『スウィングボーイズ』 by ミュージカル座
凄い!すばらしい舞台でした。
こんなに面白くて、楽しくて、不思議なミュージカルがあったのかぁ!
「ミュージカル座」という劇団を、失礼ながらはじめて知りました。
すでに多くのレパートリーを持っている劇団で、
代表は「ハマナカトオル」氏という方、、、この芝居の脚本・作詞・演出もなさってます。
この『スウィングボーイズ』は2006年2月初演のお芝居だそうです。
今回は「凱旋公演」で、昨年よりもパワーアップしての公演との事でした。
物語は、日本にジャズが入り、それを愛する青年達が組んだバンドの、
昭和10年ぐらいから敗戦までの日々を描いたものです。
劇団四季で言うと『李香蘭』や『異国の丘』といった感じで、
これらの舞台に登場していた「バンド」が、これの主役と言う感じ。
舞台には「ビックバンド」が登場して、生演奏。
で、そのバンドのメンバーが芝居をするんです。
や、、、逆だ(笑)
演じる役者さんたちが、本当に「ビックバンド・ジャズ」を演奏するのです。
『スウィングしなけりゃ意味がない』に始まって、
『アイ・ガット・リズム』『イン・ザ・ムード』『ムーンライト・セレナーデ』
そして圧巻の『シング・シング・シング』も、役者さん達が演奏します。
(ピアノ、ベース、ドラムにはプロのミュージシャンが入ってますが、、、)
なんと、役者さん達の多くはこの芝居のために楽器を学んで、
半年で演奏できるようになった、、、とのこと。
(そう、映画の『スウィング・ガールズ』と同じですね(笑))
その演奏がまた素晴らしいのですが、、、それは、後ほど。
物語の原作となっているのは、瀬川昌久氏の書かれた2冊の本、
『ジャズに情熱をかけた男たち』『ジャズで踊って』だそうです。
(氏の「ミュージカル作品ガイド100選」は大切な一冊です)
昭和初期の学生達によるジャズ・バンドのエピソードに詳しい氏の監修もあり、
舞台に描かれるのはとてもリアルで楽しく、そして少し悲しい物語。
「黎明期」独特の情熱と集中が見事に描かれていました。
で、そんなリアルな舞台の中で演奏される、
役者達の「そこそこ上手い演奏技術」と「圧倒的なスウィング感」をもった音楽は、
みかん星人に不思議な感覚をもたらしてくれたのです。
「いま、どこに、どの時代にいるのか、わからなくなった・・・・」
それは、なんとも不思議な感触で、
「舞台」そのものが、ちょうど昭和初期の、その時間に存在していて、
このまま劇場を出たら、昭和10年代の池袋に出てしまうような、
そんな感覚にとらわれてしまったのです。
舞台芸術を観ていて、こんな感覚になったのは初めてでした。
それはまるで、映画『ある日どこかで』に描かれたタイムスリップのようで、
私は一瞬、軽いパニックすら感じてしまったのです。
もちろん、私はそんな時代を知るはずもありませんから、
舞台の上に描き出されたことが「その当時のまま」という事も分かりません。
ですから「懐かしい」とか「子どもの頃に戻ったみたい」という感覚でもないのです。
映画や小説の中でしか見聞きした事のない時代なのに、
「まさに、その時間にいる」と感じてしまった、、、わけです。
リアルな台詞と、衣装、そして良い意味で洗練されていないジャズ。。。
これが、みかん星人に「精神的なタイムスリップ」をさせてくれたのかもしれません。
特に一幕、
鈴木智香子さん演じる敏子が『わが心に歌えば』を歌い始めた時、
私は「昭和初期」の空気を感じましたし、その時代に居るとしか思えなかった。。。
物語や「面白さ」「楽しさ」と言う意味では、一幕が圧倒的。
二幕に入ると、時代背景から考えても、辛く寂しくて、楽しくは無くなります。
それでも、敗戦し、開放された空気の中で演奏されるスウィングの数々は、
実に軽快で、麗しいものでした。
圧巻だったのは、最後の『シング・シング・シング』。
ここでの女性ダンサーによるパフォーマンスは、
みかん星人がたくさん見た同曲のダンスの中では抜群の演出と振付でした。
あの場面だけでも、もう一度見たいものです。
・・・いや、この芝居は、何度でも観たい、とても愛しい傑作だと思います。
30日火曜日まで、池袋の東京芸術劇場で上演しています。
ぜひ、みかん星人に騙されて、観に行ってください!!
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コメント
佐為♪さん、コメントありがとうございます。
振り付け、最高でした。
戦後の開放感を想像させてくれるもので、
1948年の黒沢映画『酔いどれ天使』に出てくる
『ジャングルブギ』を連想させてもくれました。
私も、きっと注目して参ります。
投稿: みかん星人 | 2007年2月 5日 (月) 午後 10時25分
来ていただいてありがとうございます。
本当に良かったですよね。
ちなみに、智香子さんと角川さん目当てでいったのですが、今回振付した桑原さんも、今年までレミでアンサンブルやっていた方々です。「シング・シング・シング」の振付こんなに褒めてもらってると知ったら、桑マキさん喜びます。
これからもずっと追ってみていきたい方々です。
しかし、本当にもっとたくさんの方々に観てほしかった舞台だったな。
投稿: 佐為♪ | 2007年2月 5日 (月) 午前 01時04分