。思わず自分の記事を読み返してがっくりきてしまいました。
投稿: きし | 2007年1月30日 (火) 午後 10時53分