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2006年12月10日 (日)

『老師と少年』 by 南 直哉

実は、多くの場合、
「質問に答える」ことよりも、
「質問を考える」ことの方が難しく、繊細で、緊張します。

難しい質問というか、よく出来た質問に「禅問答」というのがあります。
 (無益な問答も「禅問答」などと言いますが(笑))
臨済宗で行われる「禅問答」は、
千里先のともしびを消すにはどうしたらよいか?」とか、
両手で手を打つと音がする。では片手ならば?」といったもので、
これは、答(悟りへの道)が先に用意されており、
そこへたどり着く道標としての「質問(公案)」たりするのです。

ですが、「答えの無い質問」というのも世の中にはありましょうし、
「それは、問うてはならぬ」という質問も、きっと、あるでしょう。
なぜ人を殺してはならないのか?」という質問など、これに近いですね。

この『老師と少年』を書いたのは、禅宗のひとつ「曹洞宗」の禅僧・南さん。
まるで漱石の『夢十夜』の様な構成で、
「前夜」に始まり「第一夜」から「第七夜」そして「後夜」の全9編を通じて、
少年と老師の「生」に関する問答が書かれています。
少年は、
ぼくが死ぬとはどういうことか?」という質問に始まって、
ぼくは誰ですか?本当の自分とは?」と尋ね、
ついには「人間とは何ですか?」という質問にだどりついてしまう。
さあ、大変だ、、、老師は、というか著者は、これになんと答えるのか?

「答え」への興味よりも、
「どう伝えるのか?」に興味を感じて、一気に読んでしまいました。
実際108ページしかない本で、しかも12行/頁なので2度も読めてしまいました。

さすがに、ここにその「答え」を書くわけにはいきませんが、
この「答え」と、その伝え方は、なかなかすばらしいと思います。
みかん星人も、こういう事を考えるのが好きですが、
「上手い表現を見つけている」と、平伏いたしました。

ただ、そこへ至る道筋が、少々ややこしい。
少年だった頃の「老師」に【道】を教えた人が3人登場しますが、
これは「老師」の「師」だけでも充分の様な気がしたのです。
もちろん「少年」を導くための物語としては必要なのかもしれませんが、
「他者を否定する」ために用意されているようにも感じてしまいます。

それと、もう一人の登場人物、、、これの存在理由が分かりませんでした。
別に「置手紙」でも良いのでは?と思ってしまいましたが・・・

「第三夜」に大変面白く、重要な場面が登場します。
少年が、とある人の経験を老師から聞かされて、
「分かります」と、興奮気味に答えるのですが、、、
これに対する老師の言葉が実に素晴らしい。
分かるのは、それが君が彼と同じ人間だからであって、
 彼の気持ちそのものを君が分かったわけではない

この抜粋を読んで「ああ」と分かった方には、この本は無用かな(笑)

この手の本は、書店に行くと何冊か見かけます。
『あなたが生まれきた理由』とか、
『あなたが生まれてきた意味は?』とか、、、似たり寄ったり(笑)
で、たぶん、どれを読んでも、行き着く先はあまり変わりが無いのです。
「どの宗教も99%は同じ事を言っている」のも、たぶん、事実でしょう。
ですから、「自分」に関して悩んでしまったなら、
どれか一冊を偶然に頼って選び、何度も何度も読み返すのが良い。
としたら、この一冊は値段も手ごろ(950円+税)で、軽く、
なによりもデザインが素敵なので、悪くは無いでしょう。
特に、カバーを外した表紙は、なかなか素敵です。


老師と少年
  • 南直哉
  • 新潮社
  • 998円
Amazonで購入
書評

【書評リンク】
わたしの本箱 by モッツアレラさん
本読み日記 by bonさん
お菓子を片手に、日向で読書♪ by マメリさん
ほんだらけ by uririnさん
週刊明るい空 by 明るい空さん
B級鑑定士-アンチγGDP by QAZoo99さん
本読め 東雲 読書の日々 by タウムさん
mixi
フレパ

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コメント

私もこの本のデザインが素敵で、気に入りました(笑)!
親しみ易い大きな文字で、内容も易しい言葉で表現されて、優しさを感じられて、更に気に入りました!

投稿: Gori | 2007年1月 6日 (土) 午前 01時55分

Goriさん、コメントありがとうございます。

本というのは不思議な媒体で、
「中身」だけで満足できる本であっても、
その「入れ物(デザイン)」が素晴らしいと、
中身をさらに深く感じ取る事ができますね。
この『老師と少年』も、そういう意味でデザインの良さが、
「似た書物」の中から抜群の魅力を放っていると感じます。

これからも、よろしくお願いします。

投稿: みかん星人 | 2007年1月 7日 (日) 午後 11時40分

TBありがとうございました。この本、面白かったのですが書評がとても書きにくかったのです。そういう意味でとても参考になりました。ありがとうございます。

投稿: 明るい空 | 2007年1月 9日 (火) 午前 08時30分

明るい空さん、コメントありがとうございます。

確かに「書評」は難しい本ですね。
反論するには、それ相応の「開示」が必要ですし、
それを企てるには、相手がツワモノに感じますし(笑)

それにしても、明るい空さんが書かれている、
「一回読んでも判らない本のプレゼント」
は素晴らしい発想ですねぇ。
うむ、、、こちらこそ参考にさせていただきます。
http://blog.livedoor.jp/akaruisora0123/archives/50697170.html

投稿: みかん星人 | 2007年1月 9日 (火) 午後 11時01分

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