« 『ライアンを探せ!』 | トップページ | 野田地図第12回『ロープ』 @ シアターコクーン »

2007年1月13日 (土)

『コンタクト』 @ 秋劇場

久しぶりに『コンタクト』を観ました。

この演目は、みかん星人にとってはとても重要なもので、
「トニー賞」のパフォーマンスで魅了されて以来、
「劇団四季」の舞台はもとより、
オリジナルを観たくてブロードウェイまで見に行ってしまった舞台なのです。
久しぶりに観た『コンタクト』は、やはり素晴らしく、
ミュージカル・プレイとしては「最高」としか言いようが無いですね。
 (なぜ、どう「最高」なのかは、おいおい・・・)

今日の「黄色いドレスの女」は酒井はなさん。
すべての仕草の中に「計算」を感じるダンスで、さすがでした。
面白いのは、ダンスのシチュエーションによって、
酒井さんの「見え方」がめまぐるしく変わることです。
気高く居るときには大きく、
可愛らしく抱き上げられたり、華麗にターンしたりするときには、
重さを感じさせないばかりか、一回り小柄になったようにもみえる。。。
ともかく、彼女が踊っているときには、目が離せません。
 (おかげで、ほとんどのアンサンブルさんを見逃しています)

さて、その酒井さんを凌いで、最高に素敵だったのは、
二幕にウエイター長で登場なされた吉元和彦さん!!
たたずまいは「ちょっと悪い匂い」のする男性で、
たとえるなら「アンディー ガルシア」といったところでしょうか、、、
これが、少しも卑屈にならずに、むしろ支配するかのように店に居るわけです。
で、坂田さん演じる青いドレスの女「妻」を魅了し、
彼女の「妄想」の中で彼女をエスコートする。。。
その姿の、なんと恰好いい事でしょう!
特に、後半、「妻」を背中に背負って回転するときの、あの余裕!
ブロードウェイの舞台でも、この辺りではウエイターはかなり疲れていましたが、
吉元ウエイターの涼しげな様子は、まさに「ニヒル」を絵に描いたよう(^^)
こういう男がいると、舞台に限らず、その「場」が締まりますね。

注目の大塚君は、少し長めプラチナ(ヅラ?)が綺麗で、
その揺らし方がとてもセクシーでした。
早く、ここに、内閣のメンバーがそろえば良いのに。。。。

以下、時間をみて、内容に踏み込んで参ります。
「難しい」という感想を散見する『コンタクト』ですが、じつはとても簡潔な舞台です。
しかしながら、語りだしたらその深さは計り知れません。
みかん星人にとって、最も「語りたい舞台」ですので、しばしお待ちを、、、

『コンタクト』の大きな特徴は、既製の音楽が使われていることです。

一幕の『Swinging』で使われる曲はさほど「有名」ではありませんが、
二幕以降に使われる曲は、どこかで耳にしたような曲ばかりです。
たとえば、、、、二幕で使われる3曲は、
グリークの『ペール・ギュント』、チャイコフスキーの『エウゲニ・オネーキン』、
そして最も有名なのがビゼーの『アルルの女』からの『ファランドール』という、
クラシックのファンでなくても、耳にしている曲ばかりです。
 (少なくとも、舞台芸術に関心がある人なら、聴いていると思います(笑))

さて・・・・
この「既製曲」を使っているという事が、どういう意味を持っているのでしょう?

初めての「ミュージカル・プレイ」を観る時に、
ミュージカルを見慣れている私でも思うのが、
「歌を聴き取れるだろうか?意味が、歌詞が分かるだろうか?」という事。
実際、去年観た某「日本発ミュージカル」は曲の美しさは感じたものの、
「歌詞」をちゃんと聴きとる事ができず、物語を理解できない場面がありました。
ですが、この『コンタクト』では、そういう心配は軽微です。
もちろん、ダンス主体の舞台ですから、
歌詞を聞き取れなくても良いという部分はありますが、
それでも、劇中で「良く知っている曲」「耳馴染みのある曲」に出会えば、
より舞台に集中できることは間違いありません。

もう一点、「既製曲」を使う事によって、
「舞台に感情移入しやすくなる」「舞台との距離を近く感じる」事もあります。
『ファランドール』を「着メロ」にしている人もいるかと思いますが、
こういった既製曲には、さまざまな「思い」や「記憶」が付加されていたり、
私達の日々に何らかの「力」を与えてくれていたりします。
こうして、舞台で描かれる物語に観客一人一人独特の物語が影響し、
観劇という体験を「自分のもの」にする助力となるはずなのです。

例えば、
三幕では「ザ・ビーチボーイス」の『Do you wanna Dance?』が使われますが、
これを聴いて、自分の青春時代や、「60年代」をイメージする人は多いでしょう。
映画『ファインディング・ニモ』でも使われたり、
最近ではコマーシャルでもよく耳にする『Beyond the Sea』も使われていて、
これもまた観客にさまざまな事をイメージさせてくれる事でしょう。

で・・・その「分かりやすさ」をもう一歩深く考えると、
既製曲が持っている情報を舞台上の物語に付け加えていたり、
物語を読み解く「鍵」を提供しているという事も感じるのです。
三幕で使われる『Simply Irresistible』という「ロバートパーマー」の曲は、
今回の劇団四季の公演に関するコマーシャルにも使われていますが、
これは、曲そのものだけではなく、この曲の背景をも舞台は利用しているのです。
この『Simply Irresistible』という曲には、こんなプロモーションビデオがあります。
80年代後半、MTVのブームが終わりかけていた頃でも、
彼のこのPVは注目された作品でした。
 (もっとも、最初のこっちのPVのインパクトの凄さあっての事ですが・・・)
このPVをご覧になると、
「黄色いドレスの女」のイメージと重なる事が分かると思います。
つまり、この曲が流行っていた当時を知る者にとっては、
「黄色いドレスの女」がどんな時代背景を持っているのかが見えてくるわけです。
更に。。。。この迷い込んだ「バー」にビリヤード台があるという事も含めて、
 (トムクルーズとポールニューマンの『ハスラー2』という映画も同じ時代)
本当は1999年が舞台であるはずのこの三幕が、
いったいどの時代に迷い込んだかを、観客に密かに教えてくれているのです。

このように、既製曲によって構成されている『コンタクト』という舞台は、
「舞台の上の物語」だけが重要なのではなく、
むしろ、使われる曲が観客に与えるイメージをも取り込んで、
「舞台の上で語られる物語を観客が自分の事として感じる」
ことができる点が、とても大きな魅力なのです。
 (いわゆる「ジュークボックス・ミュージカル」も似た側面がありますが、
  さまざまな音楽を使う事でより柔軟性が高くなっているのも素晴らしい)

|

« 『ライアンを探せ!』 | トップページ | 野田地図第12回『ロープ』 @ シアターコクーン »

コメント

たけこさん、コメントありがとうございます。

いつもの私でしたら、先様のブログに、
「TB失礼します」というコメントを残すのですが、
今回は余裕が無かったので、TBだけをしてしまい、失礼しました。

『コンタクト』終わってしまったのですね。。。
まさに「等身大のミュージカル」で、劇団四季の演目の中でも特に好きなものでした。
また、いつか、凄いダンサーと共に再演してほしいです。

投稿: みかん星人 | 2007年5月31日 (木) 午後 04時22分

こんばんはv TBありがとうございました!
20年ぶりに「simply~」のプロモが観られて感激でしたv
マネキンのように無表情で踊るお姉さんたち、カッコいいです。
「既製曲」が使われている意味、勉強になりました。
またいろいろ教えてくださいね!

投稿: たけこ | 2007年5月30日 (水) 午後 11時51分

ぴんくぶたさん、コメントありがとう。

》どんどん語ってください。
って、、、影山伯爵ですね(笑)
でも、ほら、上のコメントの様に、本当に長くなるんです。
『コンタクト』は、本当に深いと、私は思ってます。
 (ようやく読んだプログラムの中で、御大が同じニュアンスを書いておられて、笑った>p.13)

》そしてコンタクトはもっと大人っぽいのでしょ?
いえ。。。
多くの方がそういう事を書いておられますし、
実際、「大人っぽい」のは確かだとは思います。
ただ、
『コンタクト』に通じる原点は、
童謡の『靴が鳴る』ではないか?と思っています。

大好きな人と、お手てつないで歌いながら野道をゆく歓び。

それを知っていれば『コンタクト』はとても簡潔で、
そして心揺さぶられる演目になると思いますよ。

ぴんくぶたさんの感想を楽しみにしています。

投稿: みかん星人 | 2007年1月15日 (月) 午後 11時21分

とーふさん、コメントありがとう。
今年も、面白い本を教えてくださいね。

やはり、酒井さんに見惚れていると、見逃しますよね。。。
特に明戸さんのバーテンを見逃すのがしのび無いです(笑)
私は、彼がドクターに早変りする辺りも好きなのです。

そして、吉元さんですよ!
実は、5年前もウエイター長をされていたのですね(笑)
http://mikanseijin.moe-nifty.com/logbook/2002/05/__64d9.html
気がつきませんでした、、、男の好みが変わったのかな?<私

吉元さんのページはこちら。
http://y-dance.com/
大阪の『アイーダ』にも出ていらしたのね、、、気がつかなかったわ。
それにしても、劇団四季の先生ですからね、上手いはずです。


余談。。。『contact』のサントラ盤のブックレットで、
でこのウエイター長として写真が載っているのは、
「Scott Taylor」という方で、こういうキャリアの人です。
http://www.ibdb.com/person.asp?ID=71275
なんと、やはり、ダンスキャプテンだったりしたんですね。
面白いのは、このページの下の方、、、『Cats』にも出てます。
それも「アロンゾ」という日本版には無い役どころ。
『CFY』にも出ていたんですねぇ。

投稿: みかん星人 | 2007年1月15日 (月) 午後 11時11分

とみさん、コメントありがとう。

酒井さんの【黄色いドレスの女】は、
私がそれまで観た3人のどれとも違って、とても楽しそうでした。
まるで、「ダンスによる会話」を楽しむかのようで、
それまでの3人の【黄色いドレスの女】に感じていた、
「寂しさを癒す」とか、
「私とつり合う、満たしてくれる相手を探す」、
というニュアンスを感じませんでした。

ですから、ワイリーが踊りだしたときの雰囲気が特に違うのです。
坂田さんや高久さんの、微妙に「挑発する気配」はなく、
「踊ってくれるの?嬉しい!」という余裕と歓びが漂う。
ですから、当然ワイリーの様子も違いますし、
彼が強く熱い「慕情」を感じるのも理解しやすい気がしました。

が、、、ここでひとつ考えておくべきなのは、
この【黄色いドレスの女】は、ワイリーの心の鏡でもあるという事です。
(詳しく書くと、踏み込みすぎてしまうので、ぼやかします)
もしも、この【黄色いドレスの女】が、酒井さんの奏でたニュアンスであったら、
ワイリーが求めていたのは優しさであり、温かさであり、
もっと言えば「母性」とすら言えるかもしれません。
さて、それは、ワイリーが求めた【黄色いドレスの女】なのでしょうか?

そこで、ブロードウェイでの【黄色いドレスの女】が問題となります。
福井狂さんが言うには、
「ブロードウェイのは、もっとツンツンした感じで、冷たく見えた」
との事、、、私の記憶では、「自己陶酔している女性」だった気がします。
そう、これがまさにワイリーそのものという感じですね。
「43年間他人に興味をもてなかった人」が、
特別な、通じ合える相手に魅了されて、
そしてようやくダンスによる会話に目覚める。。。

要するに、『コンタクト』がどういう演目であるのか?の総てが、
この【黄色いドレスの女】に掛かっているとも言えるわけです。
酒井さんには、ぜひ、のびのびと自分の思いを表現して、
「酒井はな版黄色いドレスの女」を確立して欲しいものです。
そして、台詞もお上手になってほしいものです(*^^)

投稿: みかん星人 | 2007年1月15日 (月) 午後 10時07分

みかん星人さま

どんどん語ってください。
みかん星人さまの話を聞いていて
思わずチケット取っちゃいました。

楽しみです。
この土日に次回作のマンマとCFYを見てきました。
あのタップに心うきうきです。
そしてコンタクトはもっと大人っぽいのでしょ?
あたしの心にどううつるのか。
3月が待ちけれません。

投稿: ぴんくぶた | 2007年1月15日 (月) 午後 02時10分

みかん星人さん、こんにちは!
今年もよろしくお願いいたします。

同じ日のコンタクト観劇でした。
酒井さん、すばらしかったですね!
私も、酒井さんに視線くぎづけで、アンサンブル見落としまくりです。。。

来週、またでかけてきます。
ウエイター長、みつめてきますね。

投稿: とーふ | 2007年1月14日 (日) 午後 09時44分

>みかん星人さま
酒井はなさんのイエロー・ドレスの女素敵でしたか。
コンタクトはいろいろなお席で見たいです。

投稿: とみ | 2007年1月14日 (日) 午後 08時40分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『コンタクト』 @ 秋劇場:

« 『ライアンを探せ!』 | トップページ | 野田地図第12回『ロープ』 @ シアターコクーン »