« 『少年ラヂオ』 | トップページ | 『再起』 by ディック フランシス »

2006年12月 9日 (土)

『硫黄島からの手紙』

不思議な映画。。。これが「ハリウッド映画」なの?

英語が出てくるのはほんの数場面。
邦画のごとく当たり前に日本語で物語が進んで、
なんと驚くことに「雑音」までが日本語なのです。
 (「なんか変なもの残して行った」って雑音がくり返されるのではないのです)
言葉だけではありません。
「赤紙」が意味していたことも、「千人針」という【願】も、
なにより「靖国」という単語までもが、
背景を語る道具として、当然の様に描きこまれていました。

正直、残念で悔しいね。。。これが「洋画」なのは。
『ラスト サムライ』でも感じましたが、
この『硫黄島からの手紙』は、本当に悔しいなぁ。
尤も、資本やスタッフが誰であれ、
「日本が描かれている」ということ、
もっと言えば「人が描かれている」映画であるならば、
そんな事はどーでも良いのだろうけれど。

物語も、「知ってるつもり」だった事を次々と教えられて、
「分かっている結末」へ向けてうまく構築されていました。

硫黄島に多くの民間人がいたことや、疎開させた事も知らなかった。
この描写で、硫黄島は正真正銘「純粋な戦場」である認識を得られたので、
島での出来事総てに「虚しさ」と共に「滑稽さ」「ばからしさ」が添えられた気がします。
これはもう、『大戦略』とかの戦争ゲームを観ているのと同じですよ。。。
「文化財」や「市井の生活・インフラ」を失えことなく、
「戦争」に駆り出された「資産」と「いのち」だけが無駄に消費される。
映画の冒頭で、
「一番良いのは、この島を沈めちまうことだ」というセリフがありましたが、
もう本当にそんな感じです。
逆に言えば、国威発揚のために戦争という手段を使いたいのなら、
そうしたい人達だけがこんな感じの島に集まって、戦争して威力を誇示してもらいたい。

そう考えながら観ていたからなのか、
映画の途中では「憤怒」に近い感情でスクリーンをみていました。
戦友の千人針を抱えて右往左往する二宮くんに感心したり、
獅童くんの狂気が滲む目に「さすが」と感じたりしながら、
「なんともったいないことを」と、ずーっと感じていたのです。
で、最後の最後、誰も居ない擂鉢山が写った時、なぜだか泣いてました。

「知らなかったこと」のひとつが、バロン西こと西竹一氏がここで戦死していた事。
演じた伊原さんとほぼ同年輩で、いまの私とも近い年齢・・・考えさせられました。
映画のクレジットで「バロン西」と出ていましたので、
ハリウッドもかなり意識していたようですね、、、扱いも綺麗で、敬意を感じます。
栗林忠道氏への姿勢も似ていましたが、
二人を「英雄」とはせず、ろくな戦功を描かなかったのも、上手い。

これ、アメリカではどんな形で公開されるのでしょかね?
吹き替えか、字幕か、、、公開しないのか(笑)
吹き替えだろうとは思いますが、これの字幕版を観てみたいなぁ。

|

« 『少年ラヂオ』 | トップページ | 『再起』 by ディック フランシス »

コメント

>みかん星人さま
見ましたよ。
細かい突っ込みどころはありますが,人間の尊厳を讃える素晴らしい映画と思います。イーストウッド監督がジェネラル栗林に畏敬の念を抱いたように,リベラルなイーストウッド監督に,我々日本人は畏敬の念を持たなくてはならないと思いました。
星条旗もう一度見ようかと思いますが,うちは田舎なもので明日で終わり(>_<)ヽ

投稿: とみ | 2006年12月14日 (木) 午後 11時39分

とみさん、コメントありがとう。

》人間の尊厳を讃える素晴らしい映画
本当にそうですね。
「こんなところで死ぬために生まれたわけじゃない」
と、どちらの兵士も思ったでしょうし、
「あんな死に方はいやだ」
と、どの国の観客も思うことでしょう。

ただ、戦争は「結果」からは阻止し難いものですね。
アメリカは、ここ数十年、何度も「結果」を経験しているのに、あのザマですから。
・・・と、口が滑りました。


この『硫黄島の手紙』を観ながら思った事のひとつが、
公開の順序に関してでした。
『硫黄島からの手紙』→『父親たちの星条旗』と観ていたなら、
あの戦禍を宣伝に利用する非道さが際立ったかもしれません。

ま、、、歴史はこうして一方通行なわけですが(笑)

投稿: みかん星人 | 2006年12月16日 (土) 午前 01時19分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60933/13017207

この記事へのトラックバック一覧です: 『硫黄島からの手紙』:

» 『父親たちの星条旗』 [みかん星人の幻覚]
「英雄がいない時代は寂しい。 しかし、英雄がいる時代は、もっと寂しい」 みかん星 [続きを読む]

受信: 2006年12月11日 (月) 午前 10時27分

» 硫黄島からの手紙 [風知草]
10日に鑑賞した。硫黄島からの手紙 LETTERS FROM IWO JIMA監 [続きを読む]

受信: 2006年12月14日 (木) 午後 11時09分

» 硫黄島からの手紙 [ニュースをよむ!]
公開前からアカデミー賞の呼び声が高かったクリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」。「父親たちの星条旗」に続く2部作第2弾として、日本から見た硫黄島を描いています。いまや世界的な俳優になった渡辺謙をはじめ嵐の二宮和也、伊原剛志、中村...... [続きを読む]

受信: 2006年12月25日 (月) 午後 08時45分

« 『少年ラヂオ』 | トップページ | 『再起』 by ディック フランシス »