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2006年12月15日 (金)

『サフラン・キッチン』 by ヤスミン クラウザー

翻訳文学を読む楽しみの一つに、
「異邦の文化・生活」に触れる、というのがあるかと思います。
大好きな「ディック フランシス」を読む事で、
イギリスを「競馬」という文化を通じて知る事ができ、
そこに階級社会や狩猟民族の素顔、そして何処でも克己心が大切な事を知ります。

この『サフラン・キッチン』は、イギリスとイランを舞台にしています。
イギリスの湿りがちな重苦しい空気と、
イランのサフラン色の大地とそこに生きる人々の生活が織り込まれていて、
改めて「イラン」を知らなかった事を強烈に思い知らされます。
そのむかし、トルコを舞台にした『路』というトルコ映画を観て、
「トルコって、こんなに雪深い国土なんだ」と驚きましたが、
この『サフラン・キッチン』でも、
「イランって、地震と吹雪のある国土なんだ」と思い知らされます。

こんな外国の小説を読むときには、インターネットは便利ですね。
イランにおける小説の舞台は、シーア派の聖地「Mashad」
Google mapでは、このマシャド辺りは航空写真だけしか出てきません。
ネットで地名を検索すると、、、こんなページが出てきます。
実は、緯度としては水戸・前橋・松本辺りと同じなのですが、
「コッペ山脈」という山にあるために、かなり厳しい気候のようです。
厳しいという意味では、北に「トルクメニスタン」東に「アフガニスタン」があり、
たえず異民族からの攻撃に備えなければならなかったようで、
そういう記述も小説の中に織り込まれていて、興味深いものです。

そう、入れ物は面白く、新鮮です。
著者もこの小説がデビュー作との事で、ちょっと斬新さを期待したのですが・・・

思うに、この小説は、
「言いたい事があるのだけれど、そこに行き着けないままに終わってしまった」
のではないでしょうか?

メッセージがどこにあるのかも分かりますし、
人物の動かし方も、台詞も、それなりに上手く書かれています。
特に、娘の視線で語られる部分は一人称で、
母の物語は第三者の視線で書かれているという工夫はなかなか面白く、
この著者が、娘・サラと自身を重ねているのだろうと感じられます。

が、どうも「核心」にたどり着けない。
それは、母・マリアムが「説明する」と言いながらも決断できない様子同様に、
この著者も、本当に表現したい事に切り込む勇気を持てなかったのかもしれません。
いや、実は、この「伝えたい事は分かるでしょ?」的な関係こそが、
この小説で言いたかった事なのかもしれませんが。

女流文学と言いますと、このプロジェクトで読んだ『ラビリンス』もそう。
で、ちょっとした共通項を感じたのですが、、、
それは「登場する男性が優しすぎる」という事(笑)
母・マリアムを愛する二人の男性なんか、まるで宝塚に出てきそう。
それでいて、「ずる賢く欲望を満たす」という描写は織り込まれていて、
「そんな男は、いないと思います!」と、ちょっとおどけて叫びたくなります。
『ラビリンス』に登場した男性陣も似たような感じで、気持ち悪かった

気持ち悪い、のは「タイトル」もですね。
この『サフラン・キッチン』は原題のようですけれど、この意味が不明。
確かに中でキッチンをサフラン色に塗り替えてしまうのですが、
その事を、娘・サラがどう捕らえているのかの描写が甘い。
むしろ『ターコイズブルー・ドア』とかの方がよかったのかも(笑)

ちょっと「体裁」について触れておきます。
この新潮社の「クレスト・ブックス」というシリーズは、
総てこういう「体裁」なのでしょうかね?
単行本なのでしょうがハードカバーではなく、柔らかい表紙。
微妙に滑りやすいカバーで、裏側にはメディアなどの賞賛文。
そして、長く読んでいたからか、表紙が本体から剥がれそうな製本。
「豊かな収穫」をくれる本ならば、もう少し丁寧な作りをして欲しいてですね。
カバーをはずしたときの様子は、ちょっと素敵。

ともかく、、、この本は、私には理解不能でした。
「女性を理解するなんて無駄な努力だ」と言われたようなものです(笑)


サフラン・キッチン

  • ヤスミン・クラウザー
  • 新潮社
  • 2310円

Amazonで購入
書評

【書評リンク】
ゆっくりと世界が沈む水辺で by きしさん
本虫のふん by ぐらさん
ハチの巣で物語を by シルフレイさん
mixi
フレパ

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コメント

>「そんな男は、いないと思います!」
私もそう思います。女性から見て、こうあってくれたら嬉しい男性なのかもしれないと思いながら読みました。

投稿: きし | 2006年12月17日 (日) 午前 12時56分

きしさん、コメントありがとう。

やはり、きしさんも同じ感想をもたれましたか。。。
イラクの彼はまだしも、イギリスの彼の長年にわたる忍耐は理解できないですね。
ただ、彼らは彼女の「弱み」というか「その場の勢い」というか、
要するに「マリアムを理解した上での愛情交流」を表現しなかった。
いっけん理解し、愛している様に振舞いますが、
どちらも「マリアムの心」を推測しているだけのように感じます。
そういう意味では、この本、男の狡猾さを裏地にしている小説なのでしょう。

一方、父親の「酷さ」は、文化を知らないのでなんともいえませんが、
毎年の贈り物という部分に込められた「何か」の描写が欲しかったですね。
でも、これは私が「オチ」を望んでいるだけなのかもしれませんが(笑)

ともかく、この本は、女性同士の、
「わかるわぁ、大変よねぇ」
という麗しい交流を理解できない者には、無理ですね。。。
はい、私には『渡る世間は鬼ばかり』が全く理解できません(*^^)

投稿: みかん星人 | 2006年12月17日 (日) 午前 09時53分

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